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シルバ・アリウム、剣聖と成る
五十三話
しおりを挟むこの戦いにおいて要であった魔法だが、シルバは魔法が得意ではなかった。
それは魔法の適正が低く、才能が無いなどではなく、むしろ並みの魔術師以上の才を備えていた。
だが、神域の剣技を兼ね備えたシルバにとって魔法は寄り道でしかなく、義父であったアリウム国王もそれを察して剣の修行を徹底した。
それ故に、この戦いの決着も魔法を使わず、驚くほどあっけない終わり方を迎える。
ヅガァンッ!!!
剣戟が振りかざされ、その軌道は地を抉って崩壊する。
そして、それに巻き込まれたレッドは必死の防御も虚しく、大剣を叩き割られながらもなんとか致命傷を逃れた。
が、同時に勝負は付く。
素手となったレッドは、最後の手段とばかりに紫電を行使する。
しかし、シルバの情け容赦の無い蹴りがレッドに響き、この戦いに終止符を告げた。
ドガッ……!!
「かはっ……」
ボロ雑巾のように転がるレッドは、地面に叩きつけられてそこで動かなくなる。
会場もまさかの展開に息を呑み、その宣言を聞き入れた。
『―――き、決まったぁぁぁ!!!!
奇しくも王子対王女のとんでも試合になりましたが、
我らのシルバ王女様が、紫電の英雄と呼ばれるレッド王子を降して勝利ッッ!!』
惜しみない賞賛、向けられる羨望の眼差し。
ここに、シルバ・アリウムの人物像を確立させるほどの勝利を掴み取った。
(……まさか、隣国の王子が飛び込みで参加していたなんて予想出来ませんでしたが、
結果的には名声を上げるのに役立ちましたね……、まぁ、今後の外交でどう影響するか
少し不安ではありますが、悪い方向には進まないと願いたいです)
少しだけ疲労感を覚え、一呼吸して息をつく。
そして、私に向けられる声援の数々に出来るだけ応え、王女としての振る舞いで民衆に手を振り、笑顔で返す。
ここまでが想定内。
相手が誰であれ、危なげなく勝利し見てくださった民の期待に応えるまでが。
「―――待て」
しかし、ここからが想定外。
私を呼び止めるその声は、勢い余って蹴り飛ばしてしまった第二王子であった。
彼はよろめきながらも片膝をつき、私を真っ直ぐな目で見つめる。
「レッド様……お気付きになられましたか……、
先ほどはすみません、如何に試合とはいえ王子を足蹴にして勝利を収めるなど、
大変失礼極まりない戦い方でした、ここに、非礼をお詫び致します」
「……いい、そういうのはやめろ、お互い全力で臨んだ結果がこれだ、
それを否定する発言はシルバ王女でも許さん、そうだろ?」
「ふふっ……そう言って頂けると助かります、
さぁ、立てますか?肩ぐらいであれば貸せますので」
自然と、手を伸ばして彼に手を貸す。
それが間違いだったか正しいかは分からない。
少なくとも、事態が急変するこの一瞬までは、人として間違っていたつもりは無かった。
差し伸べた手は、力強くも優しく握られ、レッドはそのまま私に―――跪いた。
「―――ここに、誓わせてくれ、シルバ……いや、シルバ・アリウム王女殿下」
…………………………は?
「俺は……いや、バーベナ国第二王子、レッド・バーベナは貴方様に惚れたッッッ!!
この身に誓って約束する!!俺はシルバ王女を幸せにするッ!!だからっ……!!」
…………………………いや、待って、待って欲しい、それ以上は、マズい。
「俺とッ……結婚してくれッッ!!」
正体不明の仮面の剣士は、予想していた事態の斜め上どころか、急転直下の勢いで場を混乱に陥れ、私の頭を痛くして爽やかに婚約を申し込んだ。
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