天下無双の剣聖王姫 ~辺境の村に追放された王女は剣聖と成る~

作間 直矢 

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シルバ・アリウム、剣聖と成る

五十七話

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 「貴方はシバ公爵の立場を支持しつつ、アリウム騎士団での立場を固めていた……
  今回の大会もその一環として参加していた、こんな所でしょうか?」

 「それは……はい…」

 「では、私の大会参加を知って顔を見せなかったのは何故です?
  何か企てがあっての事なら、私達も穏やかに事を進められませんので」

 「は、はいっ……、それについてはシバ公爵に命令されたのです、
  シルバ殿下が存命の今、姫との接触、もしくはこちらから連絡をする事が無い様に
  彼奴からは言われており、殿下の決勝が決まるまで儂はそれを守っておりました…」

 「ふむ……慎重なシバ様らしい行動ですね、なるほど」


 少しだけ考え込みながら彼女は話を聞き、ゴッツは続ける。


 「しかし……今大会における貴方様の武勇を見聞きし儂の考えは改まりました、
  決定的となったのは先程の決勝、まさか英雄とまで称えられた隣国の王子を
  討ち果たすとは思いもよらず、儂の心は定まりました」


 声を震わせ、その老騎士は吐露した。


 「儂は……儂は、かの剣聖と呼ばれたあの御仁にのみ仕えたかったのです……
  故に、養女としてもてはやされていた殿下に仕えることを拒み、
  シバ殿と組み貴方様を帝都から追放した、それは、疑いようの無い事実です」

 「……すべては、私の力不足が招いた結果です、その心情は理解できます」

 「いいえ違うのですッ!儂が全てを見誤っていたのです、
  殿下の剣技、流麗な剣筋、そして剣聖と謳われた王の如き力、
  これはもう、仕えるべき主と疑う事は出来ませんっ……!」

 「ゴッツさんは、どうされたいのです?
  ここへ訪れ、本心を口にして私に許されたかった……
  決してそれだけでは無い様に思われますが」

 「―――許されるのであれば、儂は、貴方様にお仕えし、
  武人として剣聖と戦いたいッ!!……それだけを望みますっ…!」


 跪き、その真意を嘘偽り無く口にするゴッツは、詫びる様に頭を伏せる。

 ―――それを見てシルバは思考し決断する。

 これからのアリウム国にとっての最善と、自身にとっての最善となる決断を。


 「ゴッツさん、顔を上げてください、私は貴方の事を恨んだり怒ったりしていません、
  重ねて申し上げる通り、私の力不足によって皆様の不信を招いた事は事実、
  であれば、貴方を責めて処罰するより、国の為に尽力してください」

 「……シルバ様、それではあまりに甘いのでは?」

 「-――然り、ヒース殿の仰る通り、それでは儂の気が収まりませぬ、
  ですので、我が意思を伝えるのと同時に、シルバ殿下にある物を献上したく
  儂はここに訪れました」

 「ある物、ですか……」


 ゴッツは背負っていた長方形の箱を、慎重に床に置く。
 終始警戒しているヒースは構えを取るようにそれを見つめ、その動向を伺う。


 「っ……!それはっ……!?」


 頑丈な箱に包まれて、蓋を魔力刻印によって施錠されていた箱の中身は、シルバが良く知る大切で、かけがえのないものであった―――。

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