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シルバ・アリウム、剣聖と成る
五十八話
しおりを挟むそして、ゴッツとの面会を終えたシルバは今大会の締めとなる決勝へと挑む。
決勝相手は言わずもがな、大会を連覇する剛槍使いのゴッツ。
かくして、様々な思惑と信念、時には享楽の混じった大会の終焉が見えつつ、その二人は多くの歓声を浴びて姿を現す。
『―――皆さま、大変長らくお待たせ致しました、
多くのトラブル、はてはサプライズが降りしきる中、
アリウム最強の武人を決める戦いが始まりますッ!!』
実況の美少女解説者クロも何度目かの興奮を抑えて、静かに、だが情熱的に最後の一戦を見届ける気概を作る。
「―――ここが、正念場」
凛とした佇まい、そこから発せられる流麗な雰囲気。
彼女は実戦を通して成長し、心身共に王姫として、剣聖として完成されつつあった。
「シルバ殿下、準備はよろしいか?」
「ええ、いつでもどうぞ」
大舞台へ足を運ぶ二人は、悠然と歩みを進めて対峙する。
一方は己の行動を悔い、絶対的な武を魅せつけられて二人目の剣聖に忠を誓った老騎士。
一方は己の力不足を悔い、それを補いながらここまで上り詰めた銀の姫。
両者は構えを取り、感覚を研ぎ澄ませる。
「―――」
手に取る剣の感覚が、妙に懐かしく感じる。
一度手から離れたこの剣は、黒き刃だったヒース達を守って私の元に返って来た。
それはまるで、巡り合わせたように出来過ぎていて、この最終決戦の舞台を飾るために運命の神様が用意してくれたのではないか、そう思ってしまう程に都合が良い。
『―――殿下に“銀月”をお返しした上で、儂は貴方様と一戦交えたい、
それが武人として騎士として、唯一できる贖罪と心得ています……』
―――銀月。
あの時、ゴッツが差し出したのは手放したはずの宝刀銀月。
偽りの死を演出するためにシバ公爵に献上したこの剣は、ゴッツの元で管理され私の手に舞い戻った。
『儂の命、この決戦で果てるのであらばそれも本望、
遠慮も加減を要りませぬ、どうか……っ…どうか、かの月の残影を儂に、
そしてアリウムの民に魅せて欲しいのですっ!!』
―――老騎士は望む。
かつて騎士であった剣聖は、代々伝わる古の宝剣銀月に淡い輝きを持たせた。
それは一族でも限られた才を持つ者にのみ許された光であり、数百年に一人現れるかどうかの天才が扱える。
今は亡き王は銀月に暗い蒼を持たせ、臣下を、民を、そして大陸を統べて剣聖と成った。
(……実戦で銀月を扱うはこれが二度目、いや……
最初の一回は自分の髪を切り落としただけだから、実質初めてか)
剣の腕には絶対の自信がある。
だが、銀月が私にその輝きを魅せるかどうかはまた別の問題であり、この気持ちに応えてくれるかどうかは分からない。
それでも、この剣を構えて臨む。
私は剣聖の娘であり、アリウム国の王姫として剣を取るのだから。
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