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迷いと、後悔
一話
しおりを挟む誰も知り得ない過去を語り聞いた帰路。
銀の姫に隠された生まれを知り、馬車に揺られながら数日が過ぎていた。
「……」
手綱を引いて街道を進み、ヒースは黄昏ていた。
前々から感じていたシルバの暗い部分。
それを聞いた彼は何とも言えぬ感情に浸り、彼女への想いが増してゆく。
(想像以上に、シルバが抱える血筋に対する負い目は大きい……
なんとか助けになりたいが、過去がそれを拒んでしまっている)
シルバが自身にそうしてくれたように、彼女の為に何かしたい。
けれども手負いの身では何もできず、こうして手綱を握る事しか出来ていない現状に歯がゆい気持を感じていた。
「ヒースさーん、そろそろ村に着きそうですかー?」
すると、馬車から身を乗り出して声を掛けるシルバ。
「そうですね、次の林道を超えたら間もなくですので、
あと数十分ほどで到着するとおもいますよ」
「はやくミオの顔を見たいですね、村の政務を押し付けてしまいましたし、
戻ったら労ってあげないと、ヒースさんも一緒にお願いできますか?」
「ええ、もちろんです」
にこやかな笑顔を向け、彼女はいそいそと隣へと座る。
どうやら車内で過ごすのに飽きたらしく、悪戯な顔で視線を合わせた。
「ヒースは楽しみですか?ジニア村へ帰ること」
「ええ、自分でも驚いておりますが、気持ちが高揚しているのがわかります」
「ふふっ、それは良かったです!ヒースさんにとっても、
帰るべき故郷になってくれていたら嬉しいです!!」
「故郷、ですか……確かに帰るべき場所の無かった黒き刃にとって、
シルバが導いたジニア村こそが、故郷なのかもしれませんね」
「―――本当に、ヒースは変わりましね……貴方の主として喜ばしいです」
「シルバこそ変わったと思いますよ、とても、逞しくなられました」
満足そうに微笑んで、シルバはヒースに寄りかかる。
この短い期間で彼女は彼を信頼し、過去を話すまでに心を許した。
どれほど強くあっても、その精神は未だ年相応に脆くもあり、時に不安定にもなる。
だからであろう、家族のいないシルバにとって本当の兄の様に甘えられるヒースが頼もしく、そして心安らぐ存在であるのは。
「ヒース……どこにも、いかないでくださいね……」
孤児院で義理の母と慕った人を失い。
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「―――傍にいますよ、ずっと」
だが、その返答はあまりにも弱く、消え入りそうであった。
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