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束の間の安息と追憶
十話
しおりを挟む―――ギィンッ……!!イィン……!!
激化した斬り合いが膠着している。
だが、ここにきて二人を別つ決定的な差が生まれた。
ガギンッッ!!!!
少女の得物が、刀身の根元から砕けて折れた。
「っつ……!!」
いかに神業の技量を持ち、繊細に剣を扱おうが打ち合い続ければいつかは壊れる。
それも野党が使用する手入れを怠った鈍らであれば尚の事、剣聖の持つ銀月とは武器の質が雲泥の差であり、少女は攻撃手段を失う。
「ここで決めるっ……!!」
最初からこれを狙っていた剣聖は、砕け散る刀身を流し見て一気に間合いを詰める。
彼女を救うために、下手に攻めずに守りに徹していた彼の最初で最後の好機。
魔力を溜め込み、その宝刀に蒼色の月明かりを灯し、救済の一閃を構えた。
『っふん……なにかと思えば、古い月光の置き土産かい、
忌まわしい限りだ、ここでもアタシの邪魔をするのか』
どこからか聞こえる誰かの声。
それを無視して、王は一人の女の子を救う。
―――ザンッ!
淡い蒼は少女の身体を優しく斬る。
それは魔力で練られた月光の刀身、物理的な干渉ではなく精神的な側面を斬り、彼女の意識を憎悪から切り離したのだ。
「―――ぁ……」
文字通り糸が切れるかの様に倒れ込み、剣聖は少女を抱え込む。
無事を確かめ、安堵する王は気を失った彼女を抱き締めると呟く。
「さて、この子はもう貴方の悪意には操られない、今度はどうするおつもりかな?」
『……はぁ、なんともつまらない幕引きだね、
そいつを放っておけば、世界が少しは楽しくなるものを』
「それは神様の尺度での話だろう、これ以上人の世を乱さないでくれないか」
『頭の堅い男だねぇ、だが、いいだろう……
その子にかけた祝福はそのままにしておく、お前がそいつを導きな』
「私が導くだと?」
『せいぜい上手に育てる事だ、さもなくばその子は殺戮者だ、
ま、アタシはその方が退屈せずにすむけどねぇ……』
遠のく声を無視して王は立ち上がる。
両手には銀の少女を抱え、燃え盛る街を悲しく見つめ続けた。
『女神の名のもとに、世界に祝福を』
カラン、と煙管の音が鳴り響くと重圧が解け、王は初めて息を吐く。
初めて気を緩めて視線を移し、規則正しい寝息で目を閉じる少女を眺める。
彼女の頬に儚げな雪が舞い落ちて溶け、その髪と相まって美しい煌めきが現れると、彼女に相応しい言葉が見つかった。
「―――シルバ、そう、君はこれからシルバとして生きる事になる、
君の剣は不殺、誰にもその願いを踏みにじらせたりはしない」
―――それから一人の少女は、シルバという名を与えられ王の養女となった。
負の感情に囚われ剣を振るう事も無く、聡明な性格も相まって剣の才格を伸ばし続け、気付いた時には剣聖を超えていた。
だが、剣聖は少女を、シルバを大切に育て過ぎてしまった。
それが騎士団や家臣の信頼を厳かにしていると知っていても。
否、恐れすらしていたのかもしれない。
もはや人外の域を超えた力を持つ、たった一人の愛娘を―――。
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