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1話 賊狩りと少女
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しおりを挟む「あのっ…!」
勇気を振り絞り、狂人と呼ばれた騎士に話しかける。
うわずってしまった声はなんとも情けなく、けれど、それを気にする素振りも無くフルプレートの鎧はこちらに振り返った。
「何か用か」
「あのっ……わたし、前に助けてもらった、その……」
「……」
「それで、改めて感謝したくて……その、ありがとうっ…ございましたッ!」
「そうか」
こちらは慌てて落ち着かない様子に対し、彼はなんと淡泊であろうか。
口数は少なく、兜を被っておりその表情は伺えない。
私の村を救い、この命を救ってくれた出来事を覚えているかも怪しい。
それがまた不気味さを引き立てており、距離を感じる要因なのだろう。
「あとっ!一つお願いがあるのですがいいでしょうか?」
「……なんだ」
「私を、貴方のパーティーに加えて欲しいんですッ!!」
「―――なに」
「荷物持ちでもなんでもやりますッ!!
あなたの御側で私も人を救いたいんですッ!!」
「なぜ」
「……わたしも、一方的に虐げられる人を貴方の様に助けたいのです、
今はまだ何もできない身ですが、絶対にお役に立ちますから、どうかっ……」
「しかし…」
そこまで話すと言い淀み、少し考え込むように腕を組む騎士。
すると、一呼吸の間を置いて彼は返答をしようとした、その時である、
『すみませんッ!!緊急事態ですッ!!』
受付の担当員が大きな声でギルド内に伝える。
何事かとギルドメンバーが視線を向け、その仔細を聞く。
『西南の農村で盗賊者集団の襲撃があったと報告がありましたっ!
既に被害も出ており、攫われた村人の救出と賊の討伐をお願いできませんかッ!?』
それを聞いたギルド内の冒険者はだんまりと下を向き、知らぬが存ぜぬを決め込んで押し黙ってしまう。
だがこれは、ここにいる冒険者が薄情な訳では無く、自然な流れなのである。
冒険者の主な内容は別にあり、賊を相手とした任務に抵抗を抱く者は少なくない。
それは魔物を相手にしている冒険者にとって、人を殺すクエストが耐えがたく、実力を持った冒険者であっても覚悟のいる内容であるからだ。
更に、階級の低い冒険者では返り討ちにあう事も多く、賊討伐を請け負う冒険者はベテランの人間、あるいは冒険者ランクの高い資金に困った冒険者に絞られる。
「―――話を聞こう、地図はあるか」
しかし、しかしである。
あらゆる危険を度外視し、どのような困難であろうと関係なく任務を引き受ける。
そんな狂気の淵を彷徨い続ける、一人異常な冒険者が声を掛けた。
「あっ!?いらしてたのですねッ!!」
「ああ……それで、攫われた村人の数と賊の規模はわかるか」
「はいっ…!避難してきた村人の方がいますので、
情報の確認をしております、これは被害にあった村周辺の地図です」
カウンターに地図を広げ、戦略を練るためにマーカーを付けてゆく。
その姿を呆然と眺め、私もその地図に視線を移す。
と、被害にあったとされる農村は私も知る場所であり、彼が印を付けていた場所も良く知る故郷の周辺であった。
「―――あ、あのっ…!!」
「どうした」
「その地図の周辺でしたら、私詳しいですっ!!」
「なに、ならこの街道を超えたところは分かるか」
「は、はいっ……少し入り組んでいますが、今は廃村になっている場所があります、
地図には記載がありませんので、信じられないかもしれませんが……」
「いや、有益な情報だ」
そう言って黙々と地図を眺めて印を付ける彼は、不意に口を開く。
「お前、荷物持ちでもすると言ったな」
「は、はいっ!」
「時間が無い、必要な物を準備するから手伝ってくれ」
「あ……はいッ!!」
「それと、その廃村までの道案内を頼みたい、できるか」
「勿論ですッ!!」
「よし、必要な道具を運ぶ、付いてこい」
彼の力になれると考えたら、思わず喜んでしまい心が跳ねる。
これから死地へ向かうというのに、呑気なこの気持ちを戒めて切り替え、場違いな挨拶を改めて交わす。
「私、アリウムっていいます、お願いしますっ!!」
「……そうか」
「それで、あの……お名前を…」
「…ああ、そうか」
妙に察しの悪い彼は、この挨拶の意味を数巡の思考を経て理解する。
「アルバートだ、よろしく頼む」
これが彼との初めての出会い、そして最初のクエスト。
しかし、最初のクエストと言うにはあまりにも血生臭く、非情な結末を迎える結果となる事を私はまだ知らなかった―――
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