賊を狩り続ける冒険者~近代技術で魔法を凌駕する~

作間 直矢 

文字の大きさ
22 / 68
2話 山賊討伐の代償

3

しおりを挟む

 少しの間休憩を挟みながらも、二人はハイド山の反対に位置する山間部に到着する。

 そこは標高が少し高く、見渡しの良い崖側。
 騎士は遠くを見下ろすと、姿勢を低くしてとある一点を見つめた。


 「やはりな、地図の情報が正確で助かった」

 「あ、あれは」

 「例の大規模な山賊組織だ、確かに村のようなコミュニティを築いている、
  厳重な武装を施されて塀を作り、警備も相当に配置されていそうだ」

 「そんな、それではやはり……二人だけでそこを強襲するのは無理では…」

 「正面からは絶対に無理だろう、だからここに来た」


 荷物を降ろしたアルバートは辺りを見渡し、場所を確認する。
 すると、少し下がって影入った木々に入ると、そこを拠点とした。


 「アリウム、ここを陣地として数日間敵を見張る」

 「わかりました」

 「野営用のテントを置いておく、お前はこれを設営して山賊の見張りを頼む」

 「あの、アルバートさんは?」

 「俺は一度ここを降りて再度荷物を運ぶ」


 休む暇もなく彼は動き、最低限の装備を整えて山道を戻る。
 その際、少女が自らの役割に不安を覚えて俯いた。


 「……アリウム」

 「はい」

 「火を、確か火の初級魔法が使えたな」

 「は、はいっ!簡単な物でしたら……」

 「夜は冷える、焚火を起こしておいてくれ、
  煙が出ない様に魔法炭石を使って火を起こせ」

 「―――わかりましたっ!」


 気を遣っての発言ではない。
 
 だが、彼女にしか出来ない事を任せることで、騎士は少女の不安そうな顔を明るくしてその場を立ち去る。

 アルバートもまた、人と行動する事で少しずつ何かが変わりつつあった。


 ―――それから数日。

 山賊の拠点を発見して野営を続け、その動向を見張っていた二人。
 静かに、黙々と遠くから遠眼鏡で山賊を見ていたアリウムは一つの葛藤を抱いていた。


 「……アルバートさん、いま、いいですか」

 「なんだ」


 この数日、アルバートは持ってきた金属部品を組み立て一つの武器を作っていた。

 それは長く、横3mの幅を持つ巨大な砲撃装置。
 この兵器の細かな部品から大きな部品まで、様々なパーツを繋ぎ合わせ作業する。

 そのため、邪魔をしない様にアリウムは持ち場を離れる事は無かった。
 が、山賊の拠点を見張って一つ、気付いた事を質問した。


 「―――山賊の村に、どんな人がいるかアルバートさんは知っていますか?」

 「……ああ」

 「知っていて、その武器で殺すのですね」

 「―――ああ」

 「他に方法はないんですかっ!!」

 「無い、お前は一人一人あそこから人を選別して殺せるか」


 アリウムが抱いた葛藤。

 それは山賊の拠点に子供がいること。
 大きな組織となって村の様になったそれは、人の営みを持つ事も少なくない。

 故に、優しく潔白な少女には堪える。

 いかに大義名分があろうと、子供には罪はない。
 それをわかって尚、彼は遠くに見える拠点を壊滅させようとしていた。


 凶悪で、火薬と血と怨嗟を体現した、巨大な武器によって。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】 笑わない、かわいげがない、胸がないの『ないないない令嬢』、国外追放を言い渡される~私を追い出せば国が大変なことになりますよ?~

夏芽空
恋愛
「笑わない! かわいげがない! 胸がない! 三つのないを持つ、『ないないない令嬢』のオフェリア! 君との婚約を破棄する!」 婚約者の第一王子はオフェリアに婚約破棄を言い渡した上に、さらには国外追放するとまで言ってきた。 「私は構いませんが、この国が困ることになりますよ?」 オフェリアは国で唯一の特別な力を持っている。 傷を癒したり、作物を実らせたり、邪悪な心を持つ魔物から国を守ったりと、力には様々な種類がある。 オフェリアがいなくなれば、その力も消えてしまう。 国は困ることになるだろう。 だから親切心で言ってあげたのだが、第一王子は聞く耳を持たなかった。 警告を無視して、オフェリアを国外追放した。 国を出たオフェリアは、隣国で魔術師団の団長と出会う。 ひょんなことから彼の下で働くことになり、絆を深めていく。 一方、オフェリアを追放した国は、第一王子の愚かな選択のせいで崩壊していくのだった……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...