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2話 山賊討伐の代償
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しおりを挟むそれから穏やか過ぎる時間が経っていた。
山賊の拠点を見張って五日、ついにその日が来た。
ぽつぽつと小雨が降り始めようとする夕刻、暗闇で騎士は殺意を研ぎ澄ます。
「―――降り始めたな、アリウム、準備しろ」
「はい……」
大型固定砲台を慎重に運び、崖から約1km先にある山賊の拠点に向かって砲身を定める。
「火薬が濡れない様にシートをもっと広げてくれ、
それが終わったら特殊砲弾を入れた木箱を持ってこい」
「わかりました」
完成された大型兵器は、圧倒的な存在感を放って鈍く光る。
複雑な機構で造られたそれは、元は要塞砲の一種だった。
しかし、魔法の繁栄と共に城や砦の防衛手段は変わり、設置されていた兵器は撤去されて産廃となって捨てられた。
それを安値で買い叩き、自身の知識と技術を駆使して改造したのだ。
この、悪魔的な破壊力を持った兵器に。
「アンカーの固定を確認、動作確認に入る」
「安全装置を解除しました、シリンダーの動きも異常ありません、
いつでもいけますアルバートさん、あとは砲弾をセットするだけです」
「……砲弾セット完了、ポイントを拠点に固定」
少女の心臓が、高鳴る。
これから起こる殺戮が、恐ろしい。
それの手助けをしている自分が、恐ろしい。
なにより、無垢の命まで奪おうとしている事実が、恐ろしい。
視線を下に落とすと、山賊の村が見える。
山賊は雨になると大人しくなる、彼が昨日そう語った事を思い出す。
『襲撃は雨の日に行う、理由は三つだ』
『三つ、ですか……』
『一つは、雨になると山賊どもは街道に出なくなる、
視界が悪く山道への往復が厳しくなると、略奪が困難になるからだ、
殲滅が目的であればやつらが全員拠点に集まる雨の日を狙いたい』
『二つ目は?』
『一つ目の理由から、万が一、俺達が見つかっても安全に退路が確保できる』
そして、彼は少し考えてから三つ目の理由を説明した。
『三つ目だが、これは過去の失敗から学んだ事だ』
『失敗、ですか』
『俺が今回使う武器は威力が強すぎる、砲弾が着弾すれば辺り一帯が消し飛び、
周りを焼き尽くして全てを破壊してしまう』
『そんな……そんなの、一級の魔法使いにだって出来ないですよ』
『魔法使いに出来ない事が出来ても、それを制御出来なければ意味がない、
森が焼ければ大惨事となる、焼けた範囲を鎮火する雨の日しかこれは使えない』
寂しく話し、その日の会話を終えた。
何度も何度も頭の中で離れない会話が、胸を締め付け苦しめた。
今、彼が握る引き金が、多くの命を握って力が籠められていたから。
震える手で拳を握る。
逸らした視線を前に向ける。
絶対に、この光景を忘れてはならない。
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