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3話 挑発と挑戦
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しおりを挟む「シキ、魔力循環装置のリミッターは確認したか」
「おっけーだよ」
「魔法陣の回路チェックは」
「それもおっけー」
「安全装置を外す、離れていろ」
姿勢を落とし、しっかりと銃を構えて狙いを鉄塊に定める。
すると、徐々にライフルに組み込まれた翡翠色の鉱石が光始め、魔力が込められた。
「お~……安定して魔力制御装置が動いてる」
「これは、いったい……何が起こって」
「にゃはは~知りたい?」
にこにこと子供のように笑い、シキは説明する。
「あのライフルは魔力を凝縮させて循環し、高純度の魔力を射出させるの」
「通常の魔法とは違うのですか?」
「それだと触媒を持って攻撃魔法唱えた方が早いでしょ?
私が求めたのは誰もが引き金一つで使える魔法、あるいは同等のもの、
才能の無い人間でも扱える武器は、世界に変革をもたらすから」
彼女の武器開発における理由は崇高であった。
だが、人殺しの為だけに武器を造るアルバートを否定されているようで、アリウムは複雑な心境になっていた。
間違っているのはアルバートだからこそ、つい、アリウムは言い返す。
「……アルバートさんは、世界を変えようなんて思っていません」
「そだね~、彼は多分……復讐とか恨みとか、つまらない理由で武器を造ってる、
私はそんな小さい物差しで人を殺す物は造らないし、世界をみてるよ」
「けれど、彼だって人の為に貢献し世界を変えています、
始まりはつまらないかもですが、私にとっては英雄です」
「じゃあ、天才であるこのアタシと貴方にとっての英雄様が造った武器は、
世界に、人に、どんな影響をもたらすか楽しみだねっ!!アリウムちゃん!!」
視線がアルバートに向き、シキは変わらず猫めいた目で笑顔を作る。
そして、様々な動作確認を終えた鎧の騎士が引き金に力を込めた。
「―――始まるよ、アリウムちゃん」
発光する翡翠色のライフル。
構成された魔術回路に巡る魔力が線となって銃口に向かい、凝縮し―――
爆発、する。
刹那、銃口の射線上にあった鉄塊が爆ぜる。
焼け溶けた鉄が後方に吹き飛び、裏の林付近まで貫通した。
それは一筋の光であり、一瞬の出来事であった。
「あちゃ~……魔術回路が焼き切れているか~……
本体の耐久性は問題なさそうだけど、改善の余地はまだまだあるな~」
ぼやきながらシキはアルバートに近付き、手にしているライフルを見つめる。
彼もまた、溶けた鉄塊を見つめながら口を開いた。
「シキ、回路の構成がまだ短い、もう少し長くすればこの純度の魔力を循環できる」
「あ~、回路自体ではなく編まれた陣の長さか~……
それはこっちで練り直すから、アルバートくんは触媒となる弾丸の改善を、
発射時の爆発がまだ弱い、威力の改善はまだまだ出来るはず」
「薬莢に込めた火薬の配合を変えてみよう、それと一つ、
銃身から伝わる衝撃が想定より酷い、グリップの構造も変える」
「成人した男性でも撃てそう?」
「肩が吹き飛ぶ、今の段階では無理だ」
お互いに意見交換をし、技術者らしい感想を述べていた。
目の前で圧倒的な破壊を成し遂げていても、それを成功とせず喜びもしない。
アリウムはその異質さに戸惑い、恐怖を感じた。
―――王都からきた天才魔法兵装技術者、シキ。
彼女は自他共に認める魔法兵装技術関連の天才。
その彼女が協力を惜しまない程の元技術者。
賊狩りと呼ばれる血塗れの冒険者は、まごう事無く秀才の一人であった―――
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