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3話 挑発と挑戦
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アリウムがブロンズクラスの冒険者となり数日。
賊狩りと呼ばれていた鎧の騎士は、徹底した殺戮を最善としていた。
が、ここ最近は必ずしも全滅させて殺す事も無く、何人かの捕縛者を出している。
心境の変化か、それとも効率を重視した結果か。
いずれにせよ、過去の行いを知る人間は彼の行動に驚いていた。
「アルバートくんって、どんな人なの?」
「え、急にどうしました?」
街の買い物帰り、アリウムとシキは仲良く歩いていた。
袋いっぱいの食べ物を抱え、他愛のない会話を交わしてシキはアリウムに投げかけた。
「いや~アタシは彼の噂を聞いてギルドの要請に志願したけど、
アリウムちゃんは自分からあの人と一緒にいるんでしょ?
アタシよりかはアルバートくんの事知っているのかな~って?」
「どうでしょう……私も長い時間を共に過ごした訳ではないですし、
私よりもサクラさんの方がアルバートさんに詳しそうですよ」
「サクラちゃんにも訊いたけど全然話してくれないんだよね~
本人に訊こうにも、ほら?アルバートくんって仕事の話しかしないから」
「あー……それは、そうですね」
苦笑しつつ、ゆったりと歩を進める。
何気ない、ありふれた日常を心から喜ぶアリウム。
暗い血の世界に染まりつつある事を考えると、彼女はこのひと時に安堵した。
「でも、最初に会った時よりも優しくなった……気がします」
「優しく?」
「はい、雰囲気が…こう、少しだけ」
「ふ~ん、アタシにはちょっと分からないかな~」
「私から見ると、シキさんの方がアルバートさんとよく話しているイメージがあります、
武器開発のやり取りを見ていると、ほんのちょっと楽しんでいる様に見えますし」
「え~?あの人凄く淡々と説明するだけだよ~?
アリウムちゃんにはそう見えてるのか~」
アルバートの話で盛り上がり、思わず雑談が進むアリウム。
普段の少女らしい笑い方に花が咲き、道行く人々も目を惹かれた。
その時であった、馬が駆ける音が轟く。
街中を人の迷惑を気にせず堂々と走るそれは、二人が歩く道を駆けていた。
「な、なんでしょうか…」
「ん~よっぽど急いでいるにしても、騎乗禁止エリアでこれは異常だよね~」
「それに……あの、なんだかこちらに近付いていませんか?」
急接近する騎馬。
それは道行く人々を押しのけて二人に近付き、アリウムに向かって手を伸ばす。
「―――え」
「アリウムちゃん!?」
ほんの一瞬の出来事である。
真っ直ぐな道、人気のある場所、それが油断を生んでいた。
アリウムは掴まれた腕を振り払う事が出来ず、強引な力で攫われていく。
「こ、このッ―――」
「寝ていろ、嬢ちゃん」
「ぐむッ!?……っ……」
抵抗しようと動こうとするが、彼女を攫った男は魔法を使って気を失わせる。
呆然とするシキ、遠ざかるアリウムの姿。
事態は急変し、アリウムはその身を危険に晒していたのであった―――
賊狩りと呼ばれていた鎧の騎士は、徹底した殺戮を最善としていた。
が、ここ最近は必ずしも全滅させて殺す事も無く、何人かの捕縛者を出している。
心境の変化か、それとも効率を重視した結果か。
いずれにせよ、過去の行いを知る人間は彼の行動に驚いていた。
「アルバートくんって、どんな人なの?」
「え、急にどうしました?」
街の買い物帰り、アリウムとシキは仲良く歩いていた。
袋いっぱいの食べ物を抱え、他愛のない会話を交わしてシキはアリウムに投げかけた。
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本人に訊こうにも、ほら?アルバートくんって仕事の話しかしないから」
「あー……それは、そうですね」
苦笑しつつ、ゆったりと歩を進める。
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「でも、最初に会った時よりも優しくなった……気がします」
「優しく?」
「はい、雰囲気が…こう、少しだけ」
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「私から見ると、シキさんの方がアルバートさんとよく話しているイメージがあります、
武器開発のやり取りを見ていると、ほんのちょっと楽しんでいる様に見えますし」
「え~?あの人凄く淡々と説明するだけだよ~?
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アルバートの話で盛り上がり、思わず雑談が進むアリウム。
普段の少女らしい笑い方に花が咲き、道行く人々も目を惹かれた。
その時であった、馬が駆ける音が轟く。
街中を人の迷惑を気にせず堂々と走るそれは、二人が歩く道を駆けていた。
「な、なんでしょうか…」
「ん~よっぽど急いでいるにしても、騎乗禁止エリアでこれは異常だよね~」
「それに……あの、なんだかこちらに近付いていませんか?」
急接近する騎馬。
それは道行く人々を押しのけて二人に近付き、アリウムに向かって手を伸ばす。
「―――え」
「アリウムちゃん!?」
ほんの一瞬の出来事である。
真っ直ぐな道、人気のある場所、それが油断を生んでいた。
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「こ、このッ―――」
「寝ていろ、嬢ちゃん」
「ぐむッ!?……っ……」
抵抗しようと動こうとするが、彼女を攫った男は魔法を使って気を失わせる。
呆然とするシキ、遠ざかるアリウムの姿。
事態は急変し、アリウムはその身を危険に晒していたのであった―――
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