あさおねっ ~朝起きたらおねしょ幼女になっていた件~

沼米 さくら

文字の大きさ
35 / 50
なのかめ ~そして、ふたりは。

あたらしいくらし

しおりを挟む
 あれから、およそ数日が経った。
「あおいちゃーん、ごはんよー」
「はぁい……ふぁ……」
 最近はよくうちに泊まりに来ている翡翠さんの声。あくびをしながらリビングに出てくるのは、幼稚園の制服を着た俺。
 髪をとかしたり顔を洗ったり……あと、服を着たり。というかある程度大きいボタンから付け外しできるようになってきた。時間はかかってしまうけども。
「……にぃに、おむつ」
 瑠璃のほうは中学校の制服姿で、スカートをたくし上げた状態で寝転がっていた。
 もちろん下着も見えてしまっているのだが……それは普通の中学生が穿くようなものとは違っている。
 おむつ。しかも、ピンク色のお花柄の可愛いやつ。それもすでに薄黄色に膨らんだ状態の。そう、赤ちゃん用の一番大きなサイズのおむつにおもらししてしまっているのである。
 とどのつまり、あれから瑠璃のおもらしは治ることはなかったというわけである。ついでに俺も。
 いまは姉妹揃ってトイレトレーニングの真っ最中。とはいえ、まだそのスタートラインに立てるか立てないかくらいの段階なのだが。
 俺の場合は尿意に気づけるのはまだ五割くらいで、そのうちトイレに行けたのは三割あるかないか、そして実際にトイレで出来た回数はいまだにゼロ。瑠璃も全く尿意を感じていないわけではないらしいがトイレは使えていなかった。二人ともおむつが外れる気配すらない。
 とか何とか言っている間にも。
「……んっ……」
 股間がむずむずしてきた。尿意である!
「な、なぁに?」
「お、とい、れ……いく……」
 瑠璃の問いに答えつつ、一歩一歩トイレに向かおうとするものの、水門はあまりにも弱く。
「あぅ……ああ……」
 脱力した。
 水門開放、膀胱の中身が尿道を通って放出され、白かった下着内部の吸収帯を膨らましていくのを強く感じる。
 ……むぅ。悲しくなんてないもん。ちょっと、なきそうだけど……。
 涙をぐっとこらえながら、立ち上がると。
「……ひすいねぇね、にぃにもおむつだってーっ」
「ちょ、やめてくれよ……。自分で替えられるから……」
「はいはーい。おむつ替えるわねー」
「うわぁっ!」
 背後からにゅっと現れた、美女……というより美少女な感じの二十代女性。その香りにどきりと心臓が強く拍を打つ……と共に微かに違う臭いも感じた。
 ああ、またおしっこしたんだな……。
 翡翠さんも相変わらずらしい。ここには三人分の尿臭が漂っていた。

 ――あれから、生活は大幅に変わった。
 まず、瑠璃は幼児退行するようになってしまった。
 日によって多少変わるものの、九条先生によれば少なくとも思考や感情、言動は中学生のそれとは到底思えない、とのこと。
 ただし、記憶や知能に関してはそのままだから、普通に中学生程度の問題も解けるし俺や珊瑚ちゃんのこともちゃんと覚えていた。そして、おむつのことでいじめられてしまったことも。
 それがトラウマになってしまって、教室に入ることができなくなったという。いまのところ保健室登校らしい。
 そして、俺は幼稚園に通うようになった。
 何もできない子供が家に一人でいるのはやはり危ないからというのが表の理由。やっぱり家で一人で自分の身体を観察するよりも幼稚園で幼女を愛でていたいというのが真の理由である。我ながら酷いな。
 ……そうして、俺たちは二人で支えあって暮らしている。
 今日も、また。

「るーりー」
 そうこうしている間におむつを替え終わって、インターホン越しに珊瑚ちゃんの声。
「はぁい!」
 瑠璃はぱたぱたと軽快な擬音を立てながら玄関へと走っていき。
「いってきまーす!」
 学校へと出発した。
「……俺たちも行きましょうか」
「私《・》でしょ?」
「細かいなぁ……」
 珊瑚ちゃんや翡翠さんに話し方の矯正をされていたりするのはおいといて、朝食もほどほどに。
「行ってきます」
「お邪魔しましたー」
 幼稚園に歩いていく。翡翠さんと一緒に。今日は送っていってくれるようだ。
 送迎バスなんてないから歩いていくしかないのが少し辛いところなのだが……そんな愚痴は放っておいて、足を進めて。
「……だいぶ可愛くなってきたわね」
「ほえ?」
 翡翠さんの言葉に、気の抜けた声が出てしまって、俺は慌てて口を塞ぐ。
「にゃっ、にゃんでもないからっ!!」
「ふふ、かーわいっ」
「にゃにぃ!?」
 そして、顔を真っ赤にして声をあげた。

 幼稚園にたどり着くと、なのちゃんが俺に駆け寄ってきて。
「あおいちゃーん!!」
「むぐへっ!!」
 フローリングをスライディング。もはや恒例である。そして。
「おはよ、あおいちゃんっ!」
 そのキラキラした笑顔に俺は癒されるのである。
「うん、おはよう。なのちゃん」

 ……楽しい毎日。夢のような日々。
 それが、いつまで続くのかわからない。いつか、終わりが来てしまうはずだけど。
 俺は、もう壊したくない。
 いつか、壊れる日がくるまで、この幸せを崩さずに、できる限り守り抜く。そう俺は誓った。
 俺にできることは少ないけど、それでも。

 誓いと幸せを胸に秘めて、俺は今日も走り出す。

 **********

 短い間でしたが、お読みくださりありがとうございました。
 もともとここで完結させる予定でしたが、未回収伏線が多いため、続編を執筆することにしました。
 詳細とついでに制作秘話は新年になってから近況ボードに書きますので、見たい方はそちらをご覧ください。
 二〇二〇年は短い間でしたが、応援ありがとうございました。二〇二一年もよろしくお願いいたします。よいお年を。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...