【完結】この世界で回復魔法が使えるのは私だけのようなのですが、左手に触れても回復するようです。

桜もふ

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15 第二の家族

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 私は人集りに目を向けず、エル達が帰って行く後ろ姿をずっと見つめ。

 一度俯き、再びエルを見つめると。

 まだエルと話したかったな。

 もっとエルの笑顔を見ていたかった。

 私は心の中で『帰ってほしくなかった』の。

 エルが帰った後が怖い。

 もし、私より可愛い女の子がお見合いに来たら?

 容姿に自信が無いから。

 エルは優しくて頼りになる強い男性。

 それに何と言っても……なのよ。

 エルを見つめながらそんな事を考えていると。

 私に振り向き、エルは微笑みながら一度戻って来てくれた。

「俺はココネ以外の女には興味はない!

 お見合い相手も妻もココネだけで良い!!」

「エルは心が読めるの?」

「心は読めないが……ココネの顔を見れば何となく分かるよ」

「そんなに心配してる顔だった?」

「それはもう『帰らないで』と心が叫んでいたよ」

「やだっ!

 恥ずかしい」

「可愛いよ」

 頭を優しく撫でるエル。

 周りや知らない人達が見ても分かる。

『バカップル』みたいな会話だ。

 エルの一言一言が嬉しすぎて茹でタコ状態。

 サーシャや女性陣は胸の前で両手を組んで神様に祈る様な仕草で、私とエルの会話を聞いては頷いたりウットリした顔をしている。

 エルが女性陣の方を向くとは思っていなかったのか、スズラン宿の皆は驚いていた。

「ココネ、これからは周りに気を付けないといけない」

「それは……私がエルとお見合いしたから?」

「それもあるが、お見合いに成功した女性が今までいなかったからだ」

「……私が持ってる治癒の力も関係している?」

「あぁ、それが一番狙われやすい一つだ。

 だから人前での治癒は避けてほしい」

「うん、分かったわ」

 エルはスズラン宿の皆を見た後、ゴードンに目で『後は頼む』と言うかの様にお互いに頷き合っていた。

 地面に魔法陣が表れた後、エル達は隣国へ一瞬で移転していた。

    浮遊魔法で帰るのかと思っていたから、一瞬で消えた魔法に驚いたな。

 でも、ゴードンが言った言葉にいまいちよく分かっていなかった私は、これからいろんな事に巻き込まれる事になるのは、誰も知らない。

 翌日の早朝に衛兵が私を探しに来たらしいのだが、宿にいる皆が私を守る為に追い返してくれたのだとか。

「えぇっ! 朝日が登る頃って、かなりの早朝なんじゃ?

 私の為に……皆ありがとう」

「私もだけど、皆ココネの事が好きだから。

 当たり前の事をしただけだよ」

 私は嬉しくてサーシャに抱きついていた。

 こんなに嬉しいって感情は両親がいた時以来だ。

 今までの環境が悪かったから。

 その事を知っているのは、この宿の優しい人達と隣国であるアリーシオンの皆だけ。

 エルとお話しが出来ただけでも嬉しいのに、婚約者になれた事が凄く嬉しい。

 これ以上は何もいらない、この幸せだけがあれば私は十分だから。

「サーシャ、サーシャだけじゃなく、この宿にいる皆が大好き!

 私の事を守ってくれて、本当にありがとう」

 サーシャに抱きついたまま、私は涙を流して感謝をした。

「ココネってば、大袈裟だよ。

 これが普通の事なんだよ?」

「大袈裟かもしれないけど、私は嬉しいの」

「ココネは今までがツライ毎日だったから感情とかが麻痺してるんだよ。

 これが普通の事だから、少しずつ普通の事を覚えていこうね」

 私はサーシャに笑顔を向けて、頷いた。

「話は終わったか?

 ココネ、腹が減っただろう?

 今日の朝食は野菜たっぷりのスープとクルミパン、デザートに苺タルトだ」

 話を聞いただけで、返事をする前にお腹が先に返事をしていた。

 私は恥ずかしくて、顔を両手で覆ってしまった。

「ココネのお腹は正直だね。

 私もお腹空いた」

「ははははっ!

 良い返事だ!

 食堂で皆が待っているから行こうか」

 頷きながら食堂に入ると、甘い匂いが部屋いっぱいに充満していた。

 この匂い、なんだか落ち着く。

 そう言えば、ママも苺タルトを作ってくれていたわ。

 パパは必ず二切れは食べていたっけ、思い出が次から次へと脳裏に蘇ってくる。

「ママ……パパ……」

 メイサが私を優しく抱きしめてくれていた。

 優しい温もり、メイサさんの隣でゴードンが私の頭を優しく撫でてくれていた。

「私のママもこんな風に抱きしめてくれて、パパはママの隣でゴードンのように優しく頭を撫でてくれていました。

 メイサとゴードンは、私の両親の雰囲気に似ているんです。

 こんな事言ったら、サーシャに悪いですね。

 サーシャごめんね」

「謝る事なんてないよ。

 私の妹になれば良い!!

 妹になれば本当の両親になるし、私達は家族になれるんだよ。

    私はずっと妹が欲しかった。

 妹になってくれないかな?」

 私は自然と頷いていた。

 亡き両親が、私の背を押してくれた気がしたから。

「……ママ、パパ、お姉ちゃん、手続きの仕方は分からないけど、今日から家族として宜しくお願いします」

 スズラン宿にいる皆は、微笑みながら見守ってくれていた。
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