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20 神獣のスオウとの再会

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「パパ、助けてくれて……あり、がとう……」

    声を殺し、ポロポロと涙を流している私に、ララが涙を拭ってくれた。

「泣き顔も可愛いけど、笑顔が一番よ。

    さぁ、これで可愛いルルナになったわよ」

「もう大丈夫だからな」

「お前さんを泣かす奴は、俺が殴ってやるから」

(コクコク)うなずくことしか出来なかったが、心中では(ありがとう!)と何度も叫んでるから。

    今だけは泣くことを許して。




    歩くこと数時間。魔物がワラワラと周りに群れているが、未だに誰も戦っていない。

    だって、私が結界を張っているから。

「便利だよな。

    まあ、帰り道が分からないと怖いわな、特にコイツらの目を見てみろよ。

    血走ってるぞ! はははっ!」

    マリウスは目が血走っている魔物に、指をさして笑っている。

(そんな血走った目……笑えるわけないじゃん!)

    パパに抱っこされてる私は、そんな血走った目の魔物の顔なんて見たくなくて、3人の前で魔法で攻撃しそうになり、可愛い幼女のように「怖いから見たくない」と言って、パパの首に抱きついて顔を伏せた。

(あっぶなかったぁ、私の素性を話してない3人に攻撃してるところを見られるところだったよ)

「おぉ~~、よしよし。コイツらの顔は怖いよなぁ」

「俺らは見慣れてるが、女の子にはコレはキツイよな!」

「私もオンナですが?」

「ララは……あぁ、早く帰ろう!」

「マリウス、さっきの間はなぁに?

    ねぇマリウス……結界から出たら死ぬわよ?」

    わぁぁ、この中で怒らせると怖いのはララなんだね。覚えておこう。

「おかしいわね、階層はこの辺りだったはず。

    ……っ! 何か来るわっ!!」

「おいおい、なんだこのおっかねぇ魔力と威圧感は!」

「「来るぞっ!!」」



    ドオオォォーーーーンッッ!!

    と、大きな音と地響きとともに砂埃が舞い、周りが見えないが声だけが聞こえてきた。

『やっと追いついたぜ!

    待たせたな、!』

    なんで私のことを知ってるの?

    あっ、視界が見えてきた。

    って、マ「マンティコアーー!!」

    私は思わず叫んでしまった。

    獅子の身体にドラゴンの翼、サソリの尻尾は3本あり、猛毒だ。毒耐性や毒の魔物やモンスター相手でも、少しでもかすれば即死させる威力がある。

    そんなマンティコアを見たパパ達は、冷や汗をかいてる。

    あれ、なんだろこの感じ、私知ってるかも。

    脳内でノイズと共に、濡れて震えていた地球で可愛がっていたペットのスオウの映像が一瞬見えた。

    もしかして……あの可愛いスオウ?

「パパ、私を降ろして大丈夫だよ」

「やはり……ルルナが神獣様の……主……」

    パパに降ろしてもらい、目の前のマンティコアに問いかけた。

「あなたは……?」

『あぁ、ワレのルナ』

「「「…………!!

    ルルナが神獣様の主!!」」」

    この3人はルルナが神獣の主だと知らなかった、この中で知っていたのはギルマス、私のパパだけだ。

    結界から出る私を、誰も引き止めようとはしない。

    だって、最高神である神獣がいるから。

    さっきまでいた魔物やモンスターは神獣のスオウによって一掃されていた。

    それに、再び魔物が囲って来たとしても、スオウが一瞬で消してしまうから。

    私はスオウに近付き、ぼふんっと抱きつきいて、小さな手でモフモフを堪能した。

「スオウはマンティコアだったんだね。

    また会えて嬉しい!」

『ワレはスリチア国で、国王と話をした。

    場所と設備が整い次第、使者が来るだろう』

「場所と設備?

    何か作ってるの?」

『ルナを助けた者達の生きる場所だ』

    後ろを見ると、さっきまでの焦り顔とは違い、真顔になっているパパたちは、スオウにあることを問いかけた。

「神獣様、質問……よろしいでしょうか?」

『敬語はいらん、普通に話してくれていい。

    ルナの恩人だからな』

「では、単刀直入に聞きます。

    ローバル国は神の加護を失うということで合っていますか?」

『そうだ。ルナの身内とはいえ爵位や地位までも奪った。

    ルナにしてきた数々の行いを許すことは出来ない。

    そんな国に加護はやれん!

    ワレは……ローバル国を滅ぼそうと考えていたが、ルナが悲しむ姿は見たくないのでな。

    ワレの加護をスリチア国や他の国に与えることにしているが、他の国のことは様子見で我とルナの判断で決める。

    お前達のことはワレが力を貸そう。

    家族を連れて、ワレについて来るがいい』

「「「「ありがとうございます!」」」」

『ルナ、いい仲間に会えて良かったな』

「うん、大切な仲間と私のパパだよ。

    マロン!

    この子はマロン、私の家族なの。

    スオウも大切な家族であり、大切な友達だよ」

    マロンは私の肩に乗り『キュキュウゥゥ』と可愛らしい声で鳴いている。

『主従関係や仲間ではなく家族と言ってくれるのか?

    ……家族、大切な友達と言われるのは嬉しいものなんだな。

    マロンか、良い名を貰ったな。

    マロンは女神の眷属だ』

「うぇぇぇぇぇ!!」

    つい叫んじゃった。けど、マロンって女神様の眷属だったんだ。

    スオウは家族という言葉に感動してるみたい。

    それにしても、マンティコアって想像以上に大きいんだな。

    そうだ、スオウに乗れば直ぐに帰れるかも。

「スオウ、みんなを乗せてくれない?

    早くギルドに帰りたいんだ」

『良いぜ、ワレの背に乗ったことを光栄に思えよ?

    さあ、乗れ!』

    パパ、ララ、モ-リス、マリウスの順に飛び乗ったは良いが、私はというと。


    ピョンッ、ピョンッ!

    少し離れた場所から、走って勢いをつけ【ジャンプ】をしたがスオウの足に飛び付いて終わった。その場から毛を伝って登るが……力尽きてスルスルと落ちてしまう。
 
    小さな女の子が頑張って乗ろうと【ピョンピョン】跳ねたり【ジャンプ】してよじ登る姿は、誰が見ても可愛く見えるだろう。

    パパなんてウンウンとうなずきながら「俺の娘は何をしても可愛いなぁ」と、眉をハの字にしてるし。

    ララは「か、可愛いわ」と言いながら両手で顔を覆い。

    モーリスは目をつむってプルプル震えている。

    最後尾にいるマリウスは「妹が欲しかった」と上を向いて呟いていた。

「スオウ……私、乗れない」

    スオウが頭を地面につけてくれたから、鼻から頭へと登り……両耳の間に座ることが出来た。

「うわぁぁぁぁ!!

    めっちゃ高ぁぁい!

    スオウは大きいから街に入れるかな?」

『ワレは小さくもなれるぞ?』

「じゃあ、街に入る前に小さくなってね。

    帰ったらブラッシングしてあげる。

    マロンは落ちると危険だから、私の服の中にいてね」

『ルナもお前達も、ワレの毛を握っていろ。

    落ちないよう飛ぶけどな!』

「「「「「はい!」」」」」

    スオウの耳を掴み、落ちないか心配だったが杞憂に終わった。

    マンティコアは颯爽と走り抜け、大きな翼で空へと飛び、あっという間にサイチの街へ到着した。

    が、マンティコアが現れたことにより大騒ぎになってしまった。

    サイチの門前は大勢の人だかりで、中に入れない状態だ。

    スオウはニヤッと笑みを浮かべ、飛んだ!!

    ただのジャンプだけどね。

    みんなを降ろしたあと、子犬のように小さくなったスオウが可愛すぎて、思わず抱きついちゃった。

「「可愛いーー!!」」

    私とララの声が被り、スオウを撫でまわしていた。

「おいララ、相手は神獣様なんだから、もっとこう……」

『ワレは気にしない。それに、敬語は好かんのだ』

    サイチの街ではスオウの歓迎会を開き、ギルドのみんなと再会し、みんなに頭を撫でられた。

    ローランとライラの胸に飛び込み、無事なことを態度で示そうと思い、小さな手を挙げたり振ったりジャンプをした。

    その後は、賑やかでスオウも私も笑って数日を過ごした。





    スオウが現れたことにより、国中……クローリア国の王宮では大騒ぎになり。

    真っ先に、ローバル王の命により、使者がサイチの街へとやって来た。

    もちろんスオウの答えは……。

   
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