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39 暗殺者とレンルーク様からの求婚

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    ガシャンッッ!!!!

    っと、ガラスが割れる音がし数人が向かったが囮作戦のようだった。

「結界!!」

    魔法攻撃も物理攻撃も通らなかった。

    皆様がこちらを振り返った。

「これは、ルナのスキルかい?」

「はい。ベルおじ様」

「それにしても、瞬時に出せるとは大したもんだ!」

「おじい様、お褒めいただきありがとうございます」

    暗殺者は何度も攻撃を繰り返すが無駄だ。

    私の前にノワール公爵様が守るようにして剣を構えた。

「エメルロ嬢、結界を解除する準備はできてるね。

    ……今だよ!」

    結界解除!  フワッと結界が解除されたが、ノワール公爵様のひと振りの剣で呆気なく倒れた暗殺者。

「まあ、こんな腑抜けな暗殺者なんていますの?

    呆れて言葉が出ませんわ。

    フンッ!!」

    おば様は毒舌と……腹にケリをいれるのですね。

「何たる醜態でしょう。

    情けないわねぇ!

    このっ!  はっ!!」

    うっわぁ!  おばあ様が暗殺者を蹴ったよ。それも、ヒールの踵と尖ったつま先でっっ!!

「父上、女性陣には言葉を選びましょう」

「あぁ、同感だ!」

「ワシは女性陣を大切にすると誓うぞ」


    ノワール公爵様が魔法で暗殺者を縛り浮かせた。

「コイツを騎士団まで連れていきますので、少しの間失礼いたします」

「あっ!

    スオウ、一緒に運んでほしいんだけど」

『ワレはいいぞ。

    ルークよ、ルナと乗れ。

    マロン、ソイツを運ぶのを手伝ってくれ』

『いいよ!』

    おじい様とエメルロ侯爵家の皆様に「行ってきます」と一言伝え、騎士団へと出発した。

    騎士団副団長に暗殺者を突き出すと、苦笑いされていた。

「仕事熱心な参謀ですね。だが、女性を連れてるならデートの一つや二つして来い」

    そう言って、副団長に背中をバシンッと叩かれていた。

「では遠慮なく行かせてもらいます」


    ノワール公爵様と街並みを歩いたり、ベンチに座り甘い果実の飲み物を飲んだりと、デートを楽しんだ。

    お目当てのカフェに入り、温かくて美味しいお茶を注文し、談笑していた。


    ノワール公爵様と楽しく話しながらお茶を楽しんでいると視線?

    何故ここでパパの視線がするの?

    後ろを振り返ると体がビクついた。だって、パパが後ろの影にいるんだもの。

    レンとドルバルがパパを引きずってる。一応手だけ振っておこう。

「誰かいるのかい?」

「あ、パパが……。

    あの、引きずられてる人がパパなの」

    ノワール公爵様はパパ達にお辞儀をしたのだが、レンとドルバルの拘束を振り切ったパパが、ズンズンとこちらへ歩み寄って来た。

「ルナに触れていないだろうな?」

「パパ!  ノワール公爵様に失礼なこと言わないで!!」

「触れるとは、どの程度でしょう?」

「どの程度って……全てだ!!  全て!!

    髪も服も指先もだ!!」

    ノワール公爵様は笑みを浮かべたままだが、目は笑ってない。

    パパは私が一生独身でいろって言いたいのかな?

    この世界に来て初めて恋を知った方なのに……。

『ルナ、ルーク、ワレの背に乗れ!』

    私を横抱きにしたノワール公爵様がスオウの背に飛び乗り、この場所を離れた。

「ルナに触れるなと言っただろうが!!」

    パパを置いて空へ逃亡した私達は、ノワール公爵様に話を聞いてほしい。と言われ、了承した。

「エメルロ嬢、このあと話したいことがありますのでお付き合いいただいても?」

    コクリとうなずき、スオウの背に乗り空中散歩。

『ルークよ、ここでなら聞かれることもなかろう』

『空飛ぶ人間がいれば別だけど』

    私はノワール公爵様と向き合って座り、話を聞いた。

「俺はね【レンルーク・メリデン・ロワール】ローバル国第1王子だった男だ。

    母が病、いや毒殺され俺も殺されかけたところでサイチ街のギルマス達に助けられ、エメルロ侯爵家へ話をしてくれて、隣国だったここスリチア国に住まうエメルロ侯爵家の長に連れられ、国王陛下に話をしてくれたんだ。そして、子供に恵まれなかった公爵家へ養子として可愛がられ、今の俺がいるんだ」

「そうだったのですね。

    わたくしの話はお聞きだとは存じますが、ローバルの王族といろいろありまして、婚約破棄のあと国外追放を言い渡されノワール公爵様と同様、サイチの街のギルマスに助けられたわたくしは養女として引き取ってくださったのです」

「義弟が申し訳ない」

    フルフルと顔を横に振り。

「謝る必要はないのです。

    婚約破棄と国外追放があったからこそ、家族ができ、ノワール公爵様とお会い出来たのですから」

    お互いの瞳を見つめながら話しているとスオウとマロンがノワール公爵様の背中を押したようだ。

『2人は似ておる。

    ワレはルークならばルナの伴侶として許すぞ?』

『うんうん、ボクもだよ』

    頬に手を当てると火照っていた。きっと私の顔は真っ赤なのだろう。

    チラっと、ノワール公爵様を覗き見ると顔が真っ赤だった!

「もう!  スオウ、マロン。変なこと言わないでよ。

    ノワール公爵家なんだから婚約者がいるはずだよ?」

「あ、俺には婚約者はいないんだ。

    獣人は番同士で結婚するが、俺は人間だからね」

「あ、あの、わたくし……」

    私の口を人差し指で言葉をさえぎられ。

「ここは男の俺が言うべきとこだよ。

    ルナ嬢、俺と結婚してくれませんか?」

    ノワール公爵様が涙でボヤける。返事は決まってる。でも……。

「ごめんなさい。わたくし……私には、大切な使命があるのです。その使命が終わらない限り何も言えません!

    ごめんなさい。ごめんなさい……」

「俺は待つよ。ルナ嬢が顔を縦に振るまで待つ。だから、その時は……」



    スオウとマロンはギルドの上で止まっていたこともあり、パパが下から怒鳴った。

「こらぁぁぁぁぁ!!

    ルナに触れるなと言っただろうがぁ!!

    下に降りて来いっっ!!」

    ギョッとして下を見るとパパが真っ赤な顔をして怒鳴っていた。そんなパパが可笑しくて2人で「くすくす」と笑ってしまった。

    本当は「はい」と伝えたかった。でも、私には全世界をスオウとマロンとで周らないといけない、神様と女神様との約束を……。
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