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番外編 ⑤ (ハンシット国)
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私達はスオウとマロンの背に乗り、海を渡って夕方頃に【ハンシット国】へ着いた。
上空から街並みを見たが変わった様子は分からなかった。ただ、パパとルーク様は真剣な顔で街並みや遠くの方を見ては、考え込んでいた。
これはきっと何かある! そう思っているとルーク様が私に耳打ちをして来た。
「この国では絶対に1人になってはいけない! お義父さんか俺と一緒に行動すると約束してほしい!」
顔を覗き込むルーク様。少し振り向きルーク様の顔を見ると、いつもの笑顔はなく真剣な眼差しで私の言葉を待っていた。
このような真剣な顔を見るのは初めてだ。この国に何かあるってこと?
「この国に何かあるのですか?」
頷き、パパと目配せをしたルーク様から聞かされたのは、この国で起こっていることだった。
「このハンシット国は人身売買をしているので有名なんだ。
奴隷として売られた者は酷い扱いを受ける。だから、絶対に俺から離れないで!」
後ろから支えている筋肉質で力強いルーク様の腕をギュッと両手で握った。
「はい。ルーク様から絶対に離れないとお約束します!」
視線を感じ、横を向くとパパがいつも以上に真剣な顔でルーク様にこれからの事を話してきた。
「ルーク、ここではリビアとルナを1人にさせないよう気をつけねぇとだ!」
パパの言葉を聞いたルーク様は頷き、ハンシット国で起きている事件や人身売買、殺人、奴隷。特に性奴隷が大半だが、国王は知らぬ存ぜぬで強引に押し通していることを聞いて驚愕した。
「騎士団でもハンシット国の話が何度も出ていました。
俺が知る限りでは、国王が裏で手を回し私利私欲の為だけに、他国から女性や幼女を誘拐しているようです」
「そこまで酷いのか……ルナ、リビア、この国では絶対に部屋から出るんじゃねぇぞ?」
「分かったわ。
私とルナは部屋から出ないわ。
ルナもそれでいいわね?」
コクリと頷き。
「うん。部屋に結界を貼って大人しくすると約束する!」
『結界はワレが貼っておく。破られない結界をな!』
『ボクはリビアとルナの側から離れないから大丈夫!』
『テオル、ルーク。この国の宿は泊まらぬ方がいい。
泊まるなら……あの森がいいたろう』
パパとルーク様は反対した。なぜなら、あの森には凶暴な魔獣がはびこっているので有名なんだとか。
「待て待て、あの森には凶暴な……」
『凶暴な魔獣がはびこっているから?
その凶暴な魔獣はボクとスオウだよ』
『グックックックッ!』
マロンのありえない発言にスオウは喉を鳴らして笑っていた。そこ笑うとこかな?
『この国は前々から滅ぼそうと決めていたんだ。この森にはワレの結界を張ってあるから魔獣は出ぬよ……心が醜い者を脅かすのは楽しいものだ!』
『ボクが1番初めに脅かしたんだよ。
【誰の許可を得て魔の森へ侵入した? お前らを食ってやろうか!?】と、叫びながら追いかけると、アイツら逃げて行ったんだよ。情けない悲鳴をあげてね』
『お前達にも見せてやりたかったが、安全第一だ。あと、この国にいる間は森の中で寝泊まりし、空の上からの偵察でいいだろう』
ルーク様とパパはスオウとマロンの言葉に耳を傾けていた。作戦会議でもしてるのかな?
私はママと一緒に可愛いメルヘンなお家を出し、リビングのソファーでくつろいでいた。
「眠いの?」
半開きの目を片手で擦り「ふぁぁぁ」っと、あくびをし。お風呂に入るのは無理そうだと悟った私は「クリーン」と魔法を唱えた。
「……ママ……おやす…み……」
フカフカなソファーの上でスヤスヤと寝息をたてて眠ってしまった。
頭の中でバチンッ! と弾けた音が鳴り飛び起き、部屋を見渡すとスオウとマロンが窓の外を見ていた。私は急いで着替え、窓を開けるとマロンが先に飛び出した。
『救出に行く。ルナ、乗れ』
「うん。
ルーク様、起きてください!
マロンとスオウとで救出に行ってきます。必ず帰ってきますので……」
「駄目だ!
俺も行くから!」
ルーク様とスオウに乗って窓から飛び出したはいいが、救出って何?
不安な気持ちが顔に出てたのか、ルーク様に後ろからギュッと抱きしめられ。
「大丈夫だよ、ルナのことは俺が守るよ!」
そんな言葉をサラッと言うルーク様に胸キュンしちゃったよ。
前方で誰かがマロンに抱きしめられてる?
あれは獣人だ!
「ルーク様、獣人さんが!」
「あぁ、ここで獣人に会うとは……あれは、ホワイトタイガーの獣人!?
あの方は王弟殿下だ!!」
「えぇっ!!」
とにかく怪我や体調が心配だわ。私とルーク様は王弟殿下に駆け寄り、治癒をした。
「ヒール! キュア!
クリーン!!」
(怪我や病気を治癒し、清潔を保つ為に身体と衣類を綺麗にしたけど、心のメンタルまでは癒せない)
肩にポンっと、手を置いたルーク様。任せてって意味だろう。それに答えるために(コクリ)とうなずいた。
王弟殿下の元へ近付き、跪いた。そんなルーク様の行動に瞳を大きく見開き、震える手でルーク様の肩に手を置いた。
「ジェイドス・シー・スリチア王弟殿下。
スリチア国王族をはじめ、我ら騎士団も捜索しましたが、それが叶わず大変申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げているルーク様を見たジェイドス王弟殿下は、顔を横に振り口を開いた。
「俺は20年前にクロートフ国との国交の話が持ち上がり、兄上の代理として視察に向かった。だが、クロートフへ向かっている時に煙のような物を嗅がされ、俺達はそこから記憶が無いんだ。
この国へ売られ奴隷として使われてきた。俺は争い事から雑用、肉体労働を休む間もなく強いられ、夜の奉仕まで……女性には特に酷い仕打ちだ。俺があの場所から脱出が出来たのはマロン様のお声が聞こえ、道を光で示してくれたからなのです!」
『ボク達はまだ旅の途中だけどジェイドス王弟殿下は今直ぐ帰りたい?
帰るなら超特急で帰れるけど?
ボクが無事に送り届けると約束するよ?』
ジェイドス王弟殿下の瞳から頬へと涙が流れ落ちた。
「帰りたい。俺はスリチア国へ帰りたいです!!」
「陛下への報告もありますし、俺がご一緒します」
ルーク様と少しの間離れてしまう。ジェイドス王弟殿下と話すルーク様を見たあと俯き、ギュッと胸の前で両手を握った。
少し不安だけど、今はジェイドス王弟殿下の御身を考えることご一番の優先だ。だから、笑顔で見送らなきゃ。
「お気をつけて……」
手を引かれ、驚きと恥ずかしさで顔に熱が上がって来るのが分かる。だって、ルーク様に抱きしめられているから。
「ここで判断を間違えると運命が変わってしまう。そうだよね、スオウ。マロン?」
マロンとスオウは頷いた。
『そうだ。その選択肢によって運命が変わる……ルークは2度目の転生だったな』
『前のルークはスリチア国へ渡る前に……国民の目の前で公開処刑されたんだよ』
そんな、ルーク様も転生? 2度目の人生ってことは私と同じではないけど、一度死んで転生したんだよね。
「ルナとは違うけど、俺は一度殺されて神様と女神様の導きで人生が巻き戻ったんだよ」
「そうだったんですね。
辛い過去を話してくださりありがとうございます」
「ジェイドス王弟殿下がスリチア国へ戻ることが出来れば、クロートフ国との戦争が避けられるんだ」
「あぁ、俺がスリチアに帰ったら戦争を止めてやる。任せてくれ!」
『我らは先にフェールントへ行く。
ルークとマロンはジェイドス王弟殿下の体調に合わせて移動すればいい。分かったな?』
『分かった!』
「はい!」
私の隣でスオウが王弟殿下とルーク様に近付き、結界を張っていた。ついでのようにマロンにも結界を張り、ルーク様と王弟殿下を乗せたマロンが見えなくなるまで見送った。
王様達は泣いて喜ぶだろうなぁ。
私達は上空から視察したり、のんびりしたりと過ごし、次の国へ移動した。
上空から街並みを見たが変わった様子は分からなかった。ただ、パパとルーク様は真剣な顔で街並みや遠くの方を見ては、考え込んでいた。
これはきっと何かある! そう思っているとルーク様が私に耳打ちをして来た。
「この国では絶対に1人になってはいけない! お義父さんか俺と一緒に行動すると約束してほしい!」
顔を覗き込むルーク様。少し振り向きルーク様の顔を見ると、いつもの笑顔はなく真剣な眼差しで私の言葉を待っていた。
このような真剣な顔を見るのは初めてだ。この国に何かあるってこと?
「この国に何かあるのですか?」
頷き、パパと目配せをしたルーク様から聞かされたのは、この国で起こっていることだった。
「このハンシット国は人身売買をしているので有名なんだ。
奴隷として売られた者は酷い扱いを受ける。だから、絶対に俺から離れないで!」
後ろから支えている筋肉質で力強いルーク様の腕をギュッと両手で握った。
「はい。ルーク様から絶対に離れないとお約束します!」
視線を感じ、横を向くとパパがいつも以上に真剣な顔でルーク様にこれからの事を話してきた。
「ルーク、ここではリビアとルナを1人にさせないよう気をつけねぇとだ!」
パパの言葉を聞いたルーク様は頷き、ハンシット国で起きている事件や人身売買、殺人、奴隷。特に性奴隷が大半だが、国王は知らぬ存ぜぬで強引に押し通していることを聞いて驚愕した。
「騎士団でもハンシット国の話が何度も出ていました。
俺が知る限りでは、国王が裏で手を回し私利私欲の為だけに、他国から女性や幼女を誘拐しているようです」
「そこまで酷いのか……ルナ、リビア、この国では絶対に部屋から出るんじゃねぇぞ?」
「分かったわ。
私とルナは部屋から出ないわ。
ルナもそれでいいわね?」
コクリと頷き。
「うん。部屋に結界を貼って大人しくすると約束する!」
『結界はワレが貼っておく。破られない結界をな!』
『ボクはリビアとルナの側から離れないから大丈夫!』
『テオル、ルーク。この国の宿は泊まらぬ方がいい。
泊まるなら……あの森がいいたろう』
パパとルーク様は反対した。なぜなら、あの森には凶暴な魔獣がはびこっているので有名なんだとか。
「待て待て、あの森には凶暴な……」
『凶暴な魔獣がはびこっているから?
その凶暴な魔獣はボクとスオウだよ』
『グックックックッ!』
マロンのありえない発言にスオウは喉を鳴らして笑っていた。そこ笑うとこかな?
『この国は前々から滅ぼそうと決めていたんだ。この森にはワレの結界を張ってあるから魔獣は出ぬよ……心が醜い者を脅かすのは楽しいものだ!』
『ボクが1番初めに脅かしたんだよ。
【誰の許可を得て魔の森へ侵入した? お前らを食ってやろうか!?】と、叫びながら追いかけると、アイツら逃げて行ったんだよ。情けない悲鳴をあげてね』
『お前達にも見せてやりたかったが、安全第一だ。あと、この国にいる間は森の中で寝泊まりし、空の上からの偵察でいいだろう』
ルーク様とパパはスオウとマロンの言葉に耳を傾けていた。作戦会議でもしてるのかな?
私はママと一緒に可愛いメルヘンなお家を出し、リビングのソファーでくつろいでいた。
「眠いの?」
半開きの目を片手で擦り「ふぁぁぁ」っと、あくびをし。お風呂に入るのは無理そうだと悟った私は「クリーン」と魔法を唱えた。
「……ママ……おやす…み……」
フカフカなソファーの上でスヤスヤと寝息をたてて眠ってしまった。
頭の中でバチンッ! と弾けた音が鳴り飛び起き、部屋を見渡すとスオウとマロンが窓の外を見ていた。私は急いで着替え、窓を開けるとマロンが先に飛び出した。
『救出に行く。ルナ、乗れ』
「うん。
ルーク様、起きてください!
マロンとスオウとで救出に行ってきます。必ず帰ってきますので……」
「駄目だ!
俺も行くから!」
ルーク様とスオウに乗って窓から飛び出したはいいが、救出って何?
不安な気持ちが顔に出てたのか、ルーク様に後ろからギュッと抱きしめられ。
「大丈夫だよ、ルナのことは俺が守るよ!」
そんな言葉をサラッと言うルーク様に胸キュンしちゃったよ。
前方で誰かがマロンに抱きしめられてる?
あれは獣人だ!
「ルーク様、獣人さんが!」
「あぁ、ここで獣人に会うとは……あれは、ホワイトタイガーの獣人!?
あの方は王弟殿下だ!!」
「えぇっ!!」
とにかく怪我や体調が心配だわ。私とルーク様は王弟殿下に駆け寄り、治癒をした。
「ヒール! キュア!
クリーン!!」
(怪我や病気を治癒し、清潔を保つ為に身体と衣類を綺麗にしたけど、心のメンタルまでは癒せない)
肩にポンっと、手を置いたルーク様。任せてって意味だろう。それに答えるために(コクリ)とうなずいた。
王弟殿下の元へ近付き、跪いた。そんなルーク様の行動に瞳を大きく見開き、震える手でルーク様の肩に手を置いた。
「ジェイドス・シー・スリチア王弟殿下。
スリチア国王族をはじめ、我ら騎士団も捜索しましたが、それが叶わず大変申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げているルーク様を見たジェイドス王弟殿下は、顔を横に振り口を開いた。
「俺は20年前にクロートフ国との国交の話が持ち上がり、兄上の代理として視察に向かった。だが、クロートフへ向かっている時に煙のような物を嗅がされ、俺達はそこから記憶が無いんだ。
この国へ売られ奴隷として使われてきた。俺は争い事から雑用、肉体労働を休む間もなく強いられ、夜の奉仕まで……女性には特に酷い仕打ちだ。俺があの場所から脱出が出来たのはマロン様のお声が聞こえ、道を光で示してくれたからなのです!」
『ボク達はまだ旅の途中だけどジェイドス王弟殿下は今直ぐ帰りたい?
帰るなら超特急で帰れるけど?
ボクが無事に送り届けると約束するよ?』
ジェイドス王弟殿下の瞳から頬へと涙が流れ落ちた。
「帰りたい。俺はスリチア国へ帰りたいです!!」
「陛下への報告もありますし、俺がご一緒します」
ルーク様と少しの間離れてしまう。ジェイドス王弟殿下と話すルーク様を見たあと俯き、ギュッと胸の前で両手を握った。
少し不安だけど、今はジェイドス王弟殿下の御身を考えることご一番の優先だ。だから、笑顔で見送らなきゃ。
「お気をつけて……」
手を引かれ、驚きと恥ずかしさで顔に熱が上がって来るのが分かる。だって、ルーク様に抱きしめられているから。
「ここで判断を間違えると運命が変わってしまう。そうだよね、スオウ。マロン?」
マロンとスオウは頷いた。
『そうだ。その選択肢によって運命が変わる……ルークは2度目の転生だったな』
『前のルークはスリチア国へ渡る前に……国民の目の前で公開処刑されたんだよ』
そんな、ルーク様も転生? 2度目の人生ってことは私と同じではないけど、一度死んで転生したんだよね。
「ルナとは違うけど、俺は一度殺されて神様と女神様の導きで人生が巻き戻ったんだよ」
「そうだったんですね。
辛い過去を話してくださりありがとうございます」
「ジェイドス王弟殿下がスリチア国へ戻ることが出来れば、クロートフ国との戦争が避けられるんだ」
「あぁ、俺がスリチアに帰ったら戦争を止めてやる。任せてくれ!」
『我らは先にフェールントへ行く。
ルークとマロンはジェイドス王弟殿下の体調に合わせて移動すればいい。分かったな?』
『分かった!』
「はい!」
私の隣でスオウが王弟殿下とルーク様に近付き、結界を張っていた。ついでのようにマロンにも結界を張り、ルーク様と王弟殿下を乗せたマロンが見えなくなるまで見送った。
王様達は泣いて喜ぶだろうなぁ。
私達は上空から視察したり、のんびりしたりと過ごし、次の国へ移動した。
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