捨てた心と拾った気持ち

リョウ

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本音

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  「別れよう」なんて言われるなんて思いもしなかった。

この20年ずっと一緒にいて
指輪渡してまで傍にいたいと思ったのは双葉だけ

当たり前にずっとじいさんになっても双葉と過ごしていく

それが俺が望んだことで双葉の気持ちも一緒だと思っていたのに

そっけなく話を終えて部屋へといく双葉の後ろ姿

バンッと机を叩いた

八つ当たりだ

「くそっ。なにがいけなかったんだよ!」

稼ぎもある

確かにホストという職業柄 教師である双葉とは生活習慣が違う

朝方帰宅する俺と違い
入れ違いに朝出ていく双葉

それが分かっていたからオーナーになり出勤も減らし
たつもりでいた

「本当にか  双葉」

名前を呼んでも返事がない

どうして

どうして

そればかりが頭のなかで繰り返される

こんなことがあっても月日はたつもので

俺と接触を避けている双葉に無理やり聞くこともできないままだった

手放せない

双葉が大事なんだ

高校の卒業式で告白したあの日

もっとちゃんと好きと伝えたかった

でも双葉に拒絶されるのが怖くて

キスして嫌じゃなかったらなんて

今思えば振られても仕方ないだろう告白だ

なし崩しに体も繋げたし

双葉の誕生日にって指輪も送った

日本じゃ結婚できないから

養子縁組も考えた

双葉の負担になりたくなくて言わなかったけど代理母出産で二人の子供も欲しいって言いたかった

双葉  本当に俺から離れるのか?

俺のこと嫌いになった?

「あーーー!もう!」

頭を掻きむしる

「いっちゃん。荒れてるよねーなにかあったの?」

BARのカウンターで酒を飲む俺に目の前の男が話しかけてくる

「なにもねぇよ」

聡いこいつならわかるだろう

「ふっちゃんと喧嘩した。違う?」

「別れを切り出された」

「はっ?バカじゃないの」

はっきり言ってくれるのはありがたい

そうバカだったんだよ俺が

「分かってるよ。俺が悪いんだ。」

「分かってるんなら、行動したらいいじゃん」

「拒絶されるのが怖い」

カランッとグラスを傾ける

「話を聞いてあげるからこの僕に全て話やがれ義理の弟くん」

彼は 要  言いたくはないが俺の兄の伴侶になる男である

「うるせぇよ!それにまだ俺はお前が兄貴なんて思ってねぇからな。ったく、兄貴もこいつのどこに惚れたんだかわからねぇ」

「要の悪口いうならいくら弟でも遠慮しないけど」

実の兄参戦って

これはもう全てを話すしかなさそうだ







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