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それは、きっと五月雨のせい
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しおりを挟むしばらく、明かりの消えた線香花火を、呆然と眺めていた私は、思い立ったように、残っていた内の一本を手に取って、火を着ける。
パチパチと、弾けるように音を立てる、小さな青い光は、掴んでいったら、消えてしまいそうで、
その光が、消えない内にと、
いつもの様に、
「ほら、君の分」
そう言いながら、顔を上げた。
「………」
見上げた先は、いつもの風景とは、何処か違って、何だかやたらと、広く見える。
ざあざあと降りしきる五月雨と、辺り一面に咲き乱れる青紫陽花が、余すことなく、視界の中に映り込んだ。
ふと、
海と、緑が混ざったあの香りが、風と共に突き抜けて、私の心を、強く揺らし、
頬を、冷たい何かが、伝っていった。
ーああ……、
もし、
あの日の出来事を、誰かに弁明する機会が与えられたなら、
私は必ず、こう言うだろう。
『五月雨のせいで、心が少し、馬鹿になっていたからに違いないんだ』
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