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第1話 危機的状況ですわ
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小さい頃、お母様からこんな話をされた事がある。
『サフィア、今から大事な話をするから良く聞いて頂戴。この話はとても大事な話なのよ。サフィアは将来、ちっぱいを理由にパーティを追放されて迫害に遭うわ。でも、そんなサフィアをきっと素敵な王子様が助けてくれるってお母さんは信じているわ。だから自分の人生をどうか諦めないで……』
お母さまはそう言うと、嗚咽を漏らしながら号泣し自分がちっぱいで苦労した過去を10時間に及んで話してくれた。
小さかったワタクシは"ちっぱい"の意味も良く解らずに、ただお母さまの背中をさすっていたけれど、お母様のその言葉の真意を今まさに知ろうとしていた。
「サフィアお前さ聖女の癖にロクな加護も出来ずに、魔物を遠ざける所か呼び寄せてふざけてんのかよ!」
パーティーの要であるファイターのマルクが迫りくるゴブリンの首元にロングソードを振り下ろす。
ぐぎゃっ、と小さな悲鳴を上げてゴブリンが絶命する。
「ふざけてなどいないです……。わたくし申し上げていたと思いますけれど、シラフの状態だとビーストソングの効果が逆さまになってしまうんです。」
魔物を遠ざけるはずのビーストソングも、シラフで使うと何故か逆に魔物を呼び寄せてしまう。
小さい頃は聖女としての資質がないのだと、お父様とお母さまに対して只々申し訳なく思っていた。
けれど、お父様の巡礼に着いていったお宿で間違えて飲んでしまった葡萄酒の影響で、酔っぱらっている時だけ何故か聖女としての能力を発揮出来る事に気づいてからは少しだけ自分に自信がもてた。
――でも……。
お荷物状態のわたくしは何をする術もなくパーティー後衛で待機する。
突き刺さる皆の視線。
「しかしマルクの言う通りですよ。聖女なんて絶対数が多くないし、珍しいレアジョブだからって喜んだけど、こんな使い物にならないんじゃ、いない方がマシですね。わっ、近づくなっ!」
ゴブリンに背後から襲われそうになっていた、マッパーのカロルが魔道具のアイスボムを投げつける。
ゴブリンの足元に氷の柱が出現しゴブリンの動きを止める。
「でかしたぞカロル! 今が好機」
ロングボウを構えたスナイパーのモートンが弓を引く。
ヒュンッ、と子気味良い音を立ててロングボウから矢が放たれ、ゴブリンの急所を射抜く。
直立した状態のゴブリンが絶命する。
「サフィアよ、さすがにもう擁護出来んな。これで何度目になる? しかも戦闘職ではないマッパーより戦闘能力が低いのでは、うちのパーティーにいる意味はもはやないのではないか?」
モートンがカロルに続いてワタクシをディスる。
「皆、そんな責めちゃ可哀想よん。俺たち男所帯のパーティーに初めての女の子だってめっちゃ喜んでたのに、使えない途端に手のひら返しなんてあんまりだよん。いくよっ!」
お調子者の盗賊のパントスが、シミターを構えてゴブリンの群れを駆け抜ける。
風のように駆け抜けるパントスのシミターの先端がゴブリンの華奢な体を幾度となく切り刻む。
ぎゃぎゃぎゃっと、悲鳴を上げて複数のゴブリンが仰け反り崩れ落ちていく。
「大分片したな。ったくサフィアがいるとロクな事にならないぜ」
マルクが背伸びをして首を回す。
残りのゴブリンは4体
一人一体の計算でいくとこちら側の圧勝。
誰もが、そう思った時だった。
茂みの奥からゴブリンが跳躍して飛び出してくる。
そのあまりに急な登場にマルクがたじろぐ。
「バウンドゴブリン!? サフィアどういう事だよ! この森にバウンドゴブリンは出現しないはずだぞ。お前上位種呼び出すなんてどんだけタチが悪いんだよ!」
「わ、わたくしはそんなつもりは……」
――どうしましょう……。皆さんに迷惑ばかりかけてしまって……
わたくしはどうする事も出来ずに、ごめんなさいと小声で呟く。
「マルク大丈夫ですよ。こんな時の為にボクがきちんと用意しておきましたから。ほらっ、下級肉」
カロルが投げた肉にバウンドゴブリンは喜々として飛びつく。
尖った前歯でガブリッと美味しそうに肉を頬張る。
くちゃくちゃ、と下卑た咀嚼音を立てて肉を丸呑みした刹那、バウンドゴブリンに異変が起きる。
ひっくり返り手足をバタバタと動かし、苦しみもがくバウンドゴブリンの身体が徐々に小さくなっていく。
「こんな時の為に魔道具屋で仕入れておいて良かったですよ。この肉にはレベル低下効果があるんです。上位種であるバウンドゴブリンのレベルが下がれば、下級種であるただのゴブリンに戻る。理にかなった事ですね」
「ナーイス、カロル! じゃあ最後は俺が締めるか」
マルクが大きく踏み込み、ロングソードを横に薙ぎ払う。正面にいる2体のゴブリンの体を綺麗に両断しゴブリンはその場に崩れ落ちる。
続け様に左右にいる2体のゴブリンの腹部目掛けてロングソードを次々と突き立て素早い動作で抜き取る。
刹那、仰け反っていた2匹のゴブリンが2匹同時に仰向けに倒れていく。
どすんっという転倒音を確認し、最後の標的へと構えの姿勢をとる。
先ほど下級肉を食べてもだえ苦しんでいた、元バウンドゴブリンの腹に向かってロングソードを突き刺す。
ぐぎゃっ、といううめき声がして元バウンドゴブリンが息絶える。
ゴブリンの血を払い落とすように、ロングソードを足元で数回無造作に降ってから鞘に納めると、マルクは安堵の息をつき言い放った。
「やれやれ、なぁーにが聖女だよ」
『サフィア、今から大事な話をするから良く聞いて頂戴。この話はとても大事な話なのよ。サフィアは将来、ちっぱいを理由にパーティを追放されて迫害に遭うわ。でも、そんなサフィアをきっと素敵な王子様が助けてくれるってお母さんは信じているわ。だから自分の人生をどうか諦めないで……』
お母さまはそう言うと、嗚咽を漏らしながら号泣し自分がちっぱいで苦労した過去を10時間に及んで話してくれた。
小さかったワタクシは"ちっぱい"の意味も良く解らずに、ただお母さまの背中をさすっていたけれど、お母様のその言葉の真意を今まさに知ろうとしていた。
「サフィアお前さ聖女の癖にロクな加護も出来ずに、魔物を遠ざける所か呼び寄せてふざけてんのかよ!」
パーティーの要であるファイターのマルクが迫りくるゴブリンの首元にロングソードを振り下ろす。
ぐぎゃっ、と小さな悲鳴を上げてゴブリンが絶命する。
「ふざけてなどいないです……。わたくし申し上げていたと思いますけれど、シラフの状態だとビーストソングの効果が逆さまになってしまうんです。」
魔物を遠ざけるはずのビーストソングも、シラフで使うと何故か逆に魔物を呼び寄せてしまう。
小さい頃は聖女としての資質がないのだと、お父様とお母さまに対して只々申し訳なく思っていた。
けれど、お父様の巡礼に着いていったお宿で間違えて飲んでしまった葡萄酒の影響で、酔っぱらっている時だけ何故か聖女としての能力を発揮出来る事に気づいてからは少しだけ自分に自信がもてた。
――でも……。
お荷物状態のわたくしは何をする術もなくパーティー後衛で待機する。
突き刺さる皆の視線。
「しかしマルクの言う通りですよ。聖女なんて絶対数が多くないし、珍しいレアジョブだからって喜んだけど、こんな使い物にならないんじゃ、いない方がマシですね。わっ、近づくなっ!」
ゴブリンに背後から襲われそうになっていた、マッパーのカロルが魔道具のアイスボムを投げつける。
ゴブリンの足元に氷の柱が出現しゴブリンの動きを止める。
「でかしたぞカロル! 今が好機」
ロングボウを構えたスナイパーのモートンが弓を引く。
ヒュンッ、と子気味良い音を立ててロングボウから矢が放たれ、ゴブリンの急所を射抜く。
直立した状態のゴブリンが絶命する。
「サフィアよ、さすがにもう擁護出来んな。これで何度目になる? しかも戦闘職ではないマッパーより戦闘能力が低いのでは、うちのパーティーにいる意味はもはやないのではないか?」
モートンがカロルに続いてワタクシをディスる。
「皆、そんな責めちゃ可哀想よん。俺たち男所帯のパーティーに初めての女の子だってめっちゃ喜んでたのに、使えない途端に手のひら返しなんてあんまりだよん。いくよっ!」
お調子者の盗賊のパントスが、シミターを構えてゴブリンの群れを駆け抜ける。
風のように駆け抜けるパントスのシミターの先端がゴブリンの華奢な体を幾度となく切り刻む。
ぎゃぎゃぎゃっと、悲鳴を上げて複数のゴブリンが仰け反り崩れ落ちていく。
「大分片したな。ったくサフィアがいるとロクな事にならないぜ」
マルクが背伸びをして首を回す。
残りのゴブリンは4体
一人一体の計算でいくとこちら側の圧勝。
誰もが、そう思った時だった。
茂みの奥からゴブリンが跳躍して飛び出してくる。
そのあまりに急な登場にマルクがたじろぐ。
「バウンドゴブリン!? サフィアどういう事だよ! この森にバウンドゴブリンは出現しないはずだぞ。お前上位種呼び出すなんてどんだけタチが悪いんだよ!」
「わ、わたくしはそんなつもりは……」
――どうしましょう……。皆さんに迷惑ばかりかけてしまって……
わたくしはどうする事も出来ずに、ごめんなさいと小声で呟く。
「マルク大丈夫ですよ。こんな時の為にボクがきちんと用意しておきましたから。ほらっ、下級肉」
カロルが投げた肉にバウンドゴブリンは喜々として飛びつく。
尖った前歯でガブリッと美味しそうに肉を頬張る。
くちゃくちゃ、と下卑た咀嚼音を立てて肉を丸呑みした刹那、バウンドゴブリンに異変が起きる。
ひっくり返り手足をバタバタと動かし、苦しみもがくバウンドゴブリンの身体が徐々に小さくなっていく。
「こんな時の為に魔道具屋で仕入れておいて良かったですよ。この肉にはレベル低下効果があるんです。上位種であるバウンドゴブリンのレベルが下がれば、下級種であるただのゴブリンに戻る。理にかなった事ですね」
「ナーイス、カロル! じゃあ最後は俺が締めるか」
マルクが大きく踏み込み、ロングソードを横に薙ぎ払う。正面にいる2体のゴブリンの体を綺麗に両断しゴブリンはその場に崩れ落ちる。
続け様に左右にいる2体のゴブリンの腹部目掛けてロングソードを次々と突き立て素早い動作で抜き取る。
刹那、仰け反っていた2匹のゴブリンが2匹同時に仰向けに倒れていく。
どすんっという転倒音を確認し、最後の標的へと構えの姿勢をとる。
先ほど下級肉を食べてもだえ苦しんでいた、元バウンドゴブリンの腹に向かってロングソードを突き刺す。
ぐぎゃっ、といううめき声がして元バウンドゴブリンが息絶える。
ゴブリンの血を払い落とすように、ロングソードを足元で数回無造作に降ってから鞘に納めると、マルクは安堵の息をつき言い放った。
「やれやれ、なぁーにが聖女だよ」
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