ちっぱいな事でパーティーを追放された聖女を救ったのはイケメン騎士団長だったはず……。

猫野御飯

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第8話 大ピンチですわ。

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 叩きつけるような雨をローブが吸って、体にぴったりと纏わりつく。
 身体に纏わりつくのでとても歩きにくく、歩調が狭まる。
 ぬかるんだ大地に足を取られないよう一歩一歩慎重に歩みを進める。

 ――思いつきで飛び出してしまいましたが、馬を借りるべきだったわ……。

 後悔後に立たず。お父様からあれだけ教えて頂いた事なのに。
 わたくしは本当にダメですわ……。

 雨が降ってるせいでしょうか、濃い木々の香りが漂ってきます。
 木々や大地に雨が激しく当たる音で心なしか意識が集中します。
 バブルブルグへと続く『トッポルの原生林』は人の手が加わっていない為、荒々しい自然の姿がそのままに存在します。
 背の高い木々も、花も、何処となく人を遠ざける迫力をもっています。
 心なしか視界が悪くなってきたと思うと、わたくしの回りを濃い霧が囲んでいました。

 ――こんな時に……。

 ついていないわ。こんな状況で霧なんて……。と悲しんでいると、辺りに気配を感じました。

「!?」

 濃い霧に沿うようにして、ふわふわと浮遊している黒い物体。
 影のようにも見えるその物体は、良く見ると真っ赤な目と鋭い牙がある。

「イビルシャドウ……」

 人の目が届かない森の奥深く、真夜中や雨、霧がかかっている時など悪天候を利用して襲ってくる悪魔系モンスター。
 ゾクッと背中に悪寒が走る。
 コブリンやオークほどメジャーなモンスターではないけれど戦闘能力は高い。
 確か特殊能力は……。

「……うっ」

 いつの間にかイビルシャドウに背後を取られていた。
 喉元にヒンヤリとしたものを感じる。
 いびつに歪んだ物体。それがすぐにイビルシャドウの羽だと解る。

 ――声が出ない!

 それがイビルシャドウの特殊能力『サイレンス沈黙』によるものだと解って絶句する。
 その特殊な形状の羽には、相手の言語能力を麻痺させる効果がある。
 だから詠唱が必要なパーティーのメンバーはイビルシャドウに背後をとられてはいけない。
 恐怖から身体が固まりその場から動けない。
 気がつくとイビルシャドウに回りを取り囲まれていた。

「ヂヂヂヂヂヂ」

「ヂヂヂヂヂヂ」

「ヂヂヂヂヂヂ」

 と複数のイビルシャドウが羽をこすり合わせる。
 わたくしは自分の体から血の気が引いていくのを感じる。
 それで気が付く。悪魔系のモンスターは体力を吸い取る。

 ――このままでは、まずいですわ……。

 体に力が入らず、イビルシャドウに好き放題体力を吸われる。
 わたくしは無力な自分がただ悲しかった。モスクにきちんと謝りたかった。
 そして、パーティーを追放されるようなこんなダメ聖女を迎え入れてくれた、アルガス様や王様、それから見習い少年騎士のみんなに、ただただ申し訳なく思った。
 身の毛のよだつ羽音がこだまする中、わたくしは自分の意識が遠のいていくのを感じる。
 ただ、気のせいなのかもしれませんが、わたくしの名前を叫ぶアルガス様の声が聞こえた気がしたのです。
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