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第9話 アルガス様と二人きりですわ
しおりを挟む「うっ……」
激しい喉の痛みに目覚める。
「気が付いたかい?」
そこには優しく微笑むアルガス様の姿。
「わたくしは一体……」
「イビルシャドウに囲まれていた。わたしがすぐに後を追ったから大事に至らなかったが、危険な真似はしてくれるな」
あの独特な羽音が思い起こされゾッとする。
アルガス様が助けてくださらなければ、好き放題体力を吸われて今頃死んでいただろう……。
「申し訳ございません……」
「いや、君が謝る事ではないのだ」
アルガス様が表情を引き締めて続ける。
「そもそもわたしが、予想外のモンスターの出現も予期しなければいけなかったのだ。こちらこそ申し訳ない」
「そんな、アルガス様謝らないで下さい――うっ……」
アルガス様が謝っているのが居たたまれなくて、起き上がろうとした所喉に再び激痛が走る。
「イビルシャドウにサイレンスをかけられた後遺症によるものだと思う。しばらく痛みが続くがそれも数日だと聞く。今は我慢の時だサフィア」
「やはりそうでしたか」
イビルシャドウの羽が喉元に触れるあの感覚、声が急に出なくなる恐怖感を思い出してゾッとしたけれど、アルガス様の姿を見ているだけで心が落ち着く。
「サフィアを見つけた時にはほとんど意識がない状態だったのだ。すぐにイビルシャドウを蹴散らして、サフィアを抱きかかえて馬に跨ったが、雨も強く視界が悪くてね。城に戻るにも戻れず近くにあったこの小屋を見つけてしばらく休ませてもらう事にしたんだ。恐らくここは休憩所のようなものなのだろうな」
アルガス様が辺りを見回す。簡素な作りの小屋には簡易ベッドと、アイテムが保管出来る簡素な棚しかなく、食料品や食料品を貯蔵するスペース等は見当たらない。
「ダイダラスネークを倒した後慌てて救護室に行ったら、モスクが慌てた様子で話しかけてきてね。君がいなくなったからすぐに探して欲しいって頼まれたよ。とても心配していたよ」
「モスクが……」
毒が身体に回っていて自分だって辛いのに、そんな状況でもわたくしを心配してくれる優しさに思わず涙が出そうになる。
「そうだったのですね、モスクがそんなに心配してくれていたのですね」
「あの子は不器用だけれど本心は優しい子でね、サフィアの事も嫌いではないんだよ。あの子の母親も聖女だったから、母親に甘える事が出来なかった分、君に甘えているのかもしれないね」
アルガス様がそう微笑む。
いつかアラムくんに言われた言葉を思い出す。
――きっとモンスター製造機のお姉さんの事が好きなんだと思う。
もし、わたくしの事を好いてくれているのだとしたら、早く毒を解除してあげて健康になったモスクの夢を応援してあげたいと思いました。
母親を反逆ギルドから助け出す事を夢見て、日々訓練に精を出すあの子の夢を。
「アルガス様!」
起き上がり拳を握りしめる。
このぐらいの喉の痛み、モスクの痛みに比べたらどうって事ない。
「毒専門の調合士がロックという村にいるそうなのです。そこまでお付き合い頂く事は出来ませんか!」
「もちろん」
アルガス様はそう言って嬉しそうに微笑んだのでした。
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