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セレスト8歳。
10 家族になるということ
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結局、あの後店主から吐かせた情報を使って人身売買の元締や他の末端の人間たちは無事捕縛。それにより王都全体の治安も良くなり、孤児たちはそれぞれ元いた場所に帰ったり、そのまま王都の児童養護施設で新たな暮らしを始めたりしていた。
城の中においても、任務にひと段落着いたため騎士団員たちもみんな稽古をしたり仕事をしたりとそのまま何も変わらない普段通りの日常に戻っていっていた。
…ああでも、ひとつだけ。変わったことがある。
食堂に人が集まり始める時間帯。そんな中で毎日密かに兵たちの視線を集める机がひとつあった。
「セレスト、どれが食べたい?僕が取ってくるから遠慮しないで言って。」
「じ、じゃあこれが欲しい…かも」
「またそうやって遠慮して。これも好きだろう?」
「わあ、なんでわかったの?」
「だってあお…じゃなくて、知り合いが好きだったからもしかしてって思ったんだ。」
「うん、僕これ大好きなんだ!ありがとうアオ!」
騎士団専用の食堂ではここ数日にわたって珍しい光景が繰り広げられている。それは、暗殺部隊の隊長で毎日多忙なため食事は基本部屋でとっていたはずの蒼が毎日食堂に顔を出していること。そしてその隣に常にいる小さな子供の存在だった。
それを少し離れた机から見ていた白辺は向かい合って座る潜良にじっとりとした視線を向けた。
「…おいモグラ、毎日毎日アオのあれはどうしちゃったんだよ。突然子供連れてきて養子にします!ってだけでも驚いたのにきちんと朝から晩まで世話焼いてさ。アオって子育て願望とかあったっけ?」
「私に聞かないでくださいよ。帰りの馬車からずっとあんな感じなんですから…」
「ボク、アオがあんなに他人に積極的に世話焼いてるの初めて見たんだけど」
「…そうですね。いつも彼は騎士団の中で一番若手と言うこともあってどちらかと言うと世話を焼かれる側ですから…」
セレストという少年をアオが任務先から拾ってきてそのままこの子を養子にしますと会議で宣言して数日が経った。初めはアオの隣にいつも引っ付いている小さな藍色になかなか慣れなかったが、さすがに毎度見かけるたびに仲睦まじい様子でくっついていれば見慣れても来る。
「ほんとにいつの間にあんなに仲良くなったんだか…」
「ああしていると、まるで年の離れた兄弟のようですね」
「はは、アオが若いせいでぜんっぜん親子に見えないの面白いよね」
蒼のやけに積極的に世話を焼く様子と、それに素直に甘えるいたいけな少年。あの少年は、突然現れて直ぐにすっかり蒼の大切な存在に収まってしまったらしい。
一般兵や十二騎士団の誰もが初めはその事実に戸惑いを覚えたものの、やがてその小さな子供を将来の騎士団候補生として受け入れた。
「ああほら、ほっぺについてるよ。慌てて食べるから」
「ん、ふふ、ごめんなさーい。」
「慌てて食べなくてもご飯は逃げないから、ね?ほら、これも美味しいよ」
そうして自身の皿に盛られているソテーをセレストの口元に運ぶ。それを食べた少年が「おいしーい!」と感激したように言うのを聴きながら二人は目線を合わせた。
「それにしても、アオ楽しそう」
「…ええ。本当に」
今までどこか生き急いでいた蒼だったが、これからはあの少年がいるのだから無茶も控えてくれることだろう。あの少年の与える影響が、彼にとっていい方向に進んでくれるといいのだが。
そんなことを思いながら、二人は食事を続けた。
⬛︎
「さて、ここがこれから君の帰る家だよ。まあ僕の隣の部屋なんだけど…今日からはここで暮らしてもらうことになるからね」
「わあ…!すごい。施設にいた時は五人部屋だったから、こんなに広い部屋初めて見た!」
セレストは部屋の中を見て感激したようにキョロキョロと見回すと、はしゃいで飛び跳ねた勢いのままベッドにその小さな体をうずめた。
「ふかふかだあ!」とはしゃぐ様子を微笑ましげに眺めながら、蒼も部屋に足を踏み入れる。
セレストは他の兵士候補生と同じように寮に一人で住ませるにはまだ幼すぎるということで、ある程度正式に徴兵される年齢になるまでは蒼の近くに住んでもらうことになった。そのため特別措置として十二騎士団専用の宿舎の空き部屋のひとつを彼のための部屋に改造したのだ。
「なにか部屋に揃えて欲しいものがあったらなんでも言って。」
「うん、ありがとうアオ!」
「あ、あと本読むのが好きなんだよね。僕の部屋の本棚にあるものは好きに持ってきていいから」
「ほんと!?やったあ…!」
アオ大好き!そう言いながらベッドからお腹に飛び込んでくるセレストを受け止めてその頭を撫でた。
(きっと君は気に入るはずだ。だって、蒼が持っていた本をそのまま譲り受けたものがその本棚の中には何冊もあるんだから。)
親友の好きだった食べ物、良く読む本の種類、得意なボードゲーム…何もかもを「なんで知っているの!?」と喜びながら受け入れる少年の姿を思い返しながら、蒼は目を細めた。
(やっぱり君は、もしかして…)
城の中においても、任務にひと段落着いたため騎士団員たちもみんな稽古をしたり仕事をしたりとそのまま何も変わらない普段通りの日常に戻っていっていた。
…ああでも、ひとつだけ。変わったことがある。
食堂に人が集まり始める時間帯。そんな中で毎日密かに兵たちの視線を集める机がひとつあった。
「セレスト、どれが食べたい?僕が取ってくるから遠慮しないで言って。」
「じ、じゃあこれが欲しい…かも」
「またそうやって遠慮して。これも好きだろう?」
「わあ、なんでわかったの?」
「だってあお…じゃなくて、知り合いが好きだったからもしかしてって思ったんだ。」
「うん、僕これ大好きなんだ!ありがとうアオ!」
騎士団専用の食堂ではここ数日にわたって珍しい光景が繰り広げられている。それは、暗殺部隊の隊長で毎日多忙なため食事は基本部屋でとっていたはずの蒼が毎日食堂に顔を出していること。そしてその隣に常にいる小さな子供の存在だった。
それを少し離れた机から見ていた白辺は向かい合って座る潜良にじっとりとした視線を向けた。
「…おいモグラ、毎日毎日アオのあれはどうしちゃったんだよ。突然子供連れてきて養子にします!ってだけでも驚いたのにきちんと朝から晩まで世話焼いてさ。アオって子育て願望とかあったっけ?」
「私に聞かないでくださいよ。帰りの馬車からずっとあんな感じなんですから…」
「ボク、アオがあんなに他人に積極的に世話焼いてるの初めて見たんだけど」
「…そうですね。いつも彼は騎士団の中で一番若手と言うこともあってどちらかと言うと世話を焼かれる側ですから…」
セレストという少年をアオが任務先から拾ってきてそのままこの子を養子にしますと会議で宣言して数日が経った。初めはアオの隣にいつも引っ付いている小さな藍色になかなか慣れなかったが、さすがに毎度見かけるたびに仲睦まじい様子でくっついていれば見慣れても来る。
「ほんとにいつの間にあんなに仲良くなったんだか…」
「ああしていると、まるで年の離れた兄弟のようですね」
「はは、アオが若いせいでぜんっぜん親子に見えないの面白いよね」
蒼のやけに積極的に世話を焼く様子と、それに素直に甘えるいたいけな少年。あの少年は、突然現れて直ぐにすっかり蒼の大切な存在に収まってしまったらしい。
一般兵や十二騎士団の誰もが初めはその事実に戸惑いを覚えたものの、やがてその小さな子供を将来の騎士団候補生として受け入れた。
「ああほら、ほっぺについてるよ。慌てて食べるから」
「ん、ふふ、ごめんなさーい。」
「慌てて食べなくてもご飯は逃げないから、ね?ほら、これも美味しいよ」
そうして自身の皿に盛られているソテーをセレストの口元に運ぶ。それを食べた少年が「おいしーい!」と感激したように言うのを聴きながら二人は目線を合わせた。
「それにしても、アオ楽しそう」
「…ええ。本当に」
今までどこか生き急いでいた蒼だったが、これからはあの少年がいるのだから無茶も控えてくれることだろう。あの少年の与える影響が、彼にとっていい方向に進んでくれるといいのだが。
そんなことを思いながら、二人は食事を続けた。
⬛︎
「さて、ここがこれから君の帰る家だよ。まあ僕の隣の部屋なんだけど…今日からはここで暮らしてもらうことになるからね」
「わあ…!すごい。施設にいた時は五人部屋だったから、こんなに広い部屋初めて見た!」
セレストは部屋の中を見て感激したようにキョロキョロと見回すと、はしゃいで飛び跳ねた勢いのままベッドにその小さな体をうずめた。
「ふかふかだあ!」とはしゃぐ様子を微笑ましげに眺めながら、蒼も部屋に足を踏み入れる。
セレストは他の兵士候補生と同じように寮に一人で住ませるにはまだ幼すぎるということで、ある程度正式に徴兵される年齢になるまでは蒼の近くに住んでもらうことになった。そのため特別措置として十二騎士団専用の宿舎の空き部屋のひとつを彼のための部屋に改造したのだ。
「なにか部屋に揃えて欲しいものがあったらなんでも言って。」
「うん、ありがとうアオ!」
「あ、あと本読むのが好きなんだよね。僕の部屋の本棚にあるものは好きに持ってきていいから」
「ほんと!?やったあ…!」
アオ大好き!そう言いながらベッドからお腹に飛び込んでくるセレストを受け止めてその頭を撫でた。
(きっと君は気に入るはずだ。だって、蒼が持っていた本をそのまま譲り受けたものがその本棚の中には何冊もあるんだから。)
親友の好きだった食べ物、良く読む本の種類、得意なボードゲーム…何もかもを「なんで知っているの!?」と喜びながら受け入れる少年の姿を思い返しながら、蒼は目を細めた。
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