いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼

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25.庭園で

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今日のアーサーは登城せずに、自邸の書斎で仕事をしていた。
私も侯爵夫人としての仕事をこなすべく、与えられていた小さな書斎で書面と格闘していた。

「そろそろお昼か~」

仕事も一段落付き、グーンっと伸びをしていた時、コンコンとノックの音がした。

「はい」

返事をすると扉がゆっくりと開き、アーサーが入ってきた。

「昼食にしないか?」

ぎこちないながらも、顔を逸らすことなく私を誘ってくれるアーサーに心がホワっと暖かくなる。
無理してるな~ではなく、頑張ってるな~という感じが受け取れて、ふと頬が緩み、

「ええ!」

嬉しくてつい大きな声で返事をしてしまった。

「今日は天気が良いから外に用意してもらった」

まあ、なんと粋な計らい! 

「素敵ですね!」

一緒に庭園に出ると、ガゼボに昼食の用意がされていた。

「久々ですわね! こんなふうに外で食事をするなんて!」

婚約時代に何度かこんな風に薔薇で囲まれたガゼボでお茶をしたことがある。
あの頃はアーサーに夢中で、陽だまりの中で優雅にお茶を飲む彼に見惚れていた。
消えたあの時の恋心が戻ってきている今、一緒にこうして食事をしているだけでも心が弾んでくる。

「ふふふ~~」

食事を口に運びながらも笑みが止まらない。
そんな私を困惑と恥じらいの混ざった顔で見るアーサー。

「楽しそうだな」

「ええ! とっても! ご一緒出来て嬉しいですわ!」

「~~~!」

アーサーはフォークを捨てるように置くと、片手で口元を押さえそっぽを向いてしまった。
あらら、またか。でも、理由が分かっている今は腹も立たない。返って微笑ましい。
うーん、それでも、これは克服しないといけないわね~。いつまでも顔を見てもらえないのは辛いもの。

ほんわかとしたランチタイムを終えると、仕事に戻らんと二人並んで家に向かう。
でも、この時間が終わるのが惜しく感じて、思わずアーサーの腕を取った。

「アーサー様。少し庭園をお散歩しません? 食後のお散歩」

「・・・」

無言で固まるアーサー。
え゛・・・、やっぱ無理・・・? 

「ご、ごめんなさい!」

私は慌てて手を放した。

「ち、違う!」

アーサーは離した私の手を追うように捕まえた。

「その・・・。貴女から誘われたことが嬉しくて・・・」

そう言うと、もう片方の手で口元を押さえてそっぽを向く。
もう、こりゃ、参ったね・・・。可愛くってどうしましょう。

ニマニマとアーサーを見ていると、恥ずかしそうに咳払いし、私から手を放すと、そっと腕を差し出した。
私はその腕に手を添えて歩き出した。





庭園の奥までやって来た。
ここは色とりどりの花が咲き乱れ、本当に美しい場所だ。この邸宅で私のお気に入りの場所の一つ。

「綺麗な花がいっぱいで癒されますね」

私はアーサーに話しかけた。するとアーサーは、

「貴女が花を好きなのは知っている・・・」

なぜかちょっと低めの声で拗ねたような言い方をした。

「?」

「今度は貴女に花を贈っても受け取ってもらえるだろうか?」

「!」

やば~、忘れてた~。花束ぜーんぶ突き返してたもんね~。あれ? 意外と根に持つタイプ?

「もも、もちろんですわ!」

私は慌てて彼の顔を覗き込むと、私の反応に少し満足したように目を細めた。

「でも、今度はちゃーんとご自身で渡してくださいね!」

「・・・っ! そ、そうだな、すまなかった」

アーサーは私の反撃にすぐ敗北。

「でも、受け取らなかったのは本当に失礼でしたわね。お詫びしないとだわ。それに」

私はもう一度アーサーを覗き込んだ。

「昨日の夜会のドレスも。あんなに素敵なドレス、いつ用意されたのですか? 私の好みにピッタリでしたわ。もしかして・・・」

今思うと、もしかして・・・。

「前から用意されていたのですか?」

無言のアーサー。やっぱりね。明後日の方向を見ている彼の目が若干泳いでいる。

「私の好みをちゃんとご存じだったのね」

「・・・贈るタイミングが分からず・・・」

観念したように呟いた。

「ありがとうございます。アーサー様」

本当に想われていたのね、私。今更ながら胸が熱くなってくる。

「ふふ、お礼をしないといけませんね。何が欲しいですか? アーサー様」

ゆっくりと歩いていたアーサーが立ち止まった。
そして私の方に振り向いた。その目はしっかり私を捉えていた。

「口づけが・・・」

熱を帯びた瞳で私を見つめる。

「貴女からの口づけが欲しい」




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