48 / 97
47
しおりを挟む
「パトゥール夫人。その・・・レオナルド殿下は? 殿下は新しい婚約者を決めることになるのでしょう?」
「そうそう! そこ! 新しい婚約者はどなたになるのかしら? 気になるわ!」
「以前のお話ではウィンター家のご令嬢とクロウ家のご令嬢が殿下のお気に入りというお話でしたわよね? きっとこのお二人を側妃に迎えるだろうって」
「まあ、では、どちらかのご令嬢が婚約者候補に? どちらも伯爵家でしたわよね?」
「侯爵家よりは見劣りするかもしれないけれど、かなりのお力をお持ちの家だっていうお話でしたわよね? パトゥール夫人?」
「どちらが正妃でどちらが側妃になるのかしら?! バトルが起きそうですわね!」
ご婦人方はキャイキャイ捲し立てている。とっても楽しそうだ。人のゴシップって見知らぬ人をここまで楽しませるものなのね。ある意味、社会的に貢献しているのかも。
レオナルドにケーキを食べさせながら、耳をひたすら大きくさせて会話に聞き入った。
その合間に自分もケーキを口にする。お勧めと言うだけあって、なかなか美味。
「それが、皆様! 大変な事が起こりましたのよ!!」
パトゥール子爵夫人の声のトーンが一段と高くなった。
しかし、次には少し前屈みになり、内緒話でもするかのように声のボリュームを落とした。
「実は、その殿下のお気に入りである二人のご令嬢の内のお一人、ウィンター伯爵家のミランダ様が失脚されましたの」
来た! ミランダネタ!
「え?!」
「嘘?!」
「何故!?」
ご婦人方も驚きを隠せない。
「何とも汚らわしい理由で・・・。このような所で話すお話ではないのですけれど・・・。彼女、殿下以外にも御執心だった殿方がいたようで、その殿方と仲睦まじくしている姿を多くの人に見られてしまいましたのよ」
「仲睦まじく・・・?」
「ええ。しかも宮殿の客間で事に及んで・・・」
パトゥール夫人の声が更に小さくなる。私はさらに耳をそばだてた。
「人に見つかっても気が付かないほど夢中だったとか・・・。それどころか、数人がかりで引き離さないといけないほど、その殿方を求めていたって」
「んま!! 信じられない!」
「なんて破廉恥な!」
「とんだ尻軽女でしたのね、そのご令嬢!」
ご婦人方は各々怒りの声を上げる。
〔引き離さないといけないほどって、どれだけ・・・? 危ないところでしたわね、殿下〕
〔・・・〕
レオナルドを見ると血の気が引いている。
「そんな身持ちの悪い女が殿下の正妃になれるわけがございませんでしょう? だからと言って、側妃にというわけにもいかないでしょう。いくら殿下の一番のお気に入りだったとしても。それにレオナルド殿下だって、彼女に裏切られて、それはそれは大変にお怒りだというお話ですわ」
〔はあぁぁあ? むぐっ・・・〕
〔お静かに〕
奇声を上げかけたレオナルドの口をナプキンで塞ぐ。
「そうなると、新たな婚約者の第一候補はクロウ伯爵家のレベッカ様でしょうね。でも、分かりませんわよ? 殿下のお気に入りのご令嬢は他にもおりますもの。ハサウェイ家のアニエス様でしょう、それにマーロウ家のロザリー様。後はコクトー家のクリスタ様、ロワール家のリリアナ様・・・他には・・・」
〔ま~、そんなにたくさん? すごいですわね、殿下〕
〔誰だ、そいつら・・・? 俺は知らんぞ・・・〕
「そんなにたくさんの女性が?」
「だって、レオナルド殿下はとても美しいですもの! ご身分だけでなく、そのご容姿からだって、相手は選り取り見取りですわぁ!」
〔ふっ・・・。うぐ・・・〕
〔失礼、お口にチョコレートが〕
ご婦人方に容姿を褒められて、満更でもなさそうに前髪をいじる仕草に、猛烈にイラッとくる。つい、乱暴にレオナルドの口元をナプキンで拭いた。
「でもね、皆様。わたくしはね、実のところ、レベッカ様ではなくて、コクトー家のクリスタ様が殿下の婚約者の第一候補になるのではないかと睨んでおりますのよ」
パトゥール夫人は大きな秘密でも教えるかのように、前のめりになった。
「そうそう! そこ! 新しい婚約者はどなたになるのかしら? 気になるわ!」
「以前のお話ではウィンター家のご令嬢とクロウ家のご令嬢が殿下のお気に入りというお話でしたわよね? きっとこのお二人を側妃に迎えるだろうって」
「まあ、では、どちらかのご令嬢が婚約者候補に? どちらも伯爵家でしたわよね?」
「侯爵家よりは見劣りするかもしれないけれど、かなりのお力をお持ちの家だっていうお話でしたわよね? パトゥール夫人?」
「どちらが正妃でどちらが側妃になるのかしら?! バトルが起きそうですわね!」
ご婦人方はキャイキャイ捲し立てている。とっても楽しそうだ。人のゴシップって見知らぬ人をここまで楽しませるものなのね。ある意味、社会的に貢献しているのかも。
レオナルドにケーキを食べさせながら、耳をひたすら大きくさせて会話に聞き入った。
その合間に自分もケーキを口にする。お勧めと言うだけあって、なかなか美味。
「それが、皆様! 大変な事が起こりましたのよ!!」
パトゥール子爵夫人の声のトーンが一段と高くなった。
しかし、次には少し前屈みになり、内緒話でもするかのように声のボリュームを落とした。
「実は、その殿下のお気に入りである二人のご令嬢の内のお一人、ウィンター伯爵家のミランダ様が失脚されましたの」
来た! ミランダネタ!
「え?!」
「嘘?!」
「何故!?」
ご婦人方も驚きを隠せない。
「何とも汚らわしい理由で・・・。このような所で話すお話ではないのですけれど・・・。彼女、殿下以外にも御執心だった殿方がいたようで、その殿方と仲睦まじくしている姿を多くの人に見られてしまいましたのよ」
「仲睦まじく・・・?」
「ええ。しかも宮殿の客間で事に及んで・・・」
パトゥール夫人の声が更に小さくなる。私はさらに耳をそばだてた。
「人に見つかっても気が付かないほど夢中だったとか・・・。それどころか、数人がかりで引き離さないといけないほど、その殿方を求めていたって」
「んま!! 信じられない!」
「なんて破廉恥な!」
「とんだ尻軽女でしたのね、そのご令嬢!」
ご婦人方は各々怒りの声を上げる。
〔引き離さないといけないほどって、どれだけ・・・? 危ないところでしたわね、殿下〕
〔・・・〕
レオナルドを見ると血の気が引いている。
「そんな身持ちの悪い女が殿下の正妃になれるわけがございませんでしょう? だからと言って、側妃にというわけにもいかないでしょう。いくら殿下の一番のお気に入りだったとしても。それにレオナルド殿下だって、彼女に裏切られて、それはそれは大変にお怒りだというお話ですわ」
〔はあぁぁあ? むぐっ・・・〕
〔お静かに〕
奇声を上げかけたレオナルドの口をナプキンで塞ぐ。
「そうなると、新たな婚約者の第一候補はクロウ伯爵家のレベッカ様でしょうね。でも、分かりませんわよ? 殿下のお気に入りのご令嬢は他にもおりますもの。ハサウェイ家のアニエス様でしょう、それにマーロウ家のロザリー様。後はコクトー家のクリスタ様、ロワール家のリリアナ様・・・他には・・・」
〔ま~、そんなにたくさん? すごいですわね、殿下〕
〔誰だ、そいつら・・・? 俺は知らんぞ・・・〕
「そんなにたくさんの女性が?」
「だって、レオナルド殿下はとても美しいですもの! ご身分だけでなく、そのご容姿からだって、相手は選り取り見取りですわぁ!」
〔ふっ・・・。うぐ・・・〕
〔失礼、お口にチョコレートが〕
ご婦人方に容姿を褒められて、満更でもなさそうに前髪をいじる仕草に、猛烈にイラッとくる。つい、乱暴にレオナルドの口元をナプキンで拭いた。
「でもね、皆様。わたくしはね、実のところ、レベッカ様ではなくて、コクトー家のクリスタ様が殿下の婚約者の第一候補になるのではないかと睨んでおりますのよ」
パトゥール夫人は大きな秘密でも教えるかのように、前のめりになった。
95
あなたにおすすめの小説
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる
冬野月子
恋愛
「私は確かに19歳で死んだの」
謎の声に導かれ馬車の事故から兄弟を守った10歳のヴェロニカは、その時に負った傷痕を理由に王太子から婚約破棄される。
けれど彼女には嫉妬から破滅し短い生涯を終えた前世の記憶があった。
なぜか死に戻ったヴェロニカは前世での過ちを繰り返さないことを望むが、婚約破棄したはずの王太子が積極的に親しくなろうとしてくる。
そして学校で再会した、馬車の事故で助けた少年は、前世で不幸な死に方をした青年だった。
恋や友情すら知らなかったヴェロニカが、前世では関わることのなかった人々との出会いや関わりの中で新たな道を進んでいく中、前世に嫉妬で殺そうとまでしたアリサが入学してきた。
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
揺れぬ王と、その隣で均衡を保つ妃
ふわふわ
恋愛
婚約破棄の断罪の場で、すべては始まった。
王太子は感情に流され、公爵令嬢との婚約を解消する。
だが、その決断は王家と貴族社会の均衡を揺るがし、国そのものを危うくする一手だった。
――それでも彼女は、声を荒らげない。
問いただすのはただ一つ。
「そのご婚約は、国家にとって正当なものですか?」
制度、資格、責任。
恋ではなく“国家の構造”を示した瞬間、王太子は初めて己の立場を知る。
やがて選ばれるのは、感情ではなく均衡。
衝動の王子は、嵐を起こさぬ王へと変わっていく。
そして彼の隣には、常に彼女が立つ。
派手な革命も、劇的な勝利もない。
あるのは、小さな揺れを整え続ける日々。
遠雷を読み、火種を消し、疑念に居場所を与え、
声なき拍手を聞き取る。
これは――
嵐を起こさなかった王と、
その隣で国家の均衡を保ち続けた妃の物語。
悪役令嬢に仕立て上げたいのならば、悪役令嬢になってあげましょう。ただし。
三谷朱花
恋愛
私、クリスティアーヌは、ゼビア王国の皇太子の婚約者だ。だけど、学院の卒業を祝うべきパーティーで、婚約者であるファビアンに悪事を突き付けられることになった。その横にはおびえた様子でファビアンに縋り付き私を見る男爵令嬢ノエリアがいる。うつむきわなわな震える私は、顔を二人に向けた。悪役令嬢になるために。
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……
くわっと
恋愛
21.05.23完結
ーー
「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」
差し伸べられた手をするりとかわす。
これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。
決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。
彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。
だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。
地位も名誉も権力も。
武力も知力も財力も。
全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。
月並みに好きな自分が、ただただみっともない。
けれど、それでも。
一緒にいられるならば。
婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。
それだけで良かった。
少なくとも、その時は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる