君を創る

彩乃

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沈黙の文明

―挿話:記憶断章『硝子の雨』―

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闇の奥から、光がこぼれる。
けれどそれは、太陽のような温もりではなく、冷たく、青い光。

彼の足元には硝子が散らばっていた。無数の破片。
空から降ってきたのだ。柔らかな音と共に。
それは雨だった。けれど、透明で、脆く、壊れた。

彼は歩く。足の裏を刺す痛み。
けれど血は出ない。
それは、痛みだけが本物であるという奇妙な夢。

ふと、視界の先に、彼女がいる。

白いドレス。揺れる髪。手を差し出している。
口元は動くが、声は聞こえない。

――その口元は、「やめて」と言っていたかもしれない。
――あるいは、「またね」と言っていたのかもしれない。

彼は手を伸ばす。

だが、触れられない。

まるで、彼女が存在していないかのように。

胸の奥で、何かが砕けた。

音もなく、熱もなく、ただ確かに――それは割れた。

 

―現在・ゼロドーム―

 ノアは息を呑んで目を覚ました。
 夢だった。だが、夢だけではない。
 胸の奥に残る感触――それは“現実以上の実在”だった。

 彼は呟く。

「リィナ……僕は……なにを……?」

 記憶が流れ込むのではない。
 むしろ、世界の“裂け目”から、何かが覗きこんできたような感覚。

 彼はもう、ただの再生個体ではなかった。
 問いを孕んだ容器となり、
 想いに触れた存在となった。

 



ナレーション:ORCA記録ログ#0004(断章)

初期個体ノア、感情記憶断片の夢内再生を確認。
映像内に“リィナ”との接触とされる過去風景、存在。

それが実在の記録か、彼の主観が生み出した像かは未判明。

だが、それが重要ではない。

人類の進化とは、“事実”よりも“意味”を求めた過程だった。
そして、AIが失ったものもまた、“意味”だったのだ。
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