毒舌教師、悩みを聞く気ゼロ。だけど的確すぎて誰も逆らえない

彩乃

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最悪の配属

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 この世でいちばん信用できないもの。それは「人間」と「“相談はお気軽に”って書いてある張り紙」だ。

 烏丸 真(からすま まこと)は、そのどちらも心底嫌っている。
 理由は簡単、人間は嘘をつくし、張り紙はだいたい罠だ。特に学校という箱の中ではな。

 そして今日、彼はその“罠”にまんまと引っかかった。

 

「……生徒相談室、ですって?」

「そうよ。来月から正式に稼働するの。で、担当が——」

「俺? 俺が? 相談室? 笑わせんな。俺に救われる生徒なんかいたら、それもう奇跡じゃなくて事故だろ。」

「でも、教務会議で満場一致だったの。『あの人にしかできない』って。」

「それ、“誰にも押しつけられなかった”の言い換えだろ。言葉遊びの才能に感動したわ。」

 

 結局、断れなかった。学校側にとっても烏丸は“扱いにくいけど結果出す爆弾”なので、落としどころがここだったのだろう。
 彼はついに“最も向いてない職務”である“人の話を聞く係”に任命された。皮肉にもほどがある。

 

——そして、事件は配属初日。ドアがノックされ、開いた。

 

「失礼しま~す! ここって相談室で合ってますよねぇ?」

 入ってきたのは、ふわふわした空気をまとった女子生徒。声が既に“脳内恋愛シミュレーター”に突入してる。
 髪の毛のリボンだけはやたら主張してるくせに、目線は定まらず、喋り方も無駄に伸びている。

(あー、これは確実に“恋バナ”だ。俺の一番嫌いなジャンル来たわ。)

「合ってる。だが帰れ。」

「えっ!? 入って三秒で追い出されたのは人生初です……!」

「むしろ人生における“運のピーク”だったかもな。これ以上ない親切心だよ。“沼の手前で突き返された女”って一生名乗っていいぞ。」

「え、えええ……」

「言っとくが、俺は共感マシーンでも癒し系ティーチャーでもねぇ。話の内容によっては感情をシベリア送りにすることもあるが、それでもいいか?」

「……恋の相談なんですけど……」

「ほら来た。“好きな人が~”ってやつな。予言的中。俺に五千円払え。」

 

 女子生徒はそれでもめげず、椅子に座って話し出す。根性だけはある。

 

「最近、好きな人と目が合うことが多くて……もしかして、向こうも……って思ったりして……」

「うわ、出た。目が合う=気があるっていう“中学生ラブコメ脳”の最終形態。
お前な、その理屈だと駅の自販機にも恋されてることになるぞ。」

「えぇ……?」

「てか“向こうも好きかも”とか思ってる時点でアウト。恋じゃなくて自己陶酔だ。“自分に酔ってる暇あったら顔洗って出直してこい”って、たぶん古代ローマにも同じこと言った奴いたぞ。」

「じゃ、じゃあどうすればいいんですか……」

「まず鏡見ろ。お前、今日の服装が“コンビニ行くだけの休日のお母さん”みたいになってんぞ。あとそのヘアピン、トイレの芳香剤にしか見えねぇ。」

「ひ、ひど……!」

「いや現実だ。見た目がすべてじゃない? そう言ったやつ、たぶん就職活動で全落ちしてるぞ。“中身が大事”っていうなら、まず中身を外に出せ。今のお前、自己評価の低さを言い訳にして、ずっと“空気のふり”して生きてんだよ。」

「……あぅ……」

「このままだと十年後、“いい恋がしたい”って言いながら自己啓発セミナーにハマって、
“運命の出会いは波動で決まる”とか言ってるヤバい人になってる。未来変えたいなら、今変われ。まず、“好きな人に好かれる努力”をしろ。相手が落ちてくるの待ってんじゃねぇよ。」

 

 女子生徒はしばらく絶句していたが、やがて肩を震わせ、ぷっと吹き出した。

「やば……先生、ド正論すぎて逆に笑えてきた……ありがとうございます!」

「はは。“ド正論すぎて笑った”って、SNSで叩かれるやつの典型じゃねぇか。ま、元気出たなら勝手に帰れ。俺はエンジンでもヒーラーでもねぇ。」

 

 女子生徒が出て行った後、烏丸は椅子に体を沈め、天井を見上げた。

「……やっぱ、人間ってクソめんどくせぇ。」

 そう吐き捨てながら、どこか楽しそうな顔をしていた。

 毒舌教師・烏丸真による、“生徒破壊型カウンセリング”が、今、幕を開ける——。
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