毒舌教師、悩みを聞く気ゼロ。だけど的確すぎて誰も逆らえない

彩乃

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“イイネ”の中で死んだ人間

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相談室のドアが開いた。
 入ってきたのは、バッチリメイクに、計算された制服の着こなし。
 一言で言えば、“自撮りがうまそうな女子高生”。

「初めまして、桐生ゆなです。あの、ちょっとだけ、話聞いてもらってもいいですか?」

「ふぅん、はいはいどうぞ。“被写体意識の高い悩み相談”な。
 その眉毛の角度、もう“カメラないと生きていけません”って顔だもんな」

「……え?」

「で? “なんか疲れちゃって”とか、“最近SNSがしんどいんです”ってやつか?
 よくある。“承認欲求のサブスク契約”に疲れた被害者の会」

 

 ゆなは、目を伏せて微笑んだ。
 その笑顔すら、“見られること”を意識しているようだった。

「……まぁ、そんな感じです。
 友達とかフォロワーとか、いっぱいいるんですけど。
 最近、なんか全部ウソっぽくて。
 “誰かに褒められる自分”じゃないと、生きてる意味ないなって……」

「出た、“褒められてないと消える人間”。
 お前、人生を“イイネ数”で測ってんのかよ。体重計か?」

 

 ゆなは、ぎこちなく笑った。

「でも、誰かに“すごいね”って言ってもらえたら……救われた気がするんです。
 本当の私は、全然すごくないから。だから頑張って、“すごい私”を作らなきゃって」

「違ぇよ。
 “すごい私”を作ってんじゃねぇ。“すごいと思われたい人間”に、自分を売ってんだよ。
 それ、“自己プロデュース”じゃなくて、“自己売春”だろ」

「……ひどい言い方」

「じゃあ聞くが、
 お前が必死にSNSで上げてる“笑顔”と“努力”と“リア充っぽさ”――
 それ全部、誰のためだ?」

「……誰って、それは……」

「自分のためじゃねぇよな。“見てくれる誰か”のためだろ?
 自分の幸せを他人の評価に任せた時点で、お前の人生はもう“他人の持ち物”だよ」

 

 ゆなの肩が、小さく震えた。

「……それでも、“誰にも見られない自分”でいるの、怖いんです。
 誰かに必要とされないと、意味がない気がして……」

「意味は“自分で作る”もんだ。
 “誰かの称賛”を意味にしてたら、
 お前の人生、ずっと“他人の拍手待ち”で終わるぞ」

 

 烏丸は、机の上に置いていた自分のスマホを持ち上げた。

「これがないと生きてけねぇ人間になってる時点で、
 お前はもう、“人間”じゃねぇ。“通知を餌に動くナメクジ”だ」

「……!」

「で、餌が来なくなったら?
 “誰にも見られてない”“誰にも必要とされてない”って、勝手に絶望して、自分で自分を見捨てる。
 滑稽だな。“誰かに見ててほしい”って叫びながら、
 “自分で自分を無視してる”のは、お前自身だ」

 

 ゆなは、ぎゅっと目をつぶった。
 そして、しばらくの沈黙のあと、口を開いた。

「……全部当たってて、ムカつく。
 でも、ほんとに……自分で自分を見てなかったなって思いました。
 誰かの“イイネ”じゃなくて、自分で“これが私だ”って言えなきゃ、
 ずっと空っぽのままなんですね」

「そうだ。“虚構”を積み上げた塔は、最後、自分の重さで崩れる。
 崩れる前に降りろ。“誰かに好かれる私”を捨てて、
 “私が好いてる私”を、始めろ」

 

——その日、“褒められなきゃ消えそうな少女”は、
 初めて“誰にも褒められない自分”と、目を合わせた。
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