毒舌教師、悩みを聞く気ゼロ。だけど的確すぎて誰も逆らえない

彩乃

文字の大きさ
9 / 31

“悟ったフリ”で人生を詐欺るな

しおりを挟む
「──で、なんの話ですか。僕に何を期待してるんですか、先生」

 彼は机に腕を投げ出し、退屈そうにこちらを見た。
 名前は秋月廉(あきづき・れん)。
 成績はトップクラス。常に冷静。どこか諦観めいた目をしている。

「いや別に。期待なんかしてないよ。
 お前が“自分の人生をギャグにして誤魔化してる”って言いに来ただけ」

「へぇ、名探偵ですね。でも残念、ギャグにしてるつもりはないですよ。
 ただ現実をそのまま語ってるだけ。僕には無理なんですよ、“希望を持つ”ってやつ」

「うん、そういうの。“先に諦めときゃ、傷つかなくて済む”って発想な。
 それ、お前の人生、“コンビニで期限切れ弁当だけ選ぶ客”みたいなもんだよ」

「は?」

「最初から“どうせダメ”って選び方してるから、
 賞味期限のある幸せにも、気づかねぇ。
 で、他人が温かい弁当食ってるの見て“あいつらどうせ下痢する”って笑ってんだろ?」

「……性格、悪いですね」

「お前が先にやってんだよ、それ。
 “人生を笑ってりゃ負けじゃない”って、勝手に演出してるだけ。
 お前の冷静さって、ただのビビりの化粧だからな?」

 

 秋月は無言になり、窓の外を眺めた。

「……僕は、昔ちょっとだけ頑張ってたんですよ。
 でも、何やっても“もっと上がいる”って言われて、
 褒められる前に“次”を求められて……だから、ある時から思ったんです。
 “最初から無気力なら、失望されることもない”って」

「それ、お前自身が“人生の観客席”に逃げたってことだよ。
 最初からプレイヤーじゃないフリして、
 “本気出してない”って言い訳を盾にして、ずっと見てるだけ」

「見てるだけで何が悪いんですか。
 ステージに立って叩かれるより、マシですよ」

「いや、お前、叩かれてすらねぇ。“誰の記憶にも残らない”のが、お前の現実だよ。
 観客席から石も投げず、拍手もせず、“あー寒い”ってつぶやいて終わり。
 それって、“死んでるのと同じ”だよな?」

 

 秋月の指先が、かすかに動く。

「……本気出したら、もっと笑われる気がするんですよ。
 “お前のレベルで夢語るとかウケる”って、そう言われる未来しか見えない」

「違ぇよ。“笑われるのが怖い”んじゃない。
 “本気の自分を否定される”のが怖いんだろ。
 だから、“本気の自分”をずっと温存してる。誰にも見せないまま」

「……だって、その“本気”が大したことなかったら、終わりじゃないですか」

「だったら、“終わらせてから始めろ”。
 自分の限界を知ってからが、“本当のスタート”だよ。
 お前みたいな奴が一番ダセぇのは、“何もやってないくせに、わかった風の顔してる”ところな」

 

 秋月は長い沈黙のあと、ふっと笑った。

「……今までの先生たち、みんな僕に“もっと頑張れ”しか言わなかったんですよ。
 でも、あなたは“逃げるな”って言うんですね」

「当然だ。“頑張る”の前に、“人生に出席しろ”。
 お前、今まで出席簿に名前だけ書いて、授業には一度も出てない奴だよ」

 

——その日、“人生は低空飛行が最適解”と思っていた少年は、
 初めて、“落ちてもいいから飛べ”という言葉を胸に刻んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...