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暗くて辛くて苦しくて
理由
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もう放課後になった。
彼女の口から出た衝撃的な言葉を聞いてもう、5、6時間が経ったということだ。
隣の席の彼女は空の丘から来ただけに勉強熱心なのが伝わるほど集中していた。
残念なことに朝のことが残って僕は集中できなかった。彼女とはあれ以来話していない。話す勇気もない。転校してきて早々嫌な思いをさせたことにものすごい後悔していた。時間が巻き戻せたらと何度思ったことだろう。
今日は特別、掃除があるわけでも明日の日直でも無いのでさっさと帰ろうと思った。カバンに教科書を入れ空いた隙間に筆箱を挟んだ。カバンを肩にかけもう教室を出るぞと言うときに彼女は口を開いた。
「放課後、予定あるの。」
語尾にハテナマークがつくような質問ではなかった。君なら放課後に遊びに行くような友達いないし予定ないよねとほぼ決めつけられた質問だった。
彼女の言う通り放課後遊びに行く友達などいたこともない。だから放課後の予定はない。ここで嘘をついて彼女をまた傷つけるのは申し訳ないと思い
「ないけど。」
自分ではそんなつもりはないが、さっきの決めつけを少し引きずっているのか、ぶっきらぼうになってしまった。
「朝の続き、君に話したい」
細くて届くかもわからない声だった。
僕は傷ついていると思い過ごしていたが僕に話そうか真剣に悩んでいたのではないかと思った。それならこっちも真剣に話を聞こうと思った。だから
「こんな僕で良かったら」
そう答えた。
外はザーザーの雨。カフェにでも行くのかと思っていたが連れてこられたところは彼女の家だった。
「狭いし汚いけど入って」
今日の天気予報は快晴だったから傘なんて持ってきていなかった。彼女は女の子らしい赤い傘を広げて僕に渡した。きっと私は濡れても大丈夫と言う意味だったのだろう。僕はそこまで弱々しい男じゃない。
「君が使いな」
僕はそう言った。久しぶりに女子と話したからか声は少し高かった。彼女はありがと。と小声でつぶやいた。僕に聴こえていないと思っているようだが、ちゃんと雨の音よりはっきり聞こえた。彼女は傘を自分の上に差しながらも
「走るよ」
と言って走っていった。僕を濡らさないための配慮であると過信してる。
僕は肩にかけたカバンを頭の上に乗せ彼女についていくように走った。
彼女の家はそこまで遠くなく走って五分ほどの距離だった。
「雨、やむまでここにいれば」
「ううん、申し訳ないから君の話を聞いたら帰るよ。そのかわり傘だけ貸して欲しい。明日返すからさ。」
「そう。分かった」
引き止めるような様子はなかった。
「これ使って」
彼女の方を振り向くと真っ白なタオルが顔面に向かって飛んできた。
僕は慌ててキャッチした。
「ありがと」
頭をわしゃわしゃと拭きながらそろそろ話を切り出そうかと思った。そのとき
「私ね、両親がどっちも医者でね。2人で病院をしているの。私はもちろん後継だって言われてて。でも私、どうしてもやりたい事があって医者にはなりたくないの。それをずっと切り出せずにいた。私が後継をするって言ってから家族に笑顔が溢れて毎日が幸せだったから。でもやりたいことが出来てから勉強することも嫌になった。でも言い出せず空の丘に入学した。最初の懇談みたいなので進路についての説明があったんだけど母親がうちはもう決まってるので結構ですって言ったの。私は聞きたかったからせっかくだし聞こうよって言った。そしたらね。」
彼女の表情は大きく変わった。
「懇談が終わってから母親は父親を呼び出した。父親は駐車場に止めた車から降りて、私に近づいてきた。お前に医者以外の道を知る権利はないってはじめて怒られた。暴力も受けた。結局両親は自分たちの望みを叶えてくれる私をモノとしてしか見てなかった。やりたいことを持って医者になりたがらない私はもうただのゴミ。私は両親が本気で好きだった。優しくて頭も良くて尊敬してる部分もたくさんあった。でも、自分たちの望みが叶わないかもしれないって分かった途端にゴミとして捨てられる。人間の心の暗さを知ったの。愛していた人たちの心が真っ暗なことが苦しくて辛くて。逃げたかった。だから今まで貯めたお金で家を借りて一人暮らしを始めた。そしたら学校で親に捨てられた女っていじられたり笑われたりして、今まで仲良かった友達もみんな手のひら返し。学校も嫌になってお姉ちゃんに手続きをしてもらって今ここにいる。」
僕は何も言えなかった。言えなかったんじゃない。何を言ったらいいか分からなかった。でも僕は決めた。
僕は君を助け出してみせるってね
彼女の口から出た衝撃的な言葉を聞いてもう、5、6時間が経ったということだ。
隣の席の彼女は空の丘から来ただけに勉強熱心なのが伝わるほど集中していた。
残念なことに朝のことが残って僕は集中できなかった。彼女とはあれ以来話していない。話す勇気もない。転校してきて早々嫌な思いをさせたことにものすごい後悔していた。時間が巻き戻せたらと何度思ったことだろう。
今日は特別、掃除があるわけでも明日の日直でも無いのでさっさと帰ろうと思った。カバンに教科書を入れ空いた隙間に筆箱を挟んだ。カバンを肩にかけもう教室を出るぞと言うときに彼女は口を開いた。
「放課後、予定あるの。」
語尾にハテナマークがつくような質問ではなかった。君なら放課後に遊びに行くような友達いないし予定ないよねとほぼ決めつけられた質問だった。
彼女の言う通り放課後遊びに行く友達などいたこともない。だから放課後の予定はない。ここで嘘をついて彼女をまた傷つけるのは申し訳ないと思い
「ないけど。」
自分ではそんなつもりはないが、さっきの決めつけを少し引きずっているのか、ぶっきらぼうになってしまった。
「朝の続き、君に話したい」
細くて届くかもわからない声だった。
僕は傷ついていると思い過ごしていたが僕に話そうか真剣に悩んでいたのではないかと思った。それならこっちも真剣に話を聞こうと思った。だから
「こんな僕で良かったら」
そう答えた。
外はザーザーの雨。カフェにでも行くのかと思っていたが連れてこられたところは彼女の家だった。
「狭いし汚いけど入って」
今日の天気予報は快晴だったから傘なんて持ってきていなかった。彼女は女の子らしい赤い傘を広げて僕に渡した。きっと私は濡れても大丈夫と言う意味だったのだろう。僕はそこまで弱々しい男じゃない。
「君が使いな」
僕はそう言った。久しぶりに女子と話したからか声は少し高かった。彼女はありがと。と小声でつぶやいた。僕に聴こえていないと思っているようだが、ちゃんと雨の音よりはっきり聞こえた。彼女は傘を自分の上に差しながらも
「走るよ」
と言って走っていった。僕を濡らさないための配慮であると過信してる。
僕は肩にかけたカバンを頭の上に乗せ彼女についていくように走った。
彼女の家はそこまで遠くなく走って五分ほどの距離だった。
「雨、やむまでここにいれば」
「ううん、申し訳ないから君の話を聞いたら帰るよ。そのかわり傘だけ貸して欲しい。明日返すからさ。」
「そう。分かった」
引き止めるような様子はなかった。
「これ使って」
彼女の方を振り向くと真っ白なタオルが顔面に向かって飛んできた。
僕は慌ててキャッチした。
「ありがと」
頭をわしゃわしゃと拭きながらそろそろ話を切り出そうかと思った。そのとき
「私ね、両親がどっちも医者でね。2人で病院をしているの。私はもちろん後継だって言われてて。でも私、どうしてもやりたい事があって医者にはなりたくないの。それをずっと切り出せずにいた。私が後継をするって言ってから家族に笑顔が溢れて毎日が幸せだったから。でもやりたいことが出来てから勉強することも嫌になった。でも言い出せず空の丘に入学した。最初の懇談みたいなので進路についての説明があったんだけど母親がうちはもう決まってるので結構ですって言ったの。私は聞きたかったからせっかくだし聞こうよって言った。そしたらね。」
彼女の表情は大きく変わった。
「懇談が終わってから母親は父親を呼び出した。父親は駐車場に止めた車から降りて、私に近づいてきた。お前に医者以外の道を知る権利はないってはじめて怒られた。暴力も受けた。結局両親は自分たちの望みを叶えてくれる私をモノとしてしか見てなかった。やりたいことを持って医者になりたがらない私はもうただのゴミ。私は両親が本気で好きだった。優しくて頭も良くて尊敬してる部分もたくさんあった。でも、自分たちの望みが叶わないかもしれないって分かった途端にゴミとして捨てられる。人間の心の暗さを知ったの。愛していた人たちの心が真っ暗なことが苦しくて辛くて。逃げたかった。だから今まで貯めたお金で家を借りて一人暮らしを始めた。そしたら学校で親に捨てられた女っていじられたり笑われたりして、今まで仲良かった友達もみんな手のひら返し。学校も嫌になってお姉ちゃんに手続きをしてもらって今ここにいる。」
僕は何も言えなかった。言えなかったんじゃない。何を言ったらいいか分からなかった。でも僕は決めた。
僕は君を助け出してみせるってね
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