ストーカー体質は異世界でも治らない

希彩(kiiro)

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第1章

ストーカー、怒る。

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「コホン、ごきげんよう。皆様、何をなさってるのでしょうか?」

大きめに声をかける。
見てるだけはちょっと出来なかった。長い物には巻かれろ主義なのに。ちくしょー。

「へ?」
「クロンキスト家の令嬢じゃね?」
「え!あの?」
彼らはコソコソと小声で話し合いをしだす。

「もう一度聞きますわね、そこでしてらっしゃるの?」

思ったよりも低い声がでた。空気が冷える。
「なんで君がそんなことを気にしてるのかい?」

なんで?そんなの私にも教えてほしい。

「貴方達があまりに愚かで惨めで滑稽で、かつ見苦しいので声をかけずにはいられませんでしたわ。」
ニッコリと答える。

「なっ!!」

この怒りに理由があるとすれば、それは私がロイドを身内に認定したってことだろう。ならば仕方がない。
私は身内にはとことん甘いんだから。

「貴方たちは自分の中にどんなものをお持ちなのかしら?人を批判できるほどですから、たいそう良いものを持ってらっしゃるのよね?」

「馬鹿にしているのか!」

「いいえ。ただ、疑問に思っただけですわ。そうですわね、例えば…対魔力の存在はご存知ですわよね?」

対魔力とは、相手の魔法を封じる技だ。扱うことができる人は稀だが、確実に存在する。

「当たり前だろ!何が言いたい!」

「なぜ剣の腕を磨きませんの?貴方は魔力が使えなくなれば、自分の身どころか、大切な人だって守れないのでしょう?知っていて行動しないのは愚かではなくって?」

「おい、黙っていれば!調子に乗りやがって!」
うるさい。黙って聞け。

「それに!貴方達は、王家を侮辱なさったことに気付いていまして?」
この国の王家の血には隣国から嫁いだとされる、王妃達の血が脈々と受け継がれている。

彼らの顔がみるみるうちに青く変わっていく。

「それとも、いずれは王族となる私への侮辱かしら?」
水戸黄門でいう、印籠を突き出してやった感じだ。
もう、何も言えなくなるまでぶっ叩いてやる。

「あぁそういえば、緑は醜いなどとも言ってたかしら?人にはそれぞれ主観というものがあるでしょうけど、緑が醜く見える貴方の目は、さぞなんでしょうね。」 
寄って集って、自分より優れたものを否定する。それがどれだけ滑稽か。早く気付いて後悔すればいい。

「はい、そこまで~!」
冷えきった空気を元に戻すような声が響く。

「もういいんじゃない?ヴィオラちゃん怒った顔も素敵だね☆」
誰がヴィオラちゃんだ。いちいち癪に障る人だな。

「あら、ごきげんようジーク様。そうですわね、言いたいことは言いましたし、あとはよろしくお願いしますわ。」

丁度いい、逃げよう。いつの間にか私達の周りに人だかりができていたようで、すごい注目を浴びている。これじゃ、私が問題児みたいじゃん!すごい恥ずかしい!

背後でジーク様が何か言ってる気もしたけど、今はそれどころじゃないから早足で中庭から離れた。


で。
「ぷっ!ククッ…」
「おい」
「いや、本当にごめん!て思って、ククッ…」
本当に誰のせいだと思ってるんだ。

「だって!ヴィーが俺のためにあんなに怒るなんて思ってないしさ!」
嬉しそうだな。コノヤロウ。

「ノートは?なんで取られたりしたの?」

「あぁ、あれはアイツらの勘違い!俺のじゃないし。」
えぇ!?良かったけど!めちゃくちゃ損した気分だよ。
間違えるなや!

「でも、ヴィー、格好よかったですわ!」
「王族感あったよなー、さすが未来の王妃!」
勢いだけで立ち回ったけど、それならまだ良かったか。

「私、一生ヴィーについて行きますわ!」
「俺も俺も!」
いや、お前ら、ストーカーのストーカーしてどうするよ。

「でも、嬉しかったぜ!ありがとな、ヴィー!」
さすがのいい笑顔だよ。イケメンって得だよね。
それで全部チャラだよ!もってけ泥棒!

それに、ロイドならきっと。

「私のピンチを救ってくれるんでしょう?ね、騎士様?」

「ははっ!…もちろんヴィーの仰せのままに。」
 

思い返すと、この2人が前世含めて初めての友人かもしれない。案外、楽しいもんだね!
頼りにしてるぞ!友人!
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