ストーカー体質は異世界でも治らない

希彩(kiiro)

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第1章

ストーカー、救う。

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やっと、手足の痛みも消え跡も薄くなったので、レオン様への挨拶に行けるようになった。

「ごきげんよう!レオン様!」

寮から出てきたところを突撃する。レオン様は驚いたように目をパチパチさせて、私の腕を確認するように見た。やっぱり知られてしまっていたか。

「すっかり元気になりましたの!」
心配なんてしていないだろうけど、迷惑はかけたくない。腕を振って一生懸命元気さをアピールする。

彼は一瞬顔を歪めたようにも感じたが、すぐに元の綺麗な顔に戻っていたので、気のせいかもしれない。

「…俺の婚約者なんだから、もう少し自覚を持て。」

なんだか、彼がホッとしたように言うから驚く。もしかして、心配してくれてるんじゃないか。え?なに、デレ期ですか!?ごっつぁんです!

そこからはいつも通り無視のオンパレードだったけど、いつもより、ゆっくり歩いてくれたような気もした。ハッピーな頭だったからそう感じただけかもしれないが。

「今日は優しかったのですわ!」

「きっとヴィーの気持ちが届きましたのね!」

「それって優しいのか?」

いつものように、イツメンでレオン様の観察中に話をしていた。レオン様は公開模擬訓練中なので、公式に観察をしているだけである。

「俺も出たかったなぁー、」

隣で嘆くロイドはこの間の犯人達への暴行に対して、この模擬訓練の不参加という処分が下された。結構軽いと思うのだけど、ロイドの性格上キツい処分なのかもしれない。

「汗をかくレオン様も格好良い!」

「ヴィー、殿下とジーク様が模擬戦をするようですわ!」

レオン様の戦う姿が見れるなんて、素晴らしきこの世界。めちゃくちゃ強そうだし。実際強いらしいし。

というか、ジーク様大丈夫か?あの人ナヨナヨしてるイメージが未だに消えないんだよな。でも、もちろんレオン様の応援をするが。

「ボッコボコにしちゃえー」
え?悪意を感じる?気の所為、気の所為。

「どちらが勝つのかしら?」

「あー、二人ともすげぇからな、わかんねー」

え?レオン様は分かるとしても、ジーク様までそんなに強いの?意外だなぁ。

模擬戦が始まったんだけど、模擬訓練ってこんなに激しいの!?王族あんなことして大丈夫?
初めてちゃんと見る魔法は完全にファンタジー。
しかも2人とも光属性だから、ずっとピカピカしてるので、サングラスが欲しい。

レオン様が勝ったようにみえたんだけど、どうなんだろう。

「あの野郎、今わざと負けやがった。」
ロイドがジーク様に文句を言う。ロイド曰くジーク様は本気でやればレオン様と同等の力があるのに、いつもわざと負けているらしい。まぁ、あの男ならやりかねんだろうけど。

2人ばかり注目していると、視界の外から大きな音がする。

「怪我人だ!救護を呼べ!」

見た感じ結構な怪我のようだ。血が勢いよく流れてる。
救護は?遅くない?いくら魔法の世界だからと言って出血が多いとやばいんじゃないか。

「おい、ヴィー!?」

ロイドの制止を無視して走り出す。前世のおかげでだいたいの応急処置はできるようになっている。周りへの理由は後で考える!

流れた血が道を作っている。出血は右太腿からみたいだけど、服のせいで見えない。

「ちょっと失礼!」
ズボンを破って傷口を見る。良かった、太い血管が切れた訳ではなさそうだ。傷口は深いが止血したらなんとかなるだろう。あとは医者の仕事だ。

制服のリボンで傷口へ繋がる血管を圧迫し、患部を自分の太腿に乗せ心臓の位置より高くする。ハンカチで傷口を抑えて止血を試みた。

スムーズに出来たのは、前世で弟が死にかけた際に何も出来なかったのが悔しくて何度も練習したからだ。練習しといて良かった!前世の自分に感謝したい。

負傷者の顔色も良くなり、意識もぼんやりだが、回復したようだ。

「貴方、名前を言える?」

「俺、は… カイルだ。それより…お前っ」

「救護班です!」
カイルさんが話せるようになったところに救護班が到着した。遅いっ!と睨みつけようとして振り返ったら、そこにいたのはヒロインちゃんだった。

「どいてください!私が魔法で治します!」

光属性は治癒の魔法が使えるんだった。しかもヒロインちゃんは能力が高いはず。
彼女はすぐに私と入れ替わり、治療を始めた。

ひとまず、安心して自分の状況を省みる。血だらけだしボロボロだし、しかもとてつもなく注目を浴びている。

「ヴィオラ!その格好どうしたの!?」

エディは救護班だったらしく、私を保健室まで連行した。ロイドやイリスもついてきて、こっぴどく怒られた。心配の裏返しってやつが、痛いぞコノヤロウ。
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