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第2章
ストーカー、遊ぶ。
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「ヴィオラ!ワタクシは鬼ごっこがしたいわ!」
「勇者ごっこもよ!ヴィオラは悪者役ね!」
エリザ王女に手を引っ張られやってきたのは王宮の中でも入ったことのない庭園だった。というか、この歳でその遊びに参加するのは痛すぎる。しかも女子がやるには激しい遊びだし。
「エリザ王女、いつもそのように遊んでいらっしゃるの?」
「エリザでいいわ!この遊びは初めてなの。」
何か違う遊びにしてもらえないかと我策しての質問だったが、彼女は不満げに口を尖らせ、寂しげに呟いた。
「だって…いつもは1人だもの。」
王族は人に非ず。たしか、そんな言葉がある。人としての感情が政治の為にならないことはよくあるからだ。きっとこの少女も、王族であるために、経験できないことがある。例えば子供らしく皆で元気に遊ぶとか。
「鬼ごっこは2人だと大変ですから、ヒーローごっこにしましょうか」
私もこの世界では、きっと立場に縛られて生きていく側の人間だ。だからせめて、今日この場ではただの子供でいられる場所を私が責任をもって作ってあげたい。そうして、明日からまた王族となればいい。切り替えってものは案外大事なことだったりする。
エリザは驚いたように私を見上げると、嬉しそうに何度も首を縦に振った。
「ワタクシ、ヒーロー役がいいわ!」
「あら、私も悪役はとても得意なの。」
だって悪役令嬢だもんね。得意というより、存在自体が悪役だし。前世の演劇でラスボスの魔王役やったことあるし。
「ハッハッハ!勇者よ!お前の力はそんなものかっ!」
「我が偉大なる力を受けてみよ!ダークネスシャイニングアタック!!!」
「なっ!その力は!貴様っ、聖人か!!!」
「ぐはっ!!…くっ…これっ…までっ……か…」
まぁ、やるからには全力で魔王を演じた訳で。恥なんて捨ててしまいました。誰か拾ってやってください。エリザはすっかりヒーローごっこを気に入ったようで、この一連の流れを5回ほどやりました。エリザさん、手加減無用で攻撃するから痛いのよ。正直、心は悲鳴をあげてました。アーメン。
「ヴィオラ、あなたとっーても面白いわ!」
ご機嫌なエリザが私の手をとって興奮気味に振り回しながら言う。それは良かった。喜んでもらえて満足だ。頑張った甲斐があった。
「明日からも、ワタクシと遊びなさい!」
「エリザ王女、私勉強しなければなりませんの。」
「そんなの、ワタクシが言えばなんとでもなるわ!」
「いやよ!ワタクシだって、勉強してるもの!あんなの必要ないわ!」
エリザ王女は癇癪を起こしたように目に涙を貯めて怒り出す。この歳の子にそこまで求めるのは可哀想なのかもしれない。でも、それが王族として生きる義務なのだ。やっぱり、切り替えというものは大事なのだ。
「エリザ王女、魔王はなぜ戦争を起こしたのでしょうね?」
「…え?」
私は腰を地面に下ろし彼女と視線を合わせる。勇者ごっこで倒された魔王の話。
「それは、だって、人間の世界を嫌いだからじゃないの?」
「どうして、そんなに嫌いなんでしょうか?」
「そんなの知らないわ!」
「だから、勉強しなければなりませんの。私達はこの国の民から魔王が出ることを防がないといけない。」
魔王はなぜ、滅ぼそうとする程人間を恨んだのか。理由があれば許される訳では無いが、戦争が始まり多くの死人が出たならば、それは王家の責任だ。人を恨み社会を恨む理由がこの国にあれば、魔王のように争いを起こそうとするのは誰しもがなりうる存在だということを私は王族になる人間として知っておかなければならない。それはエリザ王女も同じだ。
エリザは、考えるように俯いて自信のなさそうに呟く。
「ワタクシ、勇者の気持ちでしか考えたことがなかった…」
客観的に物事を考えるなんてことは、大人だってそう簡単ではない。私でも、自分がどちらかに関わっていれば片方に肩入れした考えになるだろう。でも誰かの上に立ち生きる上で、それを意識することは必要なことだ。
「エリザ王女には、まだまだ時間がありますわ。お互い勉強も頑張って、時々今日のように遊びません?」
彼女の小さな手を握って、優しく笑いかける。
「わかったわ!ヴィオラのようにワタクシ勉強も頑張る!約束よ!」
小指を絡めて約束を交わす。私もこの子に負けないように頑張らないと。
この時の私は、後でアザだらけになっていてレオン様に驚かれ怒られるなんて知らなかった。アーメン。
「勇者ごっこもよ!ヴィオラは悪者役ね!」
エリザ王女に手を引っ張られやってきたのは王宮の中でも入ったことのない庭園だった。というか、この歳でその遊びに参加するのは痛すぎる。しかも女子がやるには激しい遊びだし。
「エリザ王女、いつもそのように遊んでいらっしゃるの?」
「エリザでいいわ!この遊びは初めてなの。」
何か違う遊びにしてもらえないかと我策しての質問だったが、彼女は不満げに口を尖らせ、寂しげに呟いた。
「だって…いつもは1人だもの。」
王族は人に非ず。たしか、そんな言葉がある。人としての感情が政治の為にならないことはよくあるからだ。きっとこの少女も、王族であるために、経験できないことがある。例えば子供らしく皆で元気に遊ぶとか。
「鬼ごっこは2人だと大変ですから、ヒーローごっこにしましょうか」
私もこの世界では、きっと立場に縛られて生きていく側の人間だ。だからせめて、今日この場ではただの子供でいられる場所を私が責任をもって作ってあげたい。そうして、明日からまた王族となればいい。切り替えってものは案外大事なことだったりする。
エリザは驚いたように私を見上げると、嬉しそうに何度も首を縦に振った。
「ワタクシ、ヒーロー役がいいわ!」
「あら、私も悪役はとても得意なの。」
だって悪役令嬢だもんね。得意というより、存在自体が悪役だし。前世の演劇でラスボスの魔王役やったことあるし。
「ハッハッハ!勇者よ!お前の力はそんなものかっ!」
「我が偉大なる力を受けてみよ!ダークネスシャイニングアタック!!!」
「なっ!その力は!貴様っ、聖人か!!!」
「ぐはっ!!…くっ…これっ…までっ……か…」
まぁ、やるからには全力で魔王を演じた訳で。恥なんて捨ててしまいました。誰か拾ってやってください。エリザはすっかりヒーローごっこを気に入ったようで、この一連の流れを5回ほどやりました。エリザさん、手加減無用で攻撃するから痛いのよ。正直、心は悲鳴をあげてました。アーメン。
「ヴィオラ、あなたとっーても面白いわ!」
ご機嫌なエリザが私の手をとって興奮気味に振り回しながら言う。それは良かった。喜んでもらえて満足だ。頑張った甲斐があった。
「明日からも、ワタクシと遊びなさい!」
「エリザ王女、私勉強しなければなりませんの。」
「そんなの、ワタクシが言えばなんとでもなるわ!」
「いやよ!ワタクシだって、勉強してるもの!あんなの必要ないわ!」
エリザ王女は癇癪を起こしたように目に涙を貯めて怒り出す。この歳の子にそこまで求めるのは可哀想なのかもしれない。でも、それが王族として生きる義務なのだ。やっぱり、切り替えというものは大事なのだ。
「エリザ王女、魔王はなぜ戦争を起こしたのでしょうね?」
「…え?」
私は腰を地面に下ろし彼女と視線を合わせる。勇者ごっこで倒された魔王の話。
「それは、だって、人間の世界を嫌いだからじゃないの?」
「どうして、そんなに嫌いなんでしょうか?」
「そんなの知らないわ!」
「だから、勉強しなければなりませんの。私達はこの国の民から魔王が出ることを防がないといけない。」
魔王はなぜ、滅ぼそうとする程人間を恨んだのか。理由があれば許される訳では無いが、戦争が始まり多くの死人が出たならば、それは王家の責任だ。人を恨み社会を恨む理由がこの国にあれば、魔王のように争いを起こそうとするのは誰しもがなりうる存在だということを私は王族になる人間として知っておかなければならない。それはエリザ王女も同じだ。
エリザは、考えるように俯いて自信のなさそうに呟く。
「ワタクシ、勇者の気持ちでしか考えたことがなかった…」
客観的に物事を考えるなんてことは、大人だってそう簡単ではない。私でも、自分がどちらかに関わっていれば片方に肩入れした考えになるだろう。でも誰かの上に立ち生きる上で、それを意識することは必要なことだ。
「エリザ王女には、まだまだ時間がありますわ。お互い勉強も頑張って、時々今日のように遊びません?」
彼女の小さな手を握って、優しく笑いかける。
「わかったわ!ヴィオラのようにワタクシ勉強も頑張る!約束よ!」
小指を絡めて約束を交わす。私もこの子に負けないように頑張らないと。
この時の私は、後でアザだらけになっていてレオン様に驚かれ怒られるなんて知らなかった。アーメン。
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