DuaLoot(デュアルート)

佐倉翔斗

文字の大きさ
9 / 10

episode-7 意地(プライド)と紅い花

しおりを挟む
 こんな私でも、意地プライドというものがあるのでね。ここで引き下がってしまえばの願いが果たせなくなる。誰よりも、私に寄り添い、誰よりも、私を理解してくれた。そして誰よりも、のために。だからこそ私は…
「私ハ、ステラーヌ・ルナ。我ガ妻大切な人ノ願イノ為ニ…貴様ニ勝タネバナランノダ…!!」
伯爵は片言な言葉でそう言った。
 彼が片言なのはおそらく人間離れした骨格に変形し、声帯がうまく発達していないからであろう。伯爵の見た目から推測するに蜥蜴男リザードマンで間違いない。ルナは冷静に伯爵を分析した結果がそれであった。さらに彼女は自分に与えられた力についての推測を始めた。現段階で分かっていることは2ということ。一つは「」。手首を拘束していた縄をいとも外せたので概ね合っている。二つ目は未確定だが「」ことができるようだ。これらを駆使して伯爵を撃退できないか考え始めた。ふと前を見ると、伯爵の姿は消えていた。恐らく先ほど伯爵が言って使っていた「空間操作」を使ったのだろう。なら伯爵はどう攻撃してくる?間違いなく。人間の死角…それなら…
!!
ルナはそうつぶやき、護身用の木製の小刀を構えて背後を警戒した。すると予想が的中し、伯爵が背後から音もたてずにこちらに走ってきて鋭利な爪で切り裂こうとしていた。ルナは間一髪の所で回避することに成功した。しかし相手は蜥蜴男リザードマン、ただのトカゲならその後に続けて攻撃をしてこないだろう。伯爵は攻撃を外したと瞬時に判断し、硬くて鋭利な刃物のような尻尾で隙を見せぬ二連撃を食らわせた。ルナは攻撃を喰らったが、幸い受けたダメージは少なく、服の袖が切り傷で破け、掠り傷で血が滲んでしまった。
「オヤ、アマリ効イテナイネ…。次ハ、肉モ切リ裂イテヤロウ…!!」
伯爵は不気味な笑みを浮かべ、そう言った。反撃しようにも彼女が持っている武器は終夜のような鉄製の太刀ではなく木製の小刀のみ。流石にこれだけでは伯爵の鎧のように硬い鱗を突破することは不可能だ。
ルナはあることを閃いた。自身が持つ「」をうまく応用し利用して武器を強化できないかと考えた。迷っているのも時間の無駄、試しにやけくそで木刀を強く握った。すると、木刀は見た目は変わらないが徐々に強固になっていき、材質が木から鉄になったかのように感じた。不思議なことに。そうしていると伯爵が再び攻めの姿勢に入り向かった来た。ルナは反撃を試み、木刀を構えた。伯爵が右手の爪で切り裂きにかかった。ルナは伯爵の攻撃をいなし、守りが薄くなっている左腕に向け素早く、そして強く木刀で殴った。攻撃を受けた伯爵の左腕からと鈍い音が鳴った。彼女が強化した木刀は鎧のように硬い鱗を貫通し腕の骨にダメージを与えることができたのだ。伯爵は痛みに悶えている。
 「小癪…小癪小癪…!!私ハ…私は…の願いのためにも…ここでやられるわけには…倒れるわけには…いかんのだ…!!」
あまりの激痛だったのか、伯爵の変化は徐々に解けていた。しかし、完全には解除されていなく無傷の右腕だけはいまだ鱗に覆われていた。伯爵がとった行動を見るに、間違いなく。伯爵の意図を理解したのか、ルナは伯爵に向けこう尋ねた。
「最後の一発に賭けるなんて、計算高い性格のお前らしくない。そして、間違っていたら悪いが伯爵、
伯爵はその言葉を聞き、痛みに耐えながらも高らかに笑った。
「…やはり君は面白い少女だ。確かに、普段の私ならこんな強行策は取らない。そして、君の言う通り、私の目的は言っていたものとは違う。私の本当の目的は彼女我が妻ラフィニスが私に望んだ願いである。実験や制裁なんざどうでもいいのさ。全ては強さを求めるための糧なのさ。…だが、もう終わりだ。ステラーヌ・ルナ、君が最後だ。さっき受けた一撃で分かった。。君を倒せば、我が目的に進むことが出来ると確信した。なので決着を付けよう。この拳一振りで君を穿つ。悪いが、私の目的のために死んでくれ!」
伯爵の決意が籠った言葉が大広間内に響き渡る。ルナは伯爵の言葉を聞いてクスリと笑った。
「誰よりも強く生きる…か…。ここまで来たらだな。…伯爵。悪いけどお前の願いは聞けそうにない。私にもお前みたいにがあるもんでね。」
ルナの言葉にも決意が籠っていた。その言葉を聞き、何か納得するかのようにニヤリと笑う伯爵。ルナと伯爵、二人は違うがであったのだ。
 気がつけば大広間は静まり返り、ルナと伯爵二人の呼吸はかき乱されぬ状態になっていた。そして、伯爵から動きを見せた。力強く右手の拳を握り、ルナに向かって走り寄っている。その拳には、伯爵の信念のようなものが宿っているように見え、先ほどとは全くもって異なる不思議な力が加わっている。それに対しルナは今持っている力をありったけ使い、木刀を振りかぶり握りしめた。木刀は先ほどとは比べ物にならない程の強度になり、水色の光を帯び始めていた。伯爵がルナに攻撃が当たる間合いまで近づき力の限り右腕を彼女に向け振るった。それと同時にルナは力強く握り振りかぶっていた光を放つ木刀を振り下ろした。二人の攻撃が触れた瞬間、激しい火花が散った。その威力は凄まじく、館全てを激しく揺らしていた。そしてお互いにその威力に耐えられず、反発し合い吹き飛ばされてしまった。ルナと伯爵、互いに壁に強く打ち付けられた。伯爵は何とか耐えきったようだが、ルナはそのまま気絶してしまった。
「…私の…勝ちだ…。ステラーヌ・ルナ、少女ながらこれほどの力を出すことが出来るとは…。君は…すごいよ…。…君みたいな人とは戦いたくなかったな…。君となら、分かり合えただろうな…。」
よろけながら伯爵はルナの方へと歩みを進めた。しかし次の瞬間、伯爵の腕に上から一本の針が突き刺さった。伯爵は不思議に思い上を見上げた。そこには彼女に向け仕掛けた無数の針が彼の周りに向いていた。そう、伯爵が立っている場所は。さらに、その針たちは徐々に動き始めていた。伯爵は驚き、その場を離れようとするが、先ほどの相打ちの反動が来てしまい思うように動けなかった。そんな伯爵に向かって無慈悲にも一本一本、彼の体に刺さっていく。この時、伯爵は悟った。
 これが、私が殺めてきた者たちが受けた痛みか…。考えずとも分かる。。我が妻ラフィニスよ…お前の願いを果たせずに死んでしまうことを許してほしい…。私もそちらへ向かおう…。そしてまた、昔のように話を聞いてくれないか…?私たちの出会いの始まりである、…。
全ての針が地面と彼の体に突き刺さった時には、彼ゲッテル・カタストロイア伯爵はピクリとも動かず血を流し倒れていた。彼の表情は涙を滴っているが少しだけ微笑んでいるように見えた。そうして大広間に再び静寂が訪れた…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...