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どようのうし
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しょうづかのおばあのもとへきました。
「はい、六文」
「交通系ICで」
「そこにたっちや」
「はい、ここにタッチ」
*
「乗りなさい」
黒の着物姿の童女。人形のような容姿、そして表情。
「他にも女子はおんの?」
「いるよ。でも乗るのはひとり。「多くして舟、山に登る」よ」
「空を飛ぶ船のおはなしは朗んだことあるけど、山には登らんなぁ」
「そう。指示する人が多いと事は見当外れな方向へすすんでいくのね」
「検討しときます」
「えっ?」
振り返ると、ぷるぷるふるえてはる。
「ついたら「冥土きっ茶」に寄ろかな?」
ぷるぷる・・・
「映画を観たほうがえいが?」
ぷるぷるぷる・・・
月尊優と申します。
わたしの名前も十分おめでたいですが、せがれに、めでたく、健康に長生きできる名前をつけようと、いろいろとうかがって参って、そこから一つを選べず、全部くっつけてみました。
じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ
かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ(以下略)
後ろ向きにうずくまっている舟頭。
「ついたわ。そこへタッチして」
電子音が鳴り、六文が引き落とされる。
「次があるから。わたしはここで」
商店街のぱちんこ屋にチラシがはったぁった。他人の空似かな?
*
左へ折れて、真っ直ぐ冥土筋を歩いて参ります。
寿限無やないけど、銀行の名前も長なりましたなぁ。
そして、前にそびえるえんまかく。
亡者の列へついていきます。
「お前はそっちやない、こっち!」
「皆、あっちいってますやん?」
「新幹線が止まっててな。代わりに飛行機で江戸へいくそうや。で、南海やのうて、何回くるんやお前は?」
「じごく道、人間道を経て3回目ですか?」
「ほうか、お前は前世へ送る。おもいだすべきことがあるはずや」
*
「今日はまっこと(本当に)暑いねえ」
「はっ」
「こんなこんまい(小さな)子までひきよるがやね(ひくんだね)?」
「ええ。もうすぐ祭りです。朝早うでて、ばんも遅なるとか」
「そがなんか(そうなのか)。おまんが(お前の)ところにもあるがぁ(あるのか)?」
「ええ。こちらでは天神祭が一番大きいでしょうか。閣下が中央へ復帰されたあととなるのが残念ですが」
「ひだりいけ(腹も減ったし)、飯しようや(にするか)」
「今日は土用丑の日です。まむしはどうでしょうか?」
「はめか?」
「確かに細長いですが、うなぎであります」
*
座しきへ上がります。
「まむしふたつ」
「まっちょりや(まて)、特上にしようや(しよう)」
「見たところ、普通が(普通の)丼ねあ(丼だね)」
わたしは閣下がはしをつけてから食べ始めます。
「ごらんください、中にもございます」
「こじゃんと(見事だ)。うなぎといえば重鎮の清浦閣下か」
「饅香内閣ですね? 香りがしていても肝心のうなぎがこなかったとか」
*
明日は帰られる日。夕刻(夕方)から酒宴(宴会)でした。
「「黒松白鹿」。西宮市の「辰馬本家酒造」か。西宮はおまんが好きな大阪タイガースか? わしは虎が好かんが」
「社会事業、教育事業に熱心で、天皇陛下より激励を授かった素晴らしき酒造さんにございます」
閣下はかなりの酒ごう(大酒のみ)だとうかがっております。弱いかたからつぶれていきました。
「閣下、お休みになられましたか」
「起きてる。おまんも強いな」
「はっ、おぼれることはございません」
「いまから遊びにいくか?」
「汽車の時間がございます」
*
「戦そうはしょうまっこといかん(本当に本当にいけない)」
「これまで通り下の者をいたわり(いたわりなさい)。日本が未来は若い者が背負う。まずは今が子どもを笑顔にし(笑顔にしなさい)」
わたしは終戦前日に死に、閣下は次の年に刑死しました。
天皇陛下はその後、平和に過ごされ、昭和六十年七月に側近たちと鰻重を召しあがられた。
初子の日で土用の前。十干は壬でありました。
*
「お前は、帰ったらまずなにを食べたい? 楽しみにしておれ」
*
いきかえるなり、出前が届きました。お重。
「お代お願いします」
いままでで一番の重ばつにございます。
----
落語「寿限無」より引用
「はい、六文」
「交通系ICで」
「そこにたっちや」
「はい、ここにタッチ」
*
「乗りなさい」
黒の着物姿の童女。人形のような容姿、そして表情。
「他にも女子はおんの?」
「いるよ。でも乗るのはひとり。「多くして舟、山に登る」よ」
「空を飛ぶ船のおはなしは朗んだことあるけど、山には登らんなぁ」
「そう。指示する人が多いと事は見当外れな方向へすすんでいくのね」
「検討しときます」
「えっ?」
振り返ると、ぷるぷるふるえてはる。
「ついたら「冥土きっ茶」に寄ろかな?」
ぷるぷる・・・
「映画を観たほうがえいが?」
ぷるぷるぷる・・・
月尊優と申します。
わたしの名前も十分おめでたいですが、せがれに、めでたく、健康に長生きできる名前をつけようと、いろいろとうかがって参って、そこから一つを選べず、全部くっつけてみました。
じゅげむ じゅげむ ごこうのすりきれ
かいじゃりすいぎょの すいぎょうまつ(以下略)
後ろ向きにうずくまっている舟頭。
「ついたわ。そこへタッチして」
電子音が鳴り、六文が引き落とされる。
「次があるから。わたしはここで」
商店街のぱちんこ屋にチラシがはったぁった。他人の空似かな?
*
左へ折れて、真っ直ぐ冥土筋を歩いて参ります。
寿限無やないけど、銀行の名前も長なりましたなぁ。
そして、前にそびえるえんまかく。
亡者の列へついていきます。
「お前はそっちやない、こっち!」
「皆、あっちいってますやん?」
「新幹線が止まっててな。代わりに飛行機で江戸へいくそうや。で、南海やのうて、何回くるんやお前は?」
「じごく道、人間道を経て3回目ですか?」
「ほうか、お前は前世へ送る。おもいだすべきことがあるはずや」
*
「今日はまっこと(本当に)暑いねえ」
「はっ」
「こんなこんまい(小さな)子までひきよるがやね(ひくんだね)?」
「ええ。もうすぐ祭りです。朝早うでて、ばんも遅なるとか」
「そがなんか(そうなのか)。おまんが(お前の)ところにもあるがぁ(あるのか)?」
「ええ。こちらでは天神祭が一番大きいでしょうか。閣下が中央へ復帰されたあととなるのが残念ですが」
「ひだりいけ(腹も減ったし)、飯しようや(にするか)」
「今日は土用丑の日です。まむしはどうでしょうか?」
「はめか?」
「確かに細長いですが、うなぎであります」
*
座しきへ上がります。
「まむしふたつ」
「まっちょりや(まて)、特上にしようや(しよう)」
「見たところ、普通が(普通の)丼ねあ(丼だね)」
わたしは閣下がはしをつけてから食べ始めます。
「ごらんください、中にもございます」
「こじゃんと(見事だ)。うなぎといえば重鎮の清浦閣下か」
「饅香内閣ですね? 香りがしていても肝心のうなぎがこなかったとか」
*
明日は帰られる日。夕刻(夕方)から酒宴(宴会)でした。
「「黒松白鹿」。西宮市の「辰馬本家酒造」か。西宮はおまんが好きな大阪タイガースか? わしは虎が好かんが」
「社会事業、教育事業に熱心で、天皇陛下より激励を授かった素晴らしき酒造さんにございます」
閣下はかなりの酒ごう(大酒のみ)だとうかがっております。弱いかたからつぶれていきました。
「閣下、お休みになられましたか」
「起きてる。おまんも強いな」
「はっ、おぼれることはございません」
「いまから遊びにいくか?」
「汽車の時間がございます」
*
「戦そうはしょうまっこといかん(本当に本当にいけない)」
「これまで通り下の者をいたわり(いたわりなさい)。日本が未来は若い者が背負う。まずは今が子どもを笑顔にし(笑顔にしなさい)」
わたしは終戦前日に死に、閣下は次の年に刑死しました。
天皇陛下はその後、平和に過ごされ、昭和六十年七月に側近たちと鰻重を召しあがられた。
初子の日で土用の前。十干は壬でありました。
*
「お前は、帰ったらまずなにを食べたい? 楽しみにしておれ」
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いきかえるなり、出前が届きました。お重。
「お代お願いします」
いままでで一番の重ばつにございます。
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落語「寿限無」より引用
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