乙女ゲームに転移したけど無理ゲー過ぎて笑える(仮)

鍋底の米

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出来る事から

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 とにかく今出来ることを全てやってみることにした。

 少しでも今の状況を把握しておこうと、画面をステータスに切り替える。

—————————————————
主人公:円谷つぶらや 和明かずあき(17)
レベル:21

体力:201/225
魔力:800/800

攻撃:61
防御:61
知恵:67
精神:67
敏捷:67
器用:67
幸運:2
魅力:2

魔法:水のポンプ/緩衝の水/水道水
   /癒し混入/マッ超回復
   /ヒール/身嗜み
スキル:隠密/剣術

乙女の本気:♡

属性:聖/水
状態:乙女の呪い/隷属(肉体)
称号:聖女/巻き込まれし者
   /女神(代理補佐)の加護
————————————————


 3D表示のおれの姿の首には、継ぎ目の無い赤い首輪が嵌っている。
 状態は『隷属(肉体)』となっている。
 肉体の記載があるということは、精神の隷属もあるということか…

 精神を隷属させられると、今のように思考することも出来なくなるんじゃないだろうか?

 そんなの、絶対逃げられないじゃないか!

 想像しただけで恐ろしい。

 気を失っていた間に、体力と魔力はほぼ全て回復している。


 ………ん?

 乙女の本気にハートマークが付いている?!

 いつの間に…

 前回確認した時はどうだったっけ?

 サラリとしか見ていなかったので、正直覚えていない。

 …んー、わかんないけど…

 現況を打開するのには役に立たちそうにもないので、今のところはスルーすることにした。


 他に出来そうなことは…

 そうだ!アイテムボックス!

 これもファリが驚いていたものだ。
 ゲーム画面と同じ想定外の物だろう。

 アイテムボックスは、魔力の消費無しに、念じるだけで物を出し入れすることが出来る。体が動かなくても問題無いはずだ。

 コエリアの葉を…

 沢山収納しているコエリアの葉を一枚だけ出してみる。

 手は動かせないので受け止められずヒラリと床に落ちる。

 やっぱり使える!

 今度は、目の前にある椅子を一脚収納してみる。
 それも問題なく収納できたので、残っているテーブルともう一脚の椅子も収納する。

 これ、上手く使えば、相手の隙を突いたりするのに使えるんじゃないかな?

 例えば、追手の足元に焚き木として収納している木の枝を出したら、足を取られて転んだりして…
 頭上に出したら頭を打って目を回したりとか…
 それだったら、焚き木より、さっき収納したテーブルの方が効果的か?

 しかし、いくら足止めしても、体が動かないままでは逃げることは出来ない。

 でも、思い通りの場所に収納した物を出せるように、練習しておくのは悪くはないかもしれない。

 そう思ったが、コエリアの葉と違い、焚き木などを出せば、大きな音が立つ。

 練習の前に、もう一度マップを出して周囲の状況を確認しておこう。

 マップ上の自分のいる地点に白い点が明滅している。
 その周辺には人を表す青い点も、魔物を表す赤い点も無い。

 少し離れたところに、青い点がいくつか同じラインに沿って動いている。
 これはきっと建物の外の道を歩く人々のものだろう。

 この部屋の簡素さからして、今居る建物自体、そんなに大きな物でもなさそうだ。きっと同じ建物内に、おれ以外誰も居ない。

 それはファリも居ないってことで…

 あの男は、『お前売って…』と言っていた。
 依頼人の目的は『貴族の子息』の方だったので、あの男にとって不用である獣人のファリは、先に売られてしまったのかもしれない。

 考えただけで不愉快で、胸がザワザワする。

 今すぐ走り出してファリを探しに行きたい。

 衝動に駆られるが、体はやはり動かなくて、イライラをぶつけるように、焚き木をいくつも落としていく。

 森の中で、いつでも野営ができるようにと、焚き木に丁度良さそうなものを、目に付いた端から収納していたので、いつのまにか、かなりの量になっている。

 野営用の焚き火どころか、キャンプファイヤーが出来てしまいそうだ。

 その量を任意の場所に一本づつ全て出し、また全てを収納することを何度も繰り返した。

 体を動かしてはいないとはいえ、流石に少し疲れてくる。

「っはぁっ」

 ……!

 今、一瞬呼吸が乱れた!?

 機械的に一定のリズムで呼吸するように、強制的に管理されていたはずの呼吸が、気持ち的に疲れを感じ、溜息をついた拍子に乱れをみせた。

 気のせいじゃないよな?!

「っくっ…」

 意識して首輪に抗ってみると、喉の奥から小さな声が漏れた。

 強力な力で無理矢理隷属させ、締め付けてきていた強制力が、若干弱まっているような感じがする。

 もしかして…

 画面を出して、マップやステータス画面を次々に切り替えながら、更にアイテムの出し入れを何度も何度も繰り返してみる。

 数え切れない程繰り返した後、とうとう…

 ピクリと指先が動いた。

 ……! やっぱり!

 ゲーム画面やアイテムボックスという、想定外の力で揺さぶることで、固着していたネジが緩んでいくように、だんだんと強制力が弱まっていき…

 ふいに、コロリとネジが抜け落ちたような感覚がして、首輪が外れて床に落ちた。

 ガクリと膝の力が抜けて、床に崩れ落ちる。

 両手を床に付いたまま、ゆっくりと大きく深呼吸を繰り返す。
 自分の意思とペースで呼吸ができて、その解放感に胸を撫で下ろした。

 体に自由が戻ってきた!

「…や…やった!」

 久しぶりにまともに声を上げた為、喉が張り付いていて咽せてしまう。
 まつ毛に滲んだ生理的な涙を払う為、何度か瞼を瞬かせて息を整えた。
 
 落ち着いた後、床に付いた手の先に、外れて落ちていた首輪を見つけて拾い上げた。


 人の自由を奪い、尊厳を傷つける首輪。
 こんな物は在ってはならない。

 存在を許せなくて、粉々に壊してしまいたくなる。
 しかし、何の算段も立てられていない今、僅かなりともファリを探し出すのに役立つ可能性のある物は、どの様な物であれ手離すべきではないと、湧き上がった衝動を押さえつける。

 壊すのは形ではなく、忌むべき強制力だ。

 二度と人を束縛できないように、と念じて魔法を放つ。

 見た目では分からないが、かけた魔法が成功し、首輪に効力を失わせた実感がある。

 丁度開かれていたステータス画面を確認すると、新しい魔法が増えていた。


 解除(New)


 えっ!? まともな名前っ!?

 ほとんどが、ふざけた名前の魔法ばかりだったので、まともな名前の魔法を覚えると、逆にびっくりしてしまう。

 って…いやいや、これが普通だから! 驚いちゃダメだろ!

 久しぶりにツッコミを入れることができ、少し調子が戻る。


 よし、これでファリを探しに行けるぞ!

 問題は、どうやって見つけ出すか…だ。
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