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第12話 クリスマスがやってきた、そして……
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時間が……
私と翔太君の時間が止まった。
そう感じるほど私と翔太君は見つめ合っていた。
お互いに少しずつ、ほぼ無意識のうちに歩み寄っていたのだろう。
翔太君は手を伸ばせば届くところに立っていた。
みんなが賑やかに話す声が、笑い声が、遠くから聞こえる。
「……あの……さ」
随分経ってから(と私は感じた)翔太君が言った。
いつもの明るくて朗らかな様子とは違い、少し戸惑うような様子で。
「……うん……」
私もやっとのことで一言が言えた。
「祐実ちゃん……覚えてる……かな?」
予想していたとはいえ、翔太君からその言葉を聞いた瞬間、文字通り心臓が『ドクン!』と鳴った。
「……、……」
(どうしよう……言葉が出てこない……)
言葉を出そうと口を開けるのだけれども、出てこない。
言葉が出てこないのだ。
私は全身から汗を吹き出して固まってしまった。
「やっぱ覚えてないよね……随分前で小さい時のことだし……変なこと言ってごめんね」
翔太君は頭をかきながらおそらく精一杯であろう笑顔を見せてくれていた。
(違うの……覚えてる……私覚えてるよ……なのに……)
そして翔太君はその笑顔を寂しそうに曇らせながら私から視線を逸した。
(あ……私……翔太君を傷つけちゃった……だめ……!)
ガシッ!
相変わらず言葉は出てこない。
言葉より先に体が動いた。
みんなのところへ戻ろうと半身を翻した翔太君の腕を、私は両手で掴んだ。
ギュッと強く。
うつむきながら。
ギュッとつむった目を開けて立ち止まった翔太君の足を見た。
「……祐実ちゃん……」
翔太くんの声が上から聞こえる。
「あ……あのね……私……」
「……うん……」
「覚えてるよ……ていうか思い出したの……小さい頃……小2のときに翔太君に会ってたこと……」
「そうなんだ……!」
「うん……なのに翔太君が転校してきた時にすぐ思い出せなくて……忘れちゃってて……ごめんね」
「ううん、そんなことないよ。ありがとう、思い出してくれて」
(そんな……『ありがとう』なんて言ってもらう資格は私には……)
私は顔を上げようとした。
顔を上げて、翔太君の目を見て『ありがとう』って言いたかった。
『私のことなんかを覚えてくれていてありがとう』
って言いたかった。
でも途中で固まってしまった。
どうしても顔を上げられない。
翔太君と目を合わせるのが怖い。
と、その時……。
私の両肩にそっと手が載せられた。
(……!)
私はハッとばかりに思わず顔を上げた。
翔太君が穏やかで、優しくて、そして心持ち照れているような笑顔で私を見てくれていた。
ぶわっ!
(……え!?)
いきなり私の目に涙が溢れてきた。
(なんで……?こんな……こんなことで泣いたりしたら……翔太君を困らせちゃう……!)
「え……?」
翔太君が驚いて小さくつぶやいた。
「あ、あれぇーーど、どうしたのかなぁ……ほんと変だよねぇ私って……あははは……」
私は涙を拭いながら必死で笑った。
いつもの、おちゃらけて、ただの能天気女子の私に見えるように。
梨絵や茉美、瑠花みたいに可愛くもない、翔太君がときめくようなところなんて何一つない、気安い友達女子に見えるように。
そうすれば翔太君を困らせてしまうこともない。
私の気持ちは、翔太君が好きというこの気持ちは伝わらないほうがいい。
「なんか……驚かせちゃったかな……」
まだ驚きの名残がある表情で翔太君が言った。
「ううん、そんなことないよ!私だってほらいわゆる多感なお年頃だからさクリスマスだしこんなこともあるってあははは!」
私は早口でまくし立てた。
(ここは私の唯一の長所『元気パワー』で乗り切るぞ!)
「そ、そうなんだ……てっきり……」
ぐぅーーーー……。
「「……!」」
(私じゃない……よね?私だったら死んじゃう!)
「あ、ごめーーん。俺今日はまだほとんど食ってなくてさぁーー」
翔太君のその言葉を聞いて、張り詰めていた私の気持ちが一気に緩んだ。
「……あは……あはははは!」
(よかったーー私じゃなかったーー!)
「あは……あははは……」
さすがの翔太君も少し恥ずかしそうに笑っていた。
「じゃあ、私達もみんなのとこに行って食べよう。私もお腹ペコペコ!」
「そうだね!」
そして私と翔太君は、お互いに笑い合ういつもの二人に戻った。
(やっぱり私達はこれくらいがちょうどいいんだ)
そう思いながら隣の翔太君と笑顔を交わした。
(うん、私達はいい友達!)
そう思って私は安心した。
けど、ただ一つ、今までと違うところがあったことを、後日知ることになった。
「祐実ったらさあ、もうしっかり小谷君の手を握って『絶対に離さないぞ!』オーラを発してたよねぇ」
梨絵にそう聞かされて、私は赤に青にと表情を目まぐるしく変化させることになった。
(ああ、もうどうなっちゃうの、私達!)
そうは思いながらも、やっぱり楽しい高校生活。
私は、部屋の机に頬杖をついて窓の外を眺めながら、これからの高校生活で起こるであろう出来事、そしてその先のことをぼんやりと考えた。
そして気持ちはいつしか翔太君のことに。
(翔太君は高校を卒業した後はどうするんだろう?やっぱり進学かな……野球が強い大学とか)
そして私は……。
漠然と進学をとは思っているが、その先のこととなると全く考えていない。
(今度、翔太君と相談してみよう)
私は、相談相手に梨絵たちよりも先に翔太君が思い浮かんだことを疑問にも思わなくなっていた。
あたかも、これからの人生を翔太君とともに歩んでいくことが決まっているかのように。
――――おわり――――
※お読みいただき、ありがとうございました!
私と翔太君の時間が止まった。
そう感じるほど私と翔太君は見つめ合っていた。
お互いに少しずつ、ほぼ無意識のうちに歩み寄っていたのだろう。
翔太君は手を伸ばせば届くところに立っていた。
みんなが賑やかに話す声が、笑い声が、遠くから聞こえる。
「……あの……さ」
随分経ってから(と私は感じた)翔太君が言った。
いつもの明るくて朗らかな様子とは違い、少し戸惑うような様子で。
「……うん……」
私もやっとのことで一言が言えた。
「祐実ちゃん……覚えてる……かな?」
予想していたとはいえ、翔太君からその言葉を聞いた瞬間、文字通り心臓が『ドクン!』と鳴った。
「……、……」
(どうしよう……言葉が出てこない……)
言葉を出そうと口を開けるのだけれども、出てこない。
言葉が出てこないのだ。
私は全身から汗を吹き出して固まってしまった。
「やっぱ覚えてないよね……随分前で小さい時のことだし……変なこと言ってごめんね」
翔太君は頭をかきながらおそらく精一杯であろう笑顔を見せてくれていた。
(違うの……覚えてる……私覚えてるよ……なのに……)
そして翔太君はその笑顔を寂しそうに曇らせながら私から視線を逸した。
(あ……私……翔太君を傷つけちゃった……だめ……!)
ガシッ!
相変わらず言葉は出てこない。
言葉より先に体が動いた。
みんなのところへ戻ろうと半身を翻した翔太君の腕を、私は両手で掴んだ。
ギュッと強く。
うつむきながら。
ギュッとつむった目を開けて立ち止まった翔太君の足を見た。
「……祐実ちゃん……」
翔太くんの声が上から聞こえる。
「あ……あのね……私……」
「……うん……」
「覚えてるよ……ていうか思い出したの……小さい頃……小2のときに翔太君に会ってたこと……」
「そうなんだ……!」
「うん……なのに翔太君が転校してきた時にすぐ思い出せなくて……忘れちゃってて……ごめんね」
「ううん、そんなことないよ。ありがとう、思い出してくれて」
(そんな……『ありがとう』なんて言ってもらう資格は私には……)
私は顔を上げようとした。
顔を上げて、翔太君の目を見て『ありがとう』って言いたかった。
『私のことなんかを覚えてくれていてありがとう』
って言いたかった。
でも途中で固まってしまった。
どうしても顔を上げられない。
翔太君と目を合わせるのが怖い。
と、その時……。
私の両肩にそっと手が載せられた。
(……!)
私はハッとばかりに思わず顔を上げた。
翔太君が穏やかで、優しくて、そして心持ち照れているような笑顔で私を見てくれていた。
ぶわっ!
(……え!?)
いきなり私の目に涙が溢れてきた。
(なんで……?こんな……こんなことで泣いたりしたら……翔太君を困らせちゃう……!)
「え……?」
翔太君が驚いて小さくつぶやいた。
「あ、あれぇーーど、どうしたのかなぁ……ほんと変だよねぇ私って……あははは……」
私は涙を拭いながら必死で笑った。
いつもの、おちゃらけて、ただの能天気女子の私に見えるように。
梨絵や茉美、瑠花みたいに可愛くもない、翔太君がときめくようなところなんて何一つない、気安い友達女子に見えるように。
そうすれば翔太君を困らせてしまうこともない。
私の気持ちは、翔太君が好きというこの気持ちは伝わらないほうがいい。
「なんか……驚かせちゃったかな……」
まだ驚きの名残がある表情で翔太君が言った。
「ううん、そんなことないよ!私だってほらいわゆる多感なお年頃だからさクリスマスだしこんなこともあるってあははは!」
私は早口でまくし立てた。
(ここは私の唯一の長所『元気パワー』で乗り切るぞ!)
「そ、そうなんだ……てっきり……」
ぐぅーーーー……。
「「……!」」
(私じゃない……よね?私だったら死んじゃう!)
「あ、ごめーーん。俺今日はまだほとんど食ってなくてさぁーー」
翔太君のその言葉を聞いて、張り詰めていた私の気持ちが一気に緩んだ。
「……あは……あはははは!」
(よかったーー私じゃなかったーー!)
「あは……あははは……」
さすがの翔太君も少し恥ずかしそうに笑っていた。
「じゃあ、私達もみんなのとこに行って食べよう。私もお腹ペコペコ!」
「そうだね!」
そして私と翔太君は、お互いに笑い合ういつもの二人に戻った。
(やっぱり私達はこれくらいがちょうどいいんだ)
そう思いながら隣の翔太君と笑顔を交わした。
(うん、私達はいい友達!)
そう思って私は安心した。
けど、ただ一つ、今までと違うところがあったことを、後日知ることになった。
「祐実ったらさあ、もうしっかり小谷君の手を握って『絶対に離さないぞ!』オーラを発してたよねぇ」
梨絵にそう聞かされて、私は赤に青にと表情を目まぐるしく変化させることになった。
(ああ、もうどうなっちゃうの、私達!)
そうは思いながらも、やっぱり楽しい高校生活。
私は、部屋の机に頬杖をついて窓の外を眺めながら、これからの高校生活で起こるであろう出来事、そしてその先のことをぼんやりと考えた。
そして気持ちはいつしか翔太君のことに。
(翔太君は高校を卒業した後はどうするんだろう?やっぱり進学かな……野球が強い大学とか)
そして私は……。
漠然と進学をとは思っているが、その先のこととなると全く考えていない。
(今度、翔太君と相談してみよう)
私は、相談相手に梨絵たちよりも先に翔太君が思い浮かんだことを疑問にも思わなくなっていた。
あたかも、これからの人生を翔太君とともに歩んでいくことが決まっているかのように。
――――おわり――――
※お読みいただき、ありがとうございました!
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