潮待ち

凛ちゃん

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ひとりは、寂しいから

三話

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それから、間も無くして、わたしは、小学生になった。
学校に、由美ちゃんのお母さんが訪ねて来た。
由美ちゃんのお母さんは、わたしに、
何でうちの由美が死んで、あんただけ生きてるのよ!と、わたしを突き飛ばした。
その日から、わたしは、生きていてはいけないのだと、思う様になった。

しかし、大人に、なったいまなら、わかる。
普通の、大人なら、身体の弱かった娘の側に、自分を犠牲にしてずっと居てくれた友達に、
有難う、
と、言うべきだ、と。
由美ちゃんのお母さんは間違っている。母も。
そう、恐らく、心を病んでしまったのだ。
それから、わたしは、この、由美ちゃんのお母さんに、呼び出され続けるのだ。

そうして、ほどなくして、父が発病する。
わたしの、世界の総てだった父が、逝くまで、僅か一年だった。

父の、通夜で、夜中、何故か、目が覚めていたのは、わたしだけ。
オレンジ色の光に、廻し灯篭の光がきらきらと影を作る。
もう、冬という秋の終わりの真夜中は、生暖かく、寝苦しい。
わたしは、横たわる父の隣から離れなかった。
母に、白いセーターと、真っ赤なスラックスをはかされていた。
黒い、ワンピースだって、あるのに。
わたしは、黙ってそれを、着ていた。
途絶えた線香。
すぐさま、長く太い線香に火を点ける。
蝋燭の火は、風もないのに、ふうっと消えた。
線香を持つ、わたしの耳元に、
ざまあみろ!
お前の、一番大事なひとを、お前の代わりに連れて行く。
きゃはははははは、、、
気狂いじみた笑い声が響いた。

お父さんは、わたしのかわりに、由美ちゃんが連れて行ったのだ、と、確信した。

わたしは、その日から、只管、あの世を希うおかしな子供になった。
友達も、出来なかった。
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