ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第1章 呼び合う魂

9. 逸る想い (レイ)

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君と出会って、君が私を受け入れてくれて、まだそこまで月日が経っていないのに、日ごとに増す君への執着はいったい何だろう?

私以外の人物にも最近は感情を表に出すことが多くなってきて、喜ばしいことのはずなのに、私の胸中は穏やかではない。


ーー私だけを見ていてほしい。

ーー私だけに笑いかけて。

ーー泣くのは私の腕の中で。

ーーずっとそばにいてほしい。


君への溢れる感情に溺れて、どうにかなってしまいそうだ。
君は気付いているだろうか?
この私の狂おしい程の感情に。
どうか私を恐れないで。
もう君なしではいられない。

「ユーリ。君を愛している・・・」











「それで、話とは何かな?バスティード師団長?」

マティス魔導士副団長と二人になった会議室で彼が俺に尋ねてくる。

「あっ、えぇ・・・。その・・・。今年の新人のことなんですが・・・」

「?」

「そちらの新人のユーリィ・ブランシュについて。少し本人と話がしたくて・・・。彼はいつも仕事終わりには宿舎に戻っているのでしょうか?」

「・・・ユーリィ?彼がどうかした?」

「いや、彼がどうということではなく、俺が彼に興味があって、その・・・」

「!?バスティード師団長!まさか、あの子に手を出すつもりなの?」

「!?手を出す!?っていや、いきなりそうじゃなく、ただ話をしたくて・・・」

俺は、彼の言葉に少し動揺しながらもここで退くわけにもいかず、真摯な態度でマティス魔導士副団長に向き合う。

「ふ~ん?貴方がユーリィに興味をね・・・。その誰もが目を惹く容姿に、若くして高い地位についたにも関わらず、浮いた噂の一つもない。力だけをただ鍛えて、他に目もくれなかった貴方がそんなに誰かに興味を持った姿は初めて見るけど・・・。ところで、セリエ団長ではなく何故僕に?」

「それは、先程の顔合わせの際に、少しの掛け合いでしたが同じ魔導士というだけでなく、他の新人たちに比べてマティス副団長と彼との間の距離が近く感じられたので、もしや貴方であれば彼の事をより知っているのでは、と思い声をかけさせてもらいました」

「へぇ、よく見ているね。そう、ユーリィとは彼が魔法学園に入学した当時からの仲でね。先輩後輩ではあるものの、歳も離れているからどちらかというと僕は保護者に近い感覚でいる。さっきも言ったけど、彼は少しおっちょこちょいなところがあって、そのくせ他人よりも探究心が旺盛なもんだから、危なっかしくて目が離せない。って言っても、もう彼も大人の仲間入りなんだから僕がいつまでも保護者感覚でいるのもどうかとは思うのだけど。どうも本人はあの可愛い容姿のくせに、自己評価が低いもんだから、危機管理がなってなくてねぇ。・・・だから余計に彼には遊び感覚で手を出してはほしくないんだけど・・・。バスティード師団長は、本気なの?」

「彼は俺がずっと求めていた唯一です。まだお互いを知りませんが、俺は彼に認めてもらって、誰よりも彼のそばにいたいんです」

「?・・・まぁ、そこまで言うなら僕は何も言わないけど、あくまでどうなるかはユーリィ次第だから。彼を泣かすような真似をするなら例えバスティード師団長とはいえ容赦はしないよ」

彼の今までにない鋭い視線が俺を捉える。
俺は気持ちを落ち着かせ、その目を真正面から受け止めた。

「彼の気持ちを蔑ろにはしません」

「うん。そういう事なら、ユーリィはいつも仕事が終わると西の街にある国立魔法図書館に行くのが最近の日課になってるらしいから、今日はちょっと早いけど恐らくそこの王宮歴史書室に今日もいるんじゃないかな?」

マティス魔導士副団長は、その場の空気を変えるようにニコッと笑い、そう教えてくれた。

(西の街の国立魔法図書館・・・)

俺は目的地が決まり、マティス魔導士副団長に礼を言ってその場を後にする。


向かう足は今までになく軽快だ。
顔合わせの時の歓喜の鼓動の響きが、再び俺の体を駆け巡る。

(ユーリ。早く会いたい・・・)

俺は狂おしい程に彼を求める心を胸に、他には目もくれず国立魔法図書館へと急ぎ駆け出して行った。



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