10 / 66
第1章 呼び合う魂
9. 逸る想い (レイ)
しおりを挟む
≠
君と出会って、君が私を受け入れてくれて、まだそこまで月日が経っていないのに、日ごとに増す君への執着はいったい何だろう?
私以外の人物にも最近は感情を表に出すことが多くなってきて、喜ばしいことのはずなのに、私の胸中は穏やかではない。
ーー私だけを見ていてほしい。
ーー私だけに笑いかけて。
ーー泣くのは私の腕の中で。
ーーずっとそばにいてほしい。
君への溢れる感情に溺れて、どうにかなってしまいそうだ。
君は気付いているだろうか?
この私の狂おしい程の感情に。
どうか私を恐れないで。
もう君なしではいられない。
「ユーリ。君を愛している・・・」
「それで、話とは何かな?バスティード師団長?」
マティス魔導士副団長と二人になった会議室で彼が俺に尋ねてくる。
「あっ、えぇ・・・。その・・・。今年の新人のことなんですが・・・」
「?」
「そちらの新人のユーリィ・ブランシュについて。少し本人と話がしたくて・・・。彼はいつも仕事終わりには宿舎に戻っているのでしょうか?」
「・・・ユーリィ?彼がどうかした?」
「いや、彼がどうということではなく、俺が彼に興味があって、その・・・」
「!?バスティード師団長!まさか、あの子に手を出すつもりなの?」
「!?手を出す!?っていや、いきなりそうじゃなく、ただ話をしたくて・・・」
俺は、彼の言葉に少し動揺しながらもここで退くわけにもいかず、真摯な態度でマティス魔導士副団長に向き合う。
「ふ~ん?貴方がユーリィに興味をね・・・。その誰もが目を惹く容姿に、若くして高い地位についたにも関わらず、浮いた噂の一つもない。力だけをただ鍛えて、他に目もくれなかった貴方がそんなに誰かに興味を持った姿は初めて見るけど・・・。ところで、セリエ団長ではなく何故僕に?」
「それは、先程の顔合わせの際に、少しの掛け合いでしたが同じ魔導士というだけでなく、他の新人たちに比べてマティス副団長と彼との間の距離が近く感じられたので、もしや貴方であれば彼の事をより知っているのでは、と思い声をかけさせてもらいました」
「へぇ、よく見ているね。そう、ユーリィとは彼が魔法学園に入学した当時からの仲でね。先輩後輩ではあるものの、歳も離れているからどちらかというと僕は保護者に近い感覚でいる。さっきも言ったけど、彼は少しおっちょこちょいなところがあって、そのくせ他人よりも探究心が旺盛なもんだから、危なっかしくて目が離せない。って言っても、もう彼も大人の仲間入りなんだから僕がいつまでも保護者感覚でいるのもどうかとは思うのだけど。どうも本人はあの可愛い容姿のくせに、自己評価が低いもんだから、危機管理がなってなくてねぇ。・・・だから余計に彼には遊び感覚で手を出してはほしくないんだけど・・・。バスティード師団長は、本気なの?」
「彼は俺がずっと求めていた唯一です。まだお互いを知りませんが、俺は彼に認めてもらって、誰よりも彼のそばにいたいんです」
「?・・・まぁ、そこまで言うなら僕は何も言わないけど、あくまでどうなるかはユーリィ次第だから。彼を泣かすような真似をするなら例えバスティード師団長とはいえ容赦はしないよ」
彼の今までにない鋭い視線が俺を捉える。
俺は気持ちを落ち着かせ、その目を真正面から受け止めた。
「彼の気持ちを蔑ろにはしません」
「うん。そういう事なら、ユーリィはいつも仕事が終わると西の街にある国立魔法図書館に行くのが最近の日課になってるらしいから、今日はちょっと早いけど恐らくそこの王宮歴史書室に今日もいるんじゃないかな?」
マティス魔導士副団長は、その場の空気を変えるようにニコッと笑い、そう教えてくれた。
(西の街の国立魔法図書館・・・)
俺は目的地が決まり、マティス魔導士副団長に礼を言ってその場を後にする。
向かう足は今までになく軽快だ。
顔合わせの時の歓喜の鼓動の響きが、再び俺の体を駆け巡る。
(ユーリ。早く会いたい・・・)
俺は狂おしい程に彼を求める心を胸に、他には目もくれず国立魔法図書館へと急ぎ駆け出して行った。
君と出会って、君が私を受け入れてくれて、まだそこまで月日が経っていないのに、日ごとに増す君への執着はいったい何だろう?
私以外の人物にも最近は感情を表に出すことが多くなってきて、喜ばしいことのはずなのに、私の胸中は穏やかではない。
ーー私だけを見ていてほしい。
ーー私だけに笑いかけて。
ーー泣くのは私の腕の中で。
ーーずっとそばにいてほしい。
君への溢れる感情に溺れて、どうにかなってしまいそうだ。
君は気付いているだろうか?
この私の狂おしい程の感情に。
どうか私を恐れないで。
もう君なしではいられない。
「ユーリ。君を愛している・・・」
「それで、話とは何かな?バスティード師団長?」
マティス魔導士副団長と二人になった会議室で彼が俺に尋ねてくる。
「あっ、えぇ・・・。その・・・。今年の新人のことなんですが・・・」
「?」
「そちらの新人のユーリィ・ブランシュについて。少し本人と話がしたくて・・・。彼はいつも仕事終わりには宿舎に戻っているのでしょうか?」
「・・・ユーリィ?彼がどうかした?」
「いや、彼がどうということではなく、俺が彼に興味があって、その・・・」
「!?バスティード師団長!まさか、あの子に手を出すつもりなの?」
「!?手を出す!?っていや、いきなりそうじゃなく、ただ話をしたくて・・・」
俺は、彼の言葉に少し動揺しながらもここで退くわけにもいかず、真摯な態度でマティス魔導士副団長に向き合う。
「ふ~ん?貴方がユーリィに興味をね・・・。その誰もが目を惹く容姿に、若くして高い地位についたにも関わらず、浮いた噂の一つもない。力だけをただ鍛えて、他に目もくれなかった貴方がそんなに誰かに興味を持った姿は初めて見るけど・・・。ところで、セリエ団長ではなく何故僕に?」
「それは、先程の顔合わせの際に、少しの掛け合いでしたが同じ魔導士というだけでなく、他の新人たちに比べてマティス副団長と彼との間の距離が近く感じられたので、もしや貴方であれば彼の事をより知っているのでは、と思い声をかけさせてもらいました」
「へぇ、よく見ているね。そう、ユーリィとは彼が魔法学園に入学した当時からの仲でね。先輩後輩ではあるものの、歳も離れているからどちらかというと僕は保護者に近い感覚でいる。さっきも言ったけど、彼は少しおっちょこちょいなところがあって、そのくせ他人よりも探究心が旺盛なもんだから、危なっかしくて目が離せない。って言っても、もう彼も大人の仲間入りなんだから僕がいつまでも保護者感覚でいるのもどうかとは思うのだけど。どうも本人はあの可愛い容姿のくせに、自己評価が低いもんだから、危機管理がなってなくてねぇ。・・・だから余計に彼には遊び感覚で手を出してはほしくないんだけど・・・。バスティード師団長は、本気なの?」
「彼は俺がずっと求めていた唯一です。まだお互いを知りませんが、俺は彼に認めてもらって、誰よりも彼のそばにいたいんです」
「?・・・まぁ、そこまで言うなら僕は何も言わないけど、あくまでどうなるかはユーリィ次第だから。彼を泣かすような真似をするなら例えバスティード師団長とはいえ容赦はしないよ」
彼の今までにない鋭い視線が俺を捉える。
俺は気持ちを落ち着かせ、その目を真正面から受け止めた。
「彼の気持ちを蔑ろにはしません」
「うん。そういう事なら、ユーリィはいつも仕事が終わると西の街にある国立魔法図書館に行くのが最近の日課になってるらしいから、今日はちょっと早いけど恐らくそこの王宮歴史書室に今日もいるんじゃないかな?」
マティス魔導士副団長は、その場の空気を変えるようにニコッと笑い、そう教えてくれた。
(西の街の国立魔法図書館・・・)
俺は目的地が決まり、マティス魔導士副団長に礼を言ってその場を後にする。
向かう足は今までになく軽快だ。
顔合わせの時の歓喜の鼓動の響きが、再び俺の体を駆け巡る。
(ユーリ。早く会いたい・・・)
俺は狂おしい程に彼を求める心を胸に、他には目もくれず国立魔法図書館へと急ぎ駆け出して行った。
0
あなたにおすすめの小説
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
11月にアンダルシュノベルズ様から出版されます!
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる