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第4章 秘められしもの
38. 魔封保全者《シープエンサー》 (レイ)
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「そう、お前の愛しいユーリくんの情報を持ってきたのさ。お前が気になって気になって仕方がない様子だったからな。これでもなるべく早くに調べた方だぞ」
「ありがとう、リオネル。すまない、俺個人のことで無理をさせてしまったようだな」
俺は素直に頭を下げ、改めてリオネルに感謝を伝える。
「まったくだ。国中を探しても王太子である俺を調べ物に使うなんてお前くらいのものだぞ?」
リオネルは楽しそうな表情で俺を見ながら話を続ける。
「フフッ。まぁ、滅多に俺を頼らない親友からの頼みとあらば動かないという選択肢はないがな・・・。とはいえ、今回は俺が調べられる範囲の内容だから、父上ともまだ話が出来ていないし、これ以上になると少し時間が必要だ」
「あぁ、ありがとう。わかる範囲でも構わない。ほんの些細なことでもユーリに関わることは知っておきたいんだ」
俺は脳裏に柔らかく微笑むユーリの姿を思い浮かべる。
「おっと、いきなり惚気か?普段はクールな男が恋をするとこうなるのか。フムフム、なるほど、なるほど?」
ユーリのことを考えていた俺が無意識に相好を崩すのを見て、クククッとリオネルは肩を震わせている。
「茶化すな!・・・とにかく話を聞かせてくれ」
そう言って俺は居た堪れずに、リオネルから視線を外す。普段からリオネルの揶揄いに慣れている俺とはいえ、ユーリの事となるとどうもいつもの調子が出ない。そんな俺を見て、リオネルはいつも以上に楽しそうだ。
「アハハハッ。すまん、すまん。うん・・・・・。では単刀直入に言う。ユーリィ・ブランシュはこの国において【魔封保全者】に登録されている。・・・今現在も、な」
「っ!?」
俺は最後の言葉にすぐさま反応する。
(今現在も・・・だと?)
「しかも、どうやら極秘扱いで本人にも通知はせず、知っているのは王宮内でも極一部のものだけのようだ。誰がいつどうしてそのような措置をしたかは今のところわからないが、この極秘扱いについてはここ最近の話ではなく、彼がまだ魔術学園在学初期の頃からずっと行われてきた事らしい。残念ながら、俺が見た資料にはそれ以上の詳しい事は書かれていなかった」
リオネルはそこまでを一気に話をして、俺を気遣わしげな表情で見つめる。俺はというと、たった今もたらされた情報を頭の中で反芻していた。
【魔封保全者】とは、何らかの理由で魔力を封印している者を表す。
封印というと、とても大層な事に聞こえるが、多くはまだ魔力制御の未熟な幼い頃に、その者自身が強すぎる魔力を暴走させないよう、ある程度の魔力を特殊な魔道具に封じ込め、成長とともに解放できるようにするもので、強い魔力を持って生まれやすい貴族の間ではよくある措置でもある。
特に王宮に仕える魔導士にとってそれ程驚くものではないのだが、その封印した魔力を他の者に悪用されないようにする為、必ず魔力を封印する際は王宮に登録をし、そこで一人一人にあう特殊な魔道具をもらいそこに魔力を封印するのが常である。
そうして、自分たちにあった魔道具を常に身につけておき、封印を解除する際は王宮にてその魔道具と対になる魔道具を使って行う。
解除後は【魔封保全者】登録からその者の名前がリストから削除されるというのが、一般的な流れなのだが・・・。
(変だ・・・)
まず俺が疑問に思ったのは、【魔封保全者】が持つべき魔道具をユーリが所持していないというのが一つ。魔道具は常に身につけていなければならない為、ピアスやネックレス、腕輪や指輪などの形で対象者たちは身につけているのだが、今までユーリと共にいて彼がそのような魔道具を身につけている姿を見たことがない。
もちろん、服の下や全てをチェックしたわけではないので一概に魔道具を身につけていないとは言えないが、リオネルが話してくれた極秘事項、それも本人にもわからないように【魔封保全者】に登録する、などという行為は前代未聞だ。誰がいったいどのようにして、そのような措置を取ったのか?
そして何より最大の疑問は、王宮専属魔導士になった現在もその措置が進行中だということだ。
曲がりなりにも、王宮に仕える魔導士。力のコントロールや技術力は一般的に魔法を扱える者より断然高い。なので王宮専属魔導士に選ばれた者で、【魔封保全者】のリストに載っているものはいない。【魔封保全者】だった者も、王宮専属魔導士になる前に皆、封印を解除してリストから外れるからだ。
(・・・なのに、ユーリはいまだ【魔封保全者】として登録されている。・・・・・・やはり、ユーリが王宮専属魔導士に選ばれたのには何者かの思惑があってのことなのか?)
俺は目を閉じ、一人の人物を思い描く。おそらく俺の予想が正しければ、マティス副団長、彼がキーパーソンの一人であるのは間違いないだろう。
彼はいったいユーリの何を知って、何を隠しているのか・・・?
そしてこの国は、ユーリを極秘扱いにしてどうするつもりなのか?
今どれだけ考えようが、答えが出ないとわかっていながらもモヤモヤする感情を抑えることが難しい。
「レイン」
「ッ!?」
自然と眉間に皺が寄っていたようで、リオネルの声でハッと我に帰る。
「俺もこのような措置を聞いたのは初めてで、まだ全てを把握できていない。一度時間がある際に父上にそれとなく聞いてみよう。だからレイン、そんな顔をするな」
リオネルは、正面から力強い目で俺を見て、俺を安心させるように言葉を発する。
「リオネル・・・」
「そんな顔をしていると・・・。見た目早く老けるぞ」
「なっ!?」
俺の反応で、クククッとまた楽しそうに肩を揺らす友人を唖然と見て、俺は徐々に肩の力を抜く。小さく息を吐き、モヤモヤしていた気持ちが少し緩和された。リオネルは、本当にその場の空気というものを変えることに長けている。
「フフッ。本当にお前は愛しいユーリくんのことになると、普段の仕事ぶりからは想像できん変貌ぶりだな。今のお前の姿を騎士団の奴らに是非見せてやりたい」
「俺はもともとこうだ。お前はよく知っているだろう」
「いやいや、今のお前はさらに新鮮だぞ。ますます愛しいユーリくんに会いたくなるじゃないか」
「おい、さっきからその愛しいユーリくんというのは・・・」
コン、コン。
俺のせいで重かった空気をリオネルが切り替え、二人でいつものように戯れていたところ、不意に扉を叩く音が部屋の中に響いてきた。
「ありがとう、リオネル。すまない、俺個人のことで無理をさせてしまったようだな」
俺は素直に頭を下げ、改めてリオネルに感謝を伝える。
「まったくだ。国中を探しても王太子である俺を調べ物に使うなんてお前くらいのものだぞ?」
リオネルは楽しそうな表情で俺を見ながら話を続ける。
「フフッ。まぁ、滅多に俺を頼らない親友からの頼みとあらば動かないという選択肢はないがな・・・。とはいえ、今回は俺が調べられる範囲の内容だから、父上ともまだ話が出来ていないし、これ以上になると少し時間が必要だ」
「あぁ、ありがとう。わかる範囲でも構わない。ほんの些細なことでもユーリに関わることは知っておきたいんだ」
俺は脳裏に柔らかく微笑むユーリの姿を思い浮かべる。
「おっと、いきなり惚気か?普段はクールな男が恋をするとこうなるのか。フムフム、なるほど、なるほど?」
ユーリのことを考えていた俺が無意識に相好を崩すのを見て、クククッとリオネルは肩を震わせている。
「茶化すな!・・・とにかく話を聞かせてくれ」
そう言って俺は居た堪れずに、リオネルから視線を外す。普段からリオネルの揶揄いに慣れている俺とはいえ、ユーリの事となるとどうもいつもの調子が出ない。そんな俺を見て、リオネルはいつも以上に楽しそうだ。
「アハハハッ。すまん、すまん。うん・・・・・。では単刀直入に言う。ユーリィ・ブランシュはこの国において【魔封保全者】に登録されている。・・・今現在も、な」
「っ!?」
俺は最後の言葉にすぐさま反応する。
(今現在も・・・だと?)
「しかも、どうやら極秘扱いで本人にも通知はせず、知っているのは王宮内でも極一部のものだけのようだ。誰がいつどうしてそのような措置をしたかは今のところわからないが、この極秘扱いについてはここ最近の話ではなく、彼がまだ魔術学園在学初期の頃からずっと行われてきた事らしい。残念ながら、俺が見た資料にはそれ以上の詳しい事は書かれていなかった」
リオネルはそこまでを一気に話をして、俺を気遣わしげな表情で見つめる。俺はというと、たった今もたらされた情報を頭の中で反芻していた。
【魔封保全者】とは、何らかの理由で魔力を封印している者を表す。
封印というと、とても大層な事に聞こえるが、多くはまだ魔力制御の未熟な幼い頃に、その者自身が強すぎる魔力を暴走させないよう、ある程度の魔力を特殊な魔道具に封じ込め、成長とともに解放できるようにするもので、強い魔力を持って生まれやすい貴族の間ではよくある措置でもある。
特に王宮に仕える魔導士にとってそれ程驚くものではないのだが、その封印した魔力を他の者に悪用されないようにする為、必ず魔力を封印する際は王宮に登録をし、そこで一人一人にあう特殊な魔道具をもらいそこに魔力を封印するのが常である。
そうして、自分たちにあった魔道具を常に身につけておき、封印を解除する際は王宮にてその魔道具と対になる魔道具を使って行う。
解除後は【魔封保全者】登録からその者の名前がリストから削除されるというのが、一般的な流れなのだが・・・。
(変だ・・・)
まず俺が疑問に思ったのは、【魔封保全者】が持つべき魔道具をユーリが所持していないというのが一つ。魔道具は常に身につけていなければならない為、ピアスやネックレス、腕輪や指輪などの形で対象者たちは身につけているのだが、今までユーリと共にいて彼がそのような魔道具を身につけている姿を見たことがない。
もちろん、服の下や全てをチェックしたわけではないので一概に魔道具を身につけていないとは言えないが、リオネルが話してくれた極秘事項、それも本人にもわからないように【魔封保全者】に登録する、などという行為は前代未聞だ。誰がいったいどのようにして、そのような措置を取ったのか?
そして何より最大の疑問は、王宮専属魔導士になった現在もその措置が進行中だということだ。
曲がりなりにも、王宮に仕える魔導士。力のコントロールや技術力は一般的に魔法を扱える者より断然高い。なので王宮専属魔導士に選ばれた者で、【魔封保全者】のリストに載っているものはいない。【魔封保全者】だった者も、王宮専属魔導士になる前に皆、封印を解除してリストから外れるからだ。
(・・・なのに、ユーリはいまだ【魔封保全者】として登録されている。・・・・・・やはり、ユーリが王宮専属魔導士に選ばれたのには何者かの思惑があってのことなのか?)
俺は目を閉じ、一人の人物を思い描く。おそらく俺の予想が正しければ、マティス副団長、彼がキーパーソンの一人であるのは間違いないだろう。
彼はいったいユーリの何を知って、何を隠しているのか・・・?
そしてこの国は、ユーリを極秘扱いにしてどうするつもりなのか?
今どれだけ考えようが、答えが出ないとわかっていながらもモヤモヤする感情を抑えることが難しい。
「レイン」
「ッ!?」
自然と眉間に皺が寄っていたようで、リオネルの声でハッと我に帰る。
「俺もこのような措置を聞いたのは初めてで、まだ全てを把握できていない。一度時間がある際に父上にそれとなく聞いてみよう。だからレイン、そんな顔をするな」
リオネルは、正面から力強い目で俺を見て、俺を安心させるように言葉を発する。
「リオネル・・・」
「そんな顔をしていると・・・。見た目早く老けるぞ」
「なっ!?」
俺の反応で、クククッとまた楽しそうに肩を揺らす友人を唖然と見て、俺は徐々に肩の力を抜く。小さく息を吐き、モヤモヤしていた気持ちが少し緩和された。リオネルは、本当にその場の空気というものを変えることに長けている。
「フフッ。本当にお前は愛しいユーリくんのことになると、普段の仕事ぶりからは想像できん変貌ぶりだな。今のお前の姿を騎士団の奴らに是非見せてやりたい」
「俺はもともとこうだ。お前はよく知っているだろう」
「いやいや、今のお前はさらに新鮮だぞ。ますます愛しいユーリくんに会いたくなるじゃないか」
「おい、さっきからその愛しいユーリくんというのは・・・」
コン、コン。
俺のせいで重かった空気をリオネルが切り替え、二人でいつものように戯れていたところ、不意に扉を叩く音が部屋の中に響いてきた。
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