ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第5章 友と仲間と

42. アランの家族 (ユーリ)

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俺がどうしたらいいのか混乱していると、今度は先程俺たちが入って来た扉から、若い男性が部屋に入って来た。

「あれ?まだ皆んな席についてないのか?っていうか、母さんその子めっちゃ困ってるっぽいけど?」

そう言われて、バッと俺を離したマリーさんは申し訳なさそうに慌てて俺に声をかける。

「あらっ!私ったら!ごめんなさい、ユーリィくん。つい変な癖が出ちゃって。大丈夫?ビックリしたわよね?ほんとにごめんなさい」

「い、いえ。大丈夫です。気になさらないで下さい。改めて今日はお世話になります」

俺は混乱した頭を即座に切り替えて、マリーさんに挨拶する。

「あぁ、やっぱり可愛いわぁ・・・ってダメダメ。ユーリィくん、お菓子をわざわざありがとう。後で皆んなで食べましょう。私はアランの母で、マリー。そして今入って来たのが長男のリック」

マリーさんが紹介してくれたアランのお兄さんは、ちょうど席についたところでこちらの声に反応して、手を振っている。

「よろしく」

「あっ、ユーリィ・ブランシュと言います。今日はお世話になります」

俺はお兄さんのリックさんに向かってお辞儀する。

「ははぁん。こりゃ、アランと母さんがメロメロになるのもわかるわ。二人とも似たもん同士だもんなぁ」

「っ!兄さん!!」

クククッと肩を揺らして笑うリックさんに、これまた珍しくアランが大きな声で叫ぶ。
いつもは冷静沈着なアラン。学園時代や今も、俺といる時はわりと感情を表に出すことも多いアランだけど、やはり家族の前だと、それ以上にいろんなアランを見ることが出来て俺も何だか嬉しくなる。

「さて、もうお父様もいらっしゃるから皆んな席について。アラン、ユーリィくんをそっちの席に案内して」

「はい。ユーリィ、こっち」

俺はアランに案内されて、アランの隣の席に着く。程なくして、スラリとした壮年の男性が部屋に入って来た。

「やぁ、皆んな揃ったようだな。ようこそ我がベルトラム家へ、ユーリィくん。私はこの家の主人で、エヴァン・ベルトラムという。いつも愚息がお世話になっているようだね。これからもよろしく頼む」

「は、はい!俺、いや僕の方こそアランくんにはお世話になっていて。今後ともよろしくお願いします!」

俺は、バッと椅子から立ち上がってエヴァンさんに挨拶をする。さすが一家の主人だけあって、存在感が違う。俺が少し圧倒されていると、豪快な笑い声が聞こえた。

「ハッハッハ。ユーリィくん、そんなに固くならずとも大丈夫。今日はゆっくりして行ってくれ。実は私も含め、家族皆んな君が来るのを楽しみにしていたんだ。なんたって、昔からあまり外での事を話さないアランが、実家に帰ってくるとやれ今日はユーリィとこれをした、あれをしたと嬉々として話題にするものでね。いったいどんな子かと・・・」

「っ!?父さんまで!僕はそこまでペラペラと話してない!」

アランがまた声を荒げて反論する。皆んな周りはニコニコ顔で、リックさんはニヤニヤしてるけど、微笑ましくアランを見つめている。

「フフッ。まぁ自分では気付かないものさ。それはさておき、ユーリィくんも座りたまえ。せっかくの料理だ。冷めないうちに頂こう」

まだ若干何かを言いたそうなアランだったが、エヴァンさんの合図で皆んなそれぞれ食事を開始する。

食事をしながらも、家族の話題は尽きず、アランはほとんど会話には参加していないが、話をしながらエヴァンさんや、マリーさんの人柄に触れ、俺はとても暖かい気持ちで食事を進めていった。

最後に、俺が買ってきたお菓子をお供にお茶をして皆んな一息つく。

「あぁ、やっぱりこの西街のお菓子は最高だわ。ありがとうユーリィくん」

お茶を飲みながらマリーさんがしみじみとそう呟いた。

「いえ、気に入って下さったなら良かったです。俺、仕事が終わったらいつも日課で国立魔法図書館へ行くんです。そこから近いのでまた今度お土産に持って来ますね」

俺がそう言って笑うと、マリーさんが目を輝かせて俺に向かって手を伸ばして来た。

「ユーリィくん、もう、うちの養子になる!?うちの息子二人ったら可愛いのかの字もないの!ユーリィくんみたいな子がいたら、毎日とってもウキウキなのに~」
「あっ。えっと・・・・・・」

俺が再びマリーさんの抱き着き攻撃を受けようとした瞬間、横から俺の腕がグイッとひかれる。すんでのところで攻撃を回避できた俺は腕を掴んでいる人物に目をやった。

「アラン」

「母さん、ユーリィがビックリするからダメだと言ったろ。それに今日は僕が呼んだんだ。今からはユーリィと僕の時間」

掴んだ腕をそのまま、アランはどうやらこのまま自室へと移動するつもりのようだ。

「あら、あらぁ?」

後ろでマリーさんがニコニコした顔で手を振っている。

「おい、いいの?このまま部屋に下がっちゃって」

「いい。我が家では良くあるから気にしない」

「気にしないって・・・」

(俺は気にするんだけど?)

一応それでも一言だけでもと、俺は部屋の皆さんに声をかける。

「あの!お食事とお茶ご馳走さまでした。すごく美味しくて楽しい時間をありがとうございました」

俺はなんとかそれだけ言うと、マリーさんは引き続きニコニコしながら手を振って、リックさんやエヴァンさんは微笑みながら、一つ頷いて見送ってくれた。それを後にして、アランはグングンと俺を二階へと連れて行き、一つの部屋の前で立ち止まった。


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