ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第5章 友と仲間と

44. 微かな変化 (ユーリ)

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「!!」

(あ・・・俺、今?)

俺を呼ぶアランの声で、ここが現実なのだと認識する。

「ユーリィ?」

(俺・・・今どうしたんだ?昼間の声といい、今の途中から突然流れ込んできた胸が苦しくなるような感情。これは、いったい・・・?)

手を自分の頬へと持っていくと、涙がまだ少し流れ落ちて指先に当たる。

・・・これは誰の?・・・誰の涙だ?

「ユーリィ!しっかりしろ!」

再度アランに声をかけられ、俺は今度こそアランに向き合った。

「っ・・・アラン」

「何があった?ユーリィ」

アランが険しい顔で俺に問いかける。

「何が・・・、ていうか、俺も何がなんだか。アランの言葉に、俺、すごく嬉しくて、そしたら急に涙が溢れてきて止まらなくなった。・・・そのあとは、よくわからない。・・・アラン、俺は何かおかしかった?」

自分で自分がよくわからない。幼い頃から、感情が揺さぶられるような夢は何度も見たことがある。大抵は目覚めたら夢の内容はすっかり忘れてしまっているのだが、確かに自分は夢の中で何かを強く感じていたという感覚だけは残っている。
でも、意識がある時にこんなことは初めてだ。

「昼間、幻聴が聞こえたと言っただろ」

「うん」

「その時、一瞬だったから見間違えたかと思った・・・。でも、今ははっきりそう見えた」

「見えたって・・・何が?」

俺が緊張しながらアランに聞くと、アランがズイッと顔を近づけて来る。

「目の色が、いつもと違う」

「・・・え?」

「まぁ、違うといっても遠くからはわからないくらい微妙な変化。いつものユーリィの茶色の目の中に金を散りばめたようなキラキラした光が見えた」

「キラキラした光?」

俺は無意識に周りをキョロキョロして、自分の目の色を確認しようとした。

「あぁ、今はもういつも通りだから見てもわからないぞ」

「そっか・・・」

アランに言われて、手を目元へと持っていく。俺は両目ともを手で覆い、少しだけ目を閉じる。特に違和感などなく今のところは自分でも異変は感じない。

「今までにこういった事は?何か、記憶が途切れたりとか」

「うん。ない・・・と思う。なんか改めてそう聞かれると自信ないけど、自分でわかる範囲ではないよ」

「そうか。それで、どこか身体に不調が出たりとかも?」

「うん、それは大丈夫!至ってどこも異常ないよ。俺、昔から身体だけは丈夫だから寝込んだことも一度もないし・・・あっ」

「ん?」

「あっいや、・・・その」

そういえば、つい最近医務室にお世話になったことがあったのを思い出した。あれはいったいどうしてそうなったのだったか?
同時にレイ様の心配そうな顔を思い出す。そう、確かあの日初めてレイ様に会って、そしてレイ様から・・・。

(ーーーーーっ!!)

ボン!と音が出るんじゃないかというくらい俺は自分で自分の顔が赤くなるのを感じる。

(ゔ~っ、こんな時にレイ様から告白された事を思い出すなんて)

「ユーリィ・・・。何か隠してるな?」

(ヒャッ!?)

いつもよりワントーン低い声がして、俺の顔はすぐさま赤から青に変化する。マズイ。今日はアランに絞られる覚悟で来たんだった。

「ユーリィ、言ったはずだ。君は感情がすぐ顔にでると。僕に隠し事ができるとでも?」

「ゔっ。別に隠し事ではないんだけど、今思い出して。そういえばこないだ一度だけ医務室のお世話になったなぁって」

「医務室に?具合が悪かったのか?」

「ううん。俺もよくわからないんだけど、急に頭が痛くなって気を失っちゃったみたい。それをレイ様・・・バスティード師団長が医務室に運んでくれたみたいで。でも目が覚めた時には何ともなくてさ。ちょっとした疲労かな?って」

「バスティード師団長が?」

「うん。それで、その・・・話が変わっちゃうんだけど、ちょうど名前が出たところで、前に言ってたバスティード師団長のこと、今話聞いてもらってもいい?」

そう俺が言った瞬間、アランは少しばかり目を見開いた。

とりあえず今俺の身に起きた事については、いったい何だったのかすぐに答えは出なさそうだし、目の事は確かに気になるけれど、今のところ俺自身身体のどこにも不具合はない。また気になる事があれば、今日団長に言われたように先輩や団長に相談してみるのも一つだろう。

となれば、せっかくこうしてアランのところに泊まりに来たんだし、時間を有意義に使いたいと思ったのだ。

「それは・・・別に構わないが。いいのか?」

今起きたことに対してすぐに対処しなくていいのか?とアランが今度は心配そうな目で俺を見ては確認してきた。

「うん。変に気を張ってても仕方がないし、確かに気になることは色々あるけど、今はほら?なんたって一人じゃないし?」

俺はさっきアランが言ってくれた家族のことに触れ、
ニヤリと口元を緩める。
アランも俺が言った意味がわかったようで、苦笑しながら一つ頷いた。

「わかった。じゃぁ聞く」

そう言うとアランは改めてクッションに落ち着く。俺はというと、自分から言っておきながらいざ話すとなると穴があったら入りたい!的な気分だったが、意を決してアランにレイ様について話し始めたのだった。

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