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第5章 友と仲間と
46. 王宮騎士団師団長 (レイ)
しおりを挟む「まず今後わかりやすいように、今回現れた魔法攻撃と物理攻撃に耐性のある魔獣をα《アルファ》とします。実際、我々が直接見ていないのではっきりしたことは言えませんが、耐性が両方にあるとはいえ、ある程度の攻撃効果はあるのでしょう。先程殿下がお話下さったようにその場にいた騎士からは、魔獣は傷を負いながらそれでも向かってきたと報告書にありました。傷を負わすことができるのであれば、必ずその魔獣のどこかに急所となる場所があるはずなので、そこを魔導士と騎士が集中的に攻撃すれば勝機はあるでしょう」
「おいおい、ちょっと待ってくれ」
セリエ団長の話の途中で、一人の男がヌッと立ち上がる。見るからに鍛え上げられた身体と温和そうな顔が印象的な第三師団長のオーブリー・ルコックだ。
ルコックはセリエ団長に声をかけて、すぐさまリオネルの方へと身体を向けて一礼する。
「殿下、話の途中ですが質問はよろしいですか?」
「構わない。私は総指揮の為、ここにいるが私に遠慮することなく、いつもの団長会議のように進めてくれ。もちろん、互いの言葉遣いも普段通りに」
そう言われてルコックは当然誰もが疑問に思うことを真っ先に口に出した。
「それじゃぁ失礼して。セリエ殿、今の話で魔獣の急所を狙えばいいって言うんでありゃぁ、隣国の騎士団ももちろんそうしていたんじゃぁないのか?通常の攻撃が効かなかったとしても、ある程度傷を負わせれたんなら、それこそ囲んで逃がさないようにして、今言ったように集中してやりゃぁ、殲滅できたんじゃぁないのか?」
セリエ団長は、ルコックの言葉を聞いて頷く。
「えぇ、問題はそこなのです。魔獣の急所といえば皆さんもご存知のように、頭、首、核(人でいう心臓)の三つです。それぞれの魔獣がこの三つの中の一つを急所として持っています。三分の一の確率ですが、通常の魔獣であれば少々手こずったとしてもこのどれかを狙って攻撃すれば殲滅もそう難しくはないでしょう。隣国の騎士団も、そう思いセオリー通り三つの急所を集中的に攻撃をしたそうです。ところが、驚くべきことに今回の魔獣α《アルファ》には、その急所攻撃が全くと言っていいほど効かなかったそうなのですよ」
「「!!」」
「「なっ!?」」
(・・・急所に攻撃が効かない?)
セリエ団長の最後の一言に皆一様に驚きを隠せないようで、苦虫を噛み潰したような表情をしている。そんな中、俺はふと嫌な胸騒ぎを覚える。
(まさか・・・・・・?)
俺の頭の中には、前世の記憶の一部が思い起こされていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って。なんかさらにややこしくなってるんだけど、セリエ団長のさっきの話じゃ、急所を集中的に攻撃すれば勝機はあるって言ってたけどそれって今の話と矛盾するんじゃ?」
少し慌てた様子で第四師団長のヴィンセント・オールストンが首をひねるように言う。アクアブルーの髪と目に、一般的に可愛いと言われるような容貌をしているが、一度ひとたび馬に乗れば先陣を切って突き進む熱い男でもある。
「いえ、急所を攻撃すれば良いというのは本当です。ただ、その急所が今回の魔獣α《アルファ》においてはセオリー通りではないということ。恐らくですが、急所は頭、首、核以外の身体のどこかに隠されていると思われます」
「急所が隠されている?」
「そんなことがありえるのか?」
疑問の声が上がる中、セリエ団長は近くに置いてあった一冊の本をとりあげた。
「これは、歴代の王宮専属魔導士の団長が受け継いできた国を脅かすあらゆる脅威について記された記録書です。これによると、はるか昔大陸に現れた魔獣の中に今回の魔獣α《アルファ》によく似た個体がいたことが記されています。その個体も当初急所を攻撃しても殲滅には至らず、戦いは長期に及んだそうですが、最終的に隠された急所を発見し、事なきを得たとあります」
「ん~、その記録書に出てくるやつに似てるから今回の魔獣α《アルファ》も急所が隠されている可能性が高いっていうのかい?」
腕を組みながら聞いてきたのは、深緑の髪にどこか飄々とした雰囲気を持つ第八師団長のルーカス・フォレットだ。
「はい、私としてはまず間違いないと思っています」
「う~ん・・・」
セリエ団長にそう言われると、皆これ以上追究することはしなかった。何しろ、実質この国トップの魔法力を持ち、大陸でも先を見通す力は随一とも言われている彼の意見には皆重きを置いているのだ。
ただそうなると、問題は・・・。
「となると、今回の魔獣α《アルファ》?だっけ?を倒す為には、そいつの身体のどこかに隠された急所を見つけて攻撃する必要があると思うんだけど、その見つけ方は何かわかっているの?」
そう尋ねるのは、紫の髪に眼鏡をかけた背の高いスラリとした容姿の第七師団長レスター・ウォルシュ。
そのウォルシュの質問に、セリエ団長は首を横に振って応える。
「いいえ、残念ながら今のところわかりません。ただ、記録書によると、どういう状況下でかはわかりませんがその魔獣の急所が光って見えるのだそうです」
(っ!!やはり、・・・・・・そうなのか?)
セリエ団長の言葉に、先程よりも胸のうちが騒つく。
(またアイツが・・・?いや・・・、まだそうと決まった訳じゃない。先走って心を乱すな)
俺は目を閉じてグッと拳を握り、自分の心のコントロールを行う。そうしている間にも、周りはそれぞれ思い思いに自分の考えを述べていた。
「バスティード」
ふいに横から名前を呼ばれ、ハッと振り向く。
「どうしました?いつもは貴方も発言するのに今日はやけに静かですね。何か他に思うことが?」
そう聞いてきたのは、第六師団長のフェリクス・ラコストだ。長いプラチナブロンドの髪にすらりと整った容姿。彼のまとめる第六師団は救護や衛生に特化した師団で、人を観察することにおいては騎士団の中で、第六師団長の彼に勝るものはそうそういない。
どうやら俺がいつもと様子が違うのをいち早く察知したようで心配をさせてしまったようだ。
「いや。未知なるものに対して、いかに周りに被害が出ないようにするべきか、皆の意見を聞きながら考えていただけさ」
「未知なるもの・・・。はるか昔にいたとされる魔獣と同じようなものが、何故今現れたんでしょうね。何か大きなことが起きる前触れなのか、もしくはもうすでに何かが動き出しているのか」
「・・・・・・」
「とにかく、今は私たちに出来る最善を尽くしましょう」
「あぁ、そうだな」
俺はラコストの言葉に頷き、改めて皆の方へと顔を向ける。その瞬間、強い視線を感じた。
(・・・?何だ?)
ザッと周りを見たが特に気になる視線はない。少し昔を思い出して敏感になっているのかもしれないと思い、俺は誰にも悟られないように内心で軽く息を吐いた。
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