ただ、あなたのそばで

紅葉花梨

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第6章 魔獣殲滅作戦

58. 魔獣の最期 (ユーリ)

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俺はそんな逸る気持ちを振り払うように走り続け、再びその視界に魔獣α《アルファ》の姿を捉えた。レイ様と先輩も俺を逃した時と変わらず、奴と対峙している。魔獣α《アルファ》は依然そんな彼らに襲いかからんと凄まじい猛威を振るっていた。

「レイさっ・・・!?」

そんな中、俺が咄嗟にレイ様の名を呼ぼうとするのと、俺が違和感を感じたのはほぼ同時。

先程は、少年を護るのに必死で気がつかなかったが、魔獣α《アルファ》の獅子のような身体の尻尾にあたる部分がキラキラと輝いているのだ。

(あれは・・・!?)

魔獣からの攻撃を躱し、距離を取ったレイ様達の元へと俺は急いで駆け寄る。

「レイさ・・・バスティード師団長!副団長!!」

「ユーリっ!!」

「ユーリィ!!何でここにいるのっ!?さっきの少年は!?一体何がどうなってるの!!」

魔獣の動きを警戒しつつ、レイ様達も声を上げながら俺の方へと駆け寄ってくる。いつも飄々としている先輩もさすがにこの状況にはお手上げの様子で、俺に向かって矢継ぎ早に質問を浴びせてきた。

一方レイ様を見ると、とても心配そうな顔をしていた。レイ様もきっと先輩と同じで俺に聞きたいことはたくさんあるのだろう。そんな顔をさせたいわけじゃないが、俺自身も何故このような事態になったのか今すぐ明確な答えを出すことはできないので、こうなってしまった以上は自分に後悔のないように行動したい。

「すみません、副団長。後方支援区域で不測の事態が発生しました。俺は先程の少年を追ってここへ・・・っ!!詳しい報告は後でゆっくりします!今はこいつを!!」

俺がレイ様達と合流するなり、再び魔獣α《アルファ》がこちらへと突進してきた。3方向へそれぞれ散開し、すれ違いざまマティス先輩が攻撃魔法で応対する。

「くっ!やっぱり急所をピンポイントで攻撃しないと埒があかないよね~っ!」

魔獣α《アルファ》は、先輩の攻撃魔法をもろともせず再び突撃態勢をとる。俺はその姿を凝視し、いまだ輝き続ける尻尾へと視線を向けた。

(きっとあれだ。たぶんあの尻尾が急所なんだ・・・。でもあんなにキラキラしていたら弱点ですよって言ってるようなものだけど・・・違うのか?レイ様や先輩は何も言っていないし・・・)

だが、魔獣α《アルファ》を見てからずっと感じている自分の不思議な感覚。さっきは考えても考えてもその先の答えがなかなか見えなかった。でもあの光を見た瞬間にコレだと、まるでパズルのピースがはまるように俺の中でしっくり来たのだ。

「レイ様!あれっ!あいつのあの光る尻尾を切り落とすことはできますか!?」

俺は近くに来たレイ様に魔獣α《アルファ》の光る尻尾を指さし問いかけた。

「・・・“光る”尻尾?」

「そうです!こんな事言ったら変に思われるかも知れませんが、俺何だかあの魔獣α《アルファ》と同じような魔獣を見たことがある気がするんです。まぁ実際そんなわけないんですけど、ただあの光ってる尻尾が気になって。あれを切り落とせば、この状況を変えることができる気がするんです!・・・すみません、こんな曖昧な理由でレイ様に攻撃をお願いをするなんて。レイ様は常に危険と隣り合わせだと言うのに俺・・・」

「ユーリ。・・・・・・わかった、大丈夫だ」

俺が俯いて、少しの間の後レイ様はそう言ってポンと俺の頭に手をやった。俺がレイ様の顔をふと見あげると、その表情は一瞬どこか苦しそうに見えた。

(レイ様・・・?)

「任せておけ。あの“光る”尻尾を切ればいいんだな?」

「あっ・・・、はい!」

見間違えかのようにすぐさま表情を戻したレイ様は一つ頷くと俺に下がっているように告げ、懐から魔石を取り出すとそれを持っていた剣ですぐさま切り裂いた。すると、剣の周りに渦巻くように風が発生する。風魔法の魔石の効果だ。剣に風魔法を付与することで、切れ味が何倍にも増したり、剣を振って遠隔で敵を切り裂くことも可能となる。

「マティス副団長!!」

「何だい!?バスティード師団長」

「一つ試したいことがあります。ほんの数秒でかまいません。ヤツの足止めをお願いできますか?」

レイ様は魔獣を挟んで反対側にいるマティス先輩に声をかけ、マティス先輩はチラッとレイ様の持つ風魔法の付与された剣を見て、こちらもすぐさま魔獣に魔法攻撃を撃つ態勢に入る。

「わかった!今は何でも試したい気分だからね!行くよ!!」

マティス先輩が魔法を放つのとレイ様が魔獣に突っ込むのはほぼ同時。

雷が轟音と共に空からやってきて、ものすごいエネルギーが一瞬のうちに魔獣へと降り注ぐ。それでも立ったままの魔獣へと今度は相手の後ろへ回ったレイ様が軽く跳躍し、風の魔剣を魔獣の尻尾めがけて振り下ろす。雷によっての肉体的ダメージはあまりないものの、目がくらみ、少し体が痺れた魔獣にはそれを回避する術はない。その瞬間、レイ様の剣によって切り落とされた魔獣の尻尾は徐々に光を失っていった。

「やった!!これで・・・・・・」

その光景を見て気が緩んだ俺はレイ様のところへ駆け出した。

「まだだっ!!ユーリっ!!!」

「ユーリィィ!!」

「!!」

二人の声が聞こえた刹那、魔獣α《アルファ》が俺の目の前に現れ、最期の一撃と言わんばかりに俺へとその大口を開け、その鋭い牙を今まさに俺の体に突き立てようとしていた。

(っ!!駄目だ!!避けきれないっ!!)

俺は次に来るであろう痛みを覚悟して、地面に倒れこみギュッと目を瞑った。


バチッッッ!!!
ザシュッザシュッッッ!!!ドサッ・・・・・・


「!!?」

すぐそばで何かが障壁に当たる音と物が切れる音がした。痛みはない。バッと振り返ると、目の前には俺を護るように張られた防御魔法シールド、そして切り刻まれ完全にこと切れた魔獣α《アルファ》の姿がそこにあった。防御魔法シールドは瞬く間に解除され、向こうからレイ様と先輩が走りこんでくる姿が見えた。

(・・・危なかった。今の魔法は、マティス先輩・・・・・・?)

「あっ・・・レイさ・・・・・・ま」

俺は立ち上がり、レイ様と先輩に声をかけようとしたその瞬間、体がグラリと前へと傾いた。ひどい眩暈がする。

ヤバいと思ったその時には、もう俺の意識はブラックアウトしていたのだった。

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