60 / 66
第6章 魔獣殲滅作戦
59. 遊びの結果
しおりを挟む机の上に置いてある石が突然音を立てて割れ、欠片が机一面に広がった。
その様子を部屋の主人は椅子に座ったまま驚くこともなく横目で見ると、すぐにつまらなさそうに視線を外し溜め息を吐く。
「あ~ぁ。せっかく面白い遊びを教えてもらったのに、あっと言う間に壊れちゃった。これは悪い知らせ?それとも・・・・・・良い知らせ!?アハハッ!!」
コロコロと表情を変えて、この部屋の主人である銀髪で幼顔の青年は椅子から立ち上がるとクルクルと踊るように部屋の入り口へと進んでいく。
「さっそく報告しなくっちゃ!」
そう言って青年が部屋の扉を開けようとした瞬間、ノックもなしに一人の男が今まさに青年が開けようとしたその扉から静かに室内へと入ってきた。
「ずいぶん楽しそうだな?サミュエル?」
「あっ、シルヴァンさま!!」
サミュエルと呼ばれた青年は、前触れもなく現れた人物、ブルーニ王国王太子シルヴァン・サリフ・ブルーニの姿を見るや否や、嬉しそうな声をあげて勢いよく彼の胸へと飛び込んだ。それを難なく受け止め、うっすらと笑みを浮かべたシルヴァンは抱き着いてきたサミュエルの頭をペットを可愛がるように、ゆっくりとした手つきで撫でていく。
「何か良いことがあったのか?」
シルヴァンがそう尋ねると、サミュエルは顔をあげてにっこり笑った。
「そう!それをちょうどシルヴァンさまに伝えなくっちゃと思って会いに行くところだったの。僕の予想ではシルヴァンさまにとって良い知らせなんじゃないかな?と思って!」
そう言って、スルリとシルヴァンの元から離れたサミュエルは室内の中央まで歩いていき、そこにある机の上に散らばる石の欠片を指し示した。
「これ。この間、シルヴァンさまに作ってもらったおもちゃがさっき壊れちゃったんだ」
「ほぉ・・・・・・」
それを見たシルヴァンは興味深く欠片を見つめ、こちらも楽しそうにサミュエルに問いかける。
「どこまで遊びに行っていた?」
「う~んとね、これが割れた時はちょうどボナール王国に入ってちょっとしたところかな?」
「そうか。・・・ボナールか。・・・・・・クククッ、ハッハッハッ」
サミュエルの答えを聞いたシルヴァンは大いに笑った。
「シルヴァンさま、これって良い知らせ?」
シルヴァンが笑っているのを見て、やはり自分の予想は間違っていなかったんだろうとサミュエルは自分のことのようにウキウキしながら再度シルヴァンの側へと駆け寄った。
「あぁ、とても良い知らせだ。古い遊びだからもっと長く続くかと思ったけれど、これほど早くに結果が出るとは。どうやら全ての風向きは私の方へと向いているようだ」
再びシルヴァンに頭を撫でられたサミュエルは嬉しそうに目を細め、シルヴァンの胸元へと顔を寄せながらボーっとした様子で聞きたかったことを尋ねる。
「じゃぁ、探し物はボナールに?」
「そうだな、まだ確定ではないがおそらく。・・・とりあえずは、ボナールにも私の可愛い子を放っているからその子から情報を集めるとしよう。ちょうど気になることもあったからな・・・・・・」
そう言って窓の外に視線をやり、先程の笑い顔から何かを思案するような顔へと表情を変えたシルヴァンはそのまましばらくサミュエルの頭を撫で続け、不意にくいっとサミュエルの頤を持ち上げると、目を合わせ唐突に口付けを交わす。
「んっ・・・はぁ・・・」
シルヴァンから与えられる熱に恍惚とした表情で応えるサミュエルはもっともっとと言うように口腔内で激しく舌を絡ませては互いの唾液が溢れるのも構わず、夢中になってシルヴァンとの口付けに没頭した。
もはやこうなってはサミュエルの頭の中はシルヴァンとのこの後に待っている快感のことしか考えられず、与えられるがままにその熱を享受する。
一方のシルヴァンは、口付けの間冷めた表情でサミュエルの乱れる様を見つめていた。
「はぁ、・・・シル・・・ヴァ、ンさ・・・まぁ」
うっとりした顔のサミュエルの腰を片腕で支え、そのままシルヴァンは寝台へとサミュエルを押し倒す。彼にとって様々な者と身体を交えるのは日常的なもので、彼にとってその誰もが平等に性の捌け口でしかなかった。
ーーー唯一、探し求める者以外は。
「神子よ。今世こそは、その全てを我が物に・・・・・・」
シルヴァンはうっすらと笑みを浮かべながら、誰に聞かせるでもなく呟いた。
そうして、室内には淫らな音色と艶やかな嬌声だけがいつまでも響いていた。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです
天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。
その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。
元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。
代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜
たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話
騎士団長とのじれったい不器用BL
今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる