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第7章 通じる想い
64. 可愛いユーリ (レイ)
しおりを挟む「好きです、レイ様」
その一言で時が止まった。
いや、ユーリの声しか聞こえなくなった。
待たせてごめんと言うユーリの表情は、恥ずかしがりながらも強い意志を持っていて、以前に城下町の食事処で俺のことをたぶん好きだと言ってくれた時とは違い、心から俺に気持ちをぶつけてくれているのがわかった。
一生懸命俺に向き合って話すユーリに、俺はすぐには言葉が出て来ず、ただただユーリへの愛しさが心や魂の奥底から溢れ出し、気が付けばユーリを自分の腕の中へと攫ってしまっていた。
「ユーリ。・・・・・・ユーリっ」
この医務室に入って、ユーリのそばに寄ってすぐにユーリが目覚めて、始めは“レイ”と名前を呼ばれ驚いた。
何か思い出したのだろうか?それとも全てを?
だがそんな考えも杞憂だったようですぐにいつものユーリに戻っていた。いや、それでももしかしたら何かを思い出しつつあるのかもしれない。俺は先程思っていたように、何があってもユーリを支えてみせると強い意思で、魔獣α《アルファ》の話で震えるユーリの手をギュッと握り込んだ。
そして今の俺の偽りない気持ちを吐露した直後のユーリの告白。
いいだろうか?この狂おしい程の気持ちを解放してもいいだろうか?
いきなりはきっとユーリを怯えさせてしまうだろう。少しずつ、少しずつユーリには慣れてもらって・・・でも、もう逃がさない。
(覚悟してくれ)
ユーリの泣き顔を見ながら、何処かに閉じ込めておきたいという独占欲を何とか理性で抑え込んで、俺はユーリと二人で未来のことを約束する。ユーリは今度こそ安心したように笑顔になった。
やはりユーリには笑顔が似合う。
俺が心底そう思っていたところに小悪魔がやってきた。まさか、ユーリから俺の胸に飛び込んでくるなんて!俺はこの短時間で、2回も自分の時が止まる経験をした。
可愛すぎる・・・。
最早、抑え込んだはずの欲が決壊しそうだった。ユーリには、これから狼の恐ろしさを教えていかないといけないようだ。
俺はユーリを怖がらせないように今度は優しく腕の中へとユーリを閉じ込めた。
そうして願う。
どうか、今世ではこの幸せが長く、長く続きますように、とーーー。
やがて気持ちも落ち着いてきた頃、こういう場での時の流れはとても早いものだ。元気に目覚めたとはいえ、さっきまで長く眠ったままだったユーリにあまり無理はさせられない。名残惜しいが、今日のところはこれで帰ろうと俺は今度こそユーリを腕の中から解放して声をかけた。
「ユーリ。先生を呼んでくるから念の為診てもらってくれ。今日のところは俺も仕事に戻るよ」
そう言うと、一瞬俺の願望かも知れないがユーリが寂しそうな表情をして、すぐさまいつもの調子で返事をする。
「はい。何から何までありがとうございます、レイ様。レイ様もお疲れが出ませんように」
まだ少し赤い顔をして、俺に笑顔を向けるユーリ。
ユーリは少し相手に遠慮したり、気を使い過ぎるところがあるから、これからは出来る限り俺の前では、ありのままのちょっとワガママな姿を見せてくれるようになれば、と思う。
「あぁ、ありがとう。恐らくその調子ならすぐにユーリも復帰できると思うから、また落ち着いたら話をしよう。出来ればこの先・・・・・・」
「?」
「出来ればユーリの宿舎に俺を登録してもらいたいと思っている」
「?宿舎に登録?・・・登録・・・って、あっ!?」
始め何の話かわからなかったユーリも、どうやら宿舎においての“登録”の意味に気付いたようだ。少しマシになっていた顔の赤みがまた濃さを増していた。
「駄目か?」
「・・・・・・」
やはりまだ早いか。と俺がフォローを入れようとしたところ小さな声が聞こえた。
「・・・駄目・・・じゃ、ない・・・です」
「ユーリ」
「今度、一瞬に・・・・・・」
それ以上は限界だったようで、俯いて黙り込んでしまったユーリの初々しい反応にさっきから俺の顔は緩みっぱなしだ。
宿舎に登録、つまり“恋人登録”するということは、宿舎の住人に俺を恋人として周知してもらうということと、いつでもユーリの部屋に泊まっていいという意味だ。
さすがに俺も、今ようやく歩み寄り隣に来てくれたユーリにいきなり無理強いするつもりはないので、またしばらくは違う意味で待たないといけないなとは思うが、気持ちが通じ合った今、ユーリが新しい壁を越えて来てくれるのを温かく見守っていこうと思う。
(もちろん俺の精神衛生上、早く越えて来てくれるのを願うが)
俺はクスッと笑いながら、立ち上がる。
「ありがとう。それじゃぁまた」
俺がそう言うと、慌ててユーリが顔をあげた。
「あっ、はい!レイ様」
その時俺を見上げる顔が可愛いくて、俺の中の欲という悪魔が少し表に出てきてしまう。
「・・・レイ様?っ!!!」
俺は一秒にも満たない短いキスをユーリの唇に贈り、カチッと固まってしまったユーリの、今度は額に優しく口付けた。
「恋人として、まずはこれくらいのスキンシップは許して欲しい」
「・・・・・・」
相変わらず固まったままのユーリに対して自然と笑みを浮かべ、軽く頭に手をポンポンと触れてから俺はユーリに背を向ける。
「じゃぁ」
今度こそユーリを診てもらう為に、俺は医師を呼びにその場を離れたのだった。
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