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第九章 王国の異変
その形は‥‥
しおりを挟むあ~死神のご尊顔って美形なんだねえ初めて知ったよ。
作り物めいた綺麗な笑みを浮かべて口角が僅かに上がっただけで血を啜り取られそう。死神こと義兄は刀を片手に薄ら微笑んでいる。浮かべた笑みは人外の生き物を彷彿させ凶悪さの滲み出た彼に誰もが戦慄していたのだ。
こ、怖わっ!
ちょっとカオスな現場と化したのは二人組のお馬鹿発言が原因。君ら口は禍の元って知らないの?! 責任取ってよ!
事が起こるホンの数分前。
義兄が素性を隠して素知らぬ振りで護衛していた件を問い詰める前に、ガクブル戦慄く二人組をどうにかしろとギルガに目で主張され持て余していたのだが‥‥
――殺処分か放置か。
血気盛んな皆さん、発想が物騒です。
放置! ここは放置で! ちょこっと叱って放置でいいじゃん!
俺は血生臭いの、苦手なの。勘弁してよーーー
剣呑な空気の中、風前の灯な自分達を正しく理解したのか、二人組は恥も外聞もかなぐり捨て必死に命乞いを始めた。縋りついてでも助かりたい彼等の厚顔さに呆れが過ぎて逆に感心する。でもハイデさんの足元に擦り寄るのは頂けない。懲りないねぇ。
素直に謝罪する彼等に対し、反省したのならそれでいい。
こっちも好きで流血惨事を見たいわけじゃない。ここは穏便に済まして次の目的地に急ごうかと席を立った‥‥のだが。
何をどう勘違いしたのか、それとも謝罪させられたのが悔しかったのか、お馬鹿者の行動心理は不可解極まる。
舌の根も乾かぬうちに俺が悪いのではないと言い出す始末。領内で蔓延したセクハラ行為は私兵団が黙認しているのでどこに行こうが似た経験をすると。一々相手にするのか? 騎士の中には爵位の高い貴族もいる。そのうち手打ちにされるぞと脅しだした。
いやいや君達ねえ‥‥忠告? それ脅しでしょ?
常習的に行われる騎士の破廉恥行為。領地の私兵団は性犯罪の温床であると暴露したのだ。自分達も先輩騎士に倣っての行動だから自分は悪くないと言いたいのか。セクハラ発言だけの自分達は悪くないと本気で思っているようだ。
うわ~何それ、酷くない!? 聞いてて反吐が出そう。
レティエルの可愛いお顔が酷く歪むレベルのお話を大人しく聞いていた義兄がキレた。正確には半ギレ、だって。
瞬時に抜刀して食卓、真っ二つに斬っちゃったよ!
スパーンって! 切れ味の素晴らしさに魅入られちゃう!
これには然しものお馬鹿も慄然として息を呑んだか、ゴクリと嚥下音だけが響く。
「証拠など残さず切り刻み消炭にして差し上げましょうか。レティの耳を穢した罪は己の命で償うしか、いえ、それでも許されません。罪の重さに比べれば屑塵の命などゴミです。斬って燃やすだけ労力と時間の無駄ですが害虫駆除だと思えば精々人助け程度にはなるでしょう。本来は領主の首を所望致したいところですが今日はコレで手打ちと致しましょうか。皆良いな」
よくなーーーーーーい!
なに、その欲しかった商品が売り切れで仕方ないか類似品で手を打とうみたいなノリ。やーめーてー! ここを血の海にする気かーーー!!
予想外な出来毎に現実逃避するのは自分の精神の安寧のためなのだ。だから俺は悪くない!
だって、ギルガなんて存在感消してるし! 居るのに居ないんだよ?! スパイスキル無駄に活用してない?!
ハイデさんは‥…えええ?! 頬染めて恋する乙女の顔で義兄を見てる? うぇ? 違う。義兄が手にする刀を見てる。
もう一人のフードの男も以下同文。
姿も気配も消した亭主、ゴメンね弁償するから許して!
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