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第十一章 帝国(お祖父ちゃん)の逆襲
回復薬事情ー④
しおりを挟む王国の回復薬事情と第二王子との共同研究についての話だが、義兄は少し考えて『まぁ、王家への忠誠は故人となった日に共に消え去りましたから、私の心は痛みません。まったく問題ありませんね。ふふ、私の呟く懐古を偶々耳にしたのです。そういうことで大丈夫でしょう』と陛下に聞かれたら一発アウト!な発言をかます。義兄の失言に目を剝いた俺は真偽を測り兼ね困惑した。
‥‥いやいやいやいや待って待って! 何言ってんの?!
穏やかな好青年っぽく語られてもね。吐く科白がまったくもって大丈夫じゃない。どう聞いても不敬! 不敬だからね!
ちょいと顔を出した黒い義兄。怖っ。
話し振りからガザを通じてお祖父ちゃんにチクる気だな? 命令権のないお祖父ちゃんの部下猟犬を連絡係として使う気だ。多分、義兄の機嫌を損なうことをしたのだろう。ガザの耳に入れなくてもいい情報を流す気?
ガザも無表情だが不満ありありだ。得た情報を報告しなければお祖父ちゃんから叱責される以上『聞かなかった』はあり得ない。これでガザの帰国は決定かな? 地味な嫌がらせをするね義兄。
義兄の逆臣とも取れる発言だが、何のことはない。囮捜査で収監された王城の牢屋にホイホイと暗殺者の侵入を許したザルな警備に、未だ親父達の謹慎を解かない陛下と三公に、求心力の欠けた王家に、憤っていたのか、見捨てたのか。もう王家に忠誠を払うのを止めたのか、よくはわからないが、義兄が企んでいるのは嫌でもわかった。
話は、公爵領に希少な薬草の生息地があるとされた情報と共同研究との関わりについて。
その前に、『王国には魔物が発生しないと言われているのを知っている?』と聞かれた。あー、そう言えばそうだった。でも、それが? イマイチ質問の意図が読めない俺を置いて、話は進む。
切っ掛けは、ライムフォード第二王子殿下と義兄が帝国留学中に受講した【魔素濃度の低い土地で回復薬の素材となる薬草類の育成栽培】の授業。
これは帝国の薬草学の教師主導による選択授業で、興味のある生徒なら誰でも参加していたと言う。
実は、これを元に【魔素が殆ど検出されない王国で同様の実験を行えば?】と、魔力否定派の多いこの国で行うには些か危ない研究を思い付いたのがライムフォード。義兄は魔道具と魔法陣の作製依頼と将来の上司に忖度の意味合いで協力した。
一足先に帰国した義兄が領地内の別荘に試験的に小さな温室(魔道具と魔法陣で魔素の濃度調整可能)を作り、その中で薬草栽培を始めた。勿論、親父の許可済み。義兄は親父に隠し事はしない人なのだ。
公爵家の薬草云々の情報は、この実験のことだろうと義兄は推察した。
当初、ライムフォードの立場上、秘密裏に実験を行っていたのだが、義兄が多忙で実験の継続が不可能と判断。ライムフォードが研究と温室を引き取ったと言う。その後、温室がどうなったのか知らないと、アフターケアを怠る義兄の手腕はどうかと思う。
‥‥今の身分ではホイホイとライムフォード殿下に会えないよね。
多忙過ぎる義兄を労う意味でフォローするけど、公爵令息の身分でも恐らく放置していたと思う。元々王家の忠誠が薄いのだ。そんなもんだろう。
タッカーソン家に情報が流れたと知ったのはガザ情報でだ。
既に権利を放棄しライムフォードに譲渡している以上、情報管理の責任は向こうにあると、公爵家の情報漏洩疑惑をばっさり否定した。
‥‥そりゃそうだよね。王族と関わる研究が外部に。然も他国に漏れたとあれば情報管理能力を疑われ、重要な役職も仕事も軒並み外される。とんでもなく失態だよ。ああ、そうか。公爵家を陥れるために流したのか、じゃあ、それって。
‥‥帝国サイドの調査はお祖父ちゃんだよね? それで王国サイドの調査を俺達に? ってことでいいよね、ガザ?
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