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第十二章 分水嶺
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素材をこねくり回して調合師の気分を満喫した俺の機嫌はめちゃくちゃ良い。なのに義兄の恐ろしい予想で気分は急降下。うん、地の底に沈んだわ。
こういうの慣れてないんだよね、だから考えもしなかったよ。はぁ‥‥。
「まさかお義祖父様がこのような暴挙‥‥コホン、無謀‥‥ン、‥‥ガザに聞いたお義祖父様の動向では帝国から動けないと思っていました。予想を裏切られましたね。このままでは私の計画に支障が出ます。余り情報を漏らしたくはなかったのですが、仕方ありませんね」
「‥‥? お義兄様、計画って何です? 教えて下さい」
サラリと教えてくれたのは良いが『これは軌道修正が必要か、面倒な』と不満を滲ませる低音の呟きは聞こえなかったことにしよう。
「お義祖父様と情報を擦り合わせないと不味いね、こちらの計画も打ち明け協力を仰がないといけないかな? 兎に角、話し合う時間を設けて頂かないとね」
計画の邪魔になるかどうかを知りたいんだね。ちょっと義兄のうんざりなその気持ち、わかる。折角のプラン、おジャンは嫌だよ。
義兄予報。回収役の者が現れる日を思索している。
「お義兄様の予想ではいつ頃だと思います?」
「予想外のお義祖父様の行動が原因で、恐らく早まると思う。そうだね、早くて今夜あたり? 遅くとも二,三日後かな?」
「ぶっ?! そ、そんな急に?! 大丈夫なの?」
「ふふ、手は打ってあるよ」
俺達が何の話をしているかというと。
帝国人の拉致被害を王国に苦情を言いに(?)皇子ご一行様がやってきたのだ。まあ、主目的は別だがこれも会談内容に含まれているとみていい。そうなると困るのは王国側だろうね。証拠がクリスフォード(元王子)の邸で監禁されてんだもの。しかもお祖父ちゃんがバッチシ証拠を掴みに来た。
‥‥うわーこれだけ聞いたら嵐の予感しかしないわ。
ランチェスター側は十中八九証拠を奪還に来るよね。その来襲時期を予想してたの。
抑々この予想はランチェスターが誰に近い人物かと考察した上で立てている。
えっ? ヴォルグフ達の出荷予定日が近日じゃないのを何故わかったかって?
それは、邸の使用人の証言で判明した。捕縛された男が事前に当分厄介になると言っていたのとヴォルグフ達の体調があまり宜しくないのもあってと聞いていたのだ。この男がヴォルグフ達と共に行動していたのを目撃されていたので、犯人の一味と判断され軍部に連行と暗い未来が約束されている。うん、ゲロっちゃたら助かるかもよ?
はてさて、ランチェスターは王族に連なる人物か、または陛下や三公、主幹家臣とどこかに繋がりを持つ人物ではないかとみている。皇子ご一行様の訪問が相手を刺激したと仮定して話をしていたのだ。
「お義兄様、それとどう関係がるの?」
「レティ、クリスフォードはもともと監視付きでこの領地に封られたよね? 王子の立場にありながら国益を損ねた愚か者に対する処罰が、王国を食い物にする輩を誘き寄せる囮役が与えられた役割と聞いたよね。なのに監視者も不在、隷属の契約魔法で縛られた上で犯罪行為に手を染めている。上層部の者が関与していなければ見過ごせないよ。単なる一領主じゃないからねクリスフォードは。隠れ蓑にされたのかな?」
そう言われると頷ける。
「皇子殿下にヴォルグフの件を掴まれるのは何としても避けたいだろうね。証拠を隠滅するか冤罪を画策するか、どちらにしろ皇子殿下の目を欺こうと動くよ」
え? 何か途轍もない話になってない?!
推測の域を出ない話だと断りを入れるが、義兄はそのつもりでこの邸の防衛を強化したし手を打ってる。余念がない人で俺は非常に助かってます。
‥‥うん、レティエルは守られる人、義兄は守る人。役割分担はバッチシ。
憶測の裏付けは何と言っても契約主の名だ。ランチェスター・グスターファルバ―グ。王家の者と同じ名を戴く人物だよ? 無関係と言われても疑惑は晴れないでしょ?
義兄の引っ掛かりは三公の態度にも及び、血の盟約の条件が不明で彼等の役割が機能していないのではと疑念を抱いているようだ。それを聞くと親父は大丈夫かと心配になる。やっぱ、このまま帝国に行けないよ。
頭の片隅に、もう家族で移住しちゃわない? いや、領地の皆引き連れてさあ。そんな酔狂な考えが湧いた。現実味の無い話かもだけど、そう思うほど王家に失望してる。
「お義祖父様も仰っていたよね? 皇子とは別行動が許されているのは、単にお義祖父様は別任務を受けているからだと思うよ。恐らく、皇子達には知らされていない。王国側に悟られてはいけない何かじゃないかな? 皇子とは別だと強調されていたと感じたよ? ふふ、これはお義祖父様に確かめればいいかな」
‥‥え? そんな深読みするの?! 細かー。
「タッカーソン家のご子息の保護が目的ではないの?」
「ううん、どうだろうね? ギルガの手前ああ仰っていたけれど場合によっては彼の身も危険だと思うよ? なんせまだ隷属は有効だからね。このままだと間違いなく彼は出荷…あぁ回収と言えばよいのかな? 何にせよ契約主が存在する以上、彼等は逃げられないよ」
ひぇっ!
「お義兄様、術解いちゃいましょう!! 呪文でしたっけ? アレで解けますよね?」
「レティ、残念だけれど、できるなら私も彼等を自由の身にしてあげたい。でもね、あの契約書にはわからないことがあって様子を見たいかな? ランチェスターが彼等に命令する方法も掴めていないし…」
‥‥うわぁーひど。
「…‥‥‥そうね、どうやって命令に従わせてるのかしら?」
「それに術が解けたとして相手に伝わるのも困るね。術を解くのは相手の正体を突き止めてからにしたいかな?」
‥‥確かに! ここで術を解いたのがバレたら、あっちがどう動くか読めないもんね。
二の足を踏む義兄の考えに納得。迂闊に術を解くのは止めとこ。要らぬ藪は突きたくないよ。
「後はお義祖父様の目的が私達の計画の邪魔にならなければいいかな? ふふ逆もまた然りだね」
「ちゃんと話し合わないといけないのね。でも、お祖父様、皇子殿下にどう言って来たのかしらね?」
「それは、タッカーソンの件を調べるとかじゃないかな? 帝国にヴォルグフ達の件は報告されているからね。私達が彼等を保護した報告を受け…‥違ったね。時期が早すぎる。王国に向う道中で報告を受けたのか。そう言えばガザが協力を仰げと言っていたのは、皇子が王国に向っていたからかな?」
「お義兄様? ガザがどうかしたの?」
「ふふ、ガザは勿体付けた物言いが好きみたいだねって話」
「? ふーん?」
こうなるとヴォルグフ達の身柄は絶対守んなきゃ! とあるのが普通だよね。でもね、義兄の計画は違う。
ヴォルグフ達を回収させてそのままランチェスターの元に送り出す気でいる。一応は非戦闘員の彼等を鑑みて代役を考えたらしいが、人手不足の現状、レティエルの護衛を減らしてまで彼等を守る気がない義兄は早々にヴォルグフ達を囮にと決めた。まぁこれはお祖父ちゃんの意見を聞いてからになると思う。身元引受人の立場があるし。
さてさて、お祖父ちゃんの突撃訪問が、どんな結果を招くのか。俺としては義兄の予想は大外れで平穏な日常を求めたい。でも無理だよね、お祖父ちゃん来ちゃったし。
‥‥はぁ、平穏な日々は遠い‥‥
こういうの慣れてないんだよね、だから考えもしなかったよ。はぁ‥‥。
「まさかお義祖父様がこのような暴挙‥‥コホン、無謀‥‥ン、‥‥ガザに聞いたお義祖父様の動向では帝国から動けないと思っていました。予想を裏切られましたね。このままでは私の計画に支障が出ます。余り情報を漏らしたくはなかったのですが、仕方ありませんね」
「‥‥? お義兄様、計画って何です? 教えて下さい」
サラリと教えてくれたのは良いが『これは軌道修正が必要か、面倒な』と不満を滲ませる低音の呟きは聞こえなかったことにしよう。
「お義祖父様と情報を擦り合わせないと不味いね、こちらの計画も打ち明け協力を仰がないといけないかな? 兎に角、話し合う時間を設けて頂かないとね」
計画の邪魔になるかどうかを知りたいんだね。ちょっと義兄のうんざりなその気持ち、わかる。折角のプラン、おジャンは嫌だよ。
義兄予報。回収役の者が現れる日を思索している。
「お義兄様の予想ではいつ頃だと思います?」
「予想外のお義祖父様の行動が原因で、恐らく早まると思う。そうだね、早くて今夜あたり? 遅くとも二,三日後かな?」
「ぶっ?! そ、そんな急に?! 大丈夫なの?」
「ふふ、手は打ってあるよ」
俺達が何の話をしているかというと。
帝国人の拉致被害を王国に苦情を言いに(?)皇子ご一行様がやってきたのだ。まあ、主目的は別だがこれも会談内容に含まれているとみていい。そうなると困るのは王国側だろうね。証拠がクリスフォード(元王子)の邸で監禁されてんだもの。しかもお祖父ちゃんがバッチシ証拠を掴みに来た。
‥‥うわーこれだけ聞いたら嵐の予感しかしないわ。
ランチェスター側は十中八九証拠を奪還に来るよね。その来襲時期を予想してたの。
抑々この予想はランチェスターが誰に近い人物かと考察した上で立てている。
えっ? ヴォルグフ達の出荷予定日が近日じゃないのを何故わかったかって?
それは、邸の使用人の証言で判明した。捕縛された男が事前に当分厄介になると言っていたのとヴォルグフ達の体調があまり宜しくないのもあってと聞いていたのだ。この男がヴォルグフ達と共に行動していたのを目撃されていたので、犯人の一味と判断され軍部に連行と暗い未来が約束されている。うん、ゲロっちゃたら助かるかもよ?
はてさて、ランチェスターは王族に連なる人物か、または陛下や三公、主幹家臣とどこかに繋がりを持つ人物ではないかとみている。皇子ご一行様の訪問が相手を刺激したと仮定して話をしていたのだ。
「お義兄様、それとどう関係がるの?」
「レティ、クリスフォードはもともと監視付きでこの領地に封られたよね? 王子の立場にありながら国益を損ねた愚か者に対する処罰が、王国を食い物にする輩を誘き寄せる囮役が与えられた役割と聞いたよね。なのに監視者も不在、隷属の契約魔法で縛られた上で犯罪行為に手を染めている。上層部の者が関与していなければ見過ごせないよ。単なる一領主じゃないからねクリスフォードは。隠れ蓑にされたのかな?」
そう言われると頷ける。
「皇子殿下にヴォルグフの件を掴まれるのは何としても避けたいだろうね。証拠を隠滅するか冤罪を画策するか、どちらにしろ皇子殿下の目を欺こうと動くよ」
え? 何か途轍もない話になってない?!
推測の域を出ない話だと断りを入れるが、義兄はそのつもりでこの邸の防衛を強化したし手を打ってる。余念がない人で俺は非常に助かってます。
‥‥うん、レティエルは守られる人、義兄は守る人。役割分担はバッチシ。
憶測の裏付けは何と言っても契約主の名だ。ランチェスター・グスターファルバ―グ。王家の者と同じ名を戴く人物だよ? 無関係と言われても疑惑は晴れないでしょ?
義兄の引っ掛かりは三公の態度にも及び、血の盟約の条件が不明で彼等の役割が機能していないのではと疑念を抱いているようだ。それを聞くと親父は大丈夫かと心配になる。やっぱ、このまま帝国に行けないよ。
頭の片隅に、もう家族で移住しちゃわない? いや、領地の皆引き連れてさあ。そんな酔狂な考えが湧いた。現実味の無い話かもだけど、そう思うほど王家に失望してる。
「お義祖父様も仰っていたよね? 皇子とは別行動が許されているのは、単にお義祖父様は別任務を受けているからだと思うよ。恐らく、皇子達には知らされていない。王国側に悟られてはいけない何かじゃないかな? 皇子とは別だと強調されていたと感じたよ? ふふ、これはお義祖父様に確かめればいいかな」
‥‥え? そんな深読みするの?! 細かー。
「タッカーソン家のご子息の保護が目的ではないの?」
「ううん、どうだろうね? ギルガの手前ああ仰っていたけれど場合によっては彼の身も危険だと思うよ? なんせまだ隷属は有効だからね。このままだと間違いなく彼は出荷…あぁ回収と言えばよいのかな? 何にせよ契約主が存在する以上、彼等は逃げられないよ」
ひぇっ!
「お義兄様、術解いちゃいましょう!! 呪文でしたっけ? アレで解けますよね?」
「レティ、残念だけれど、できるなら私も彼等を自由の身にしてあげたい。でもね、あの契約書にはわからないことがあって様子を見たいかな? ランチェスターが彼等に命令する方法も掴めていないし…」
‥‥うわぁーひど。
「…‥‥‥そうね、どうやって命令に従わせてるのかしら?」
「それに術が解けたとして相手に伝わるのも困るね。術を解くのは相手の正体を突き止めてからにしたいかな?」
‥‥確かに! ここで術を解いたのがバレたら、あっちがどう動くか読めないもんね。
二の足を踏む義兄の考えに納得。迂闊に術を解くのは止めとこ。要らぬ藪は突きたくないよ。
「後はお義祖父様の目的が私達の計画の邪魔にならなければいいかな? ふふ逆もまた然りだね」
「ちゃんと話し合わないといけないのね。でも、お祖父様、皇子殿下にどう言って来たのかしらね?」
「それは、タッカーソンの件を調べるとかじゃないかな? 帝国にヴォルグフ達の件は報告されているからね。私達が彼等を保護した報告を受け…‥違ったね。時期が早すぎる。王国に向う道中で報告を受けたのか。そう言えばガザが協力を仰げと言っていたのは、皇子が王国に向っていたからかな?」
「お義兄様? ガザがどうかしたの?」
「ふふ、ガザは勿体付けた物言いが好きみたいだねって話」
「? ふーん?」
こうなるとヴォルグフ達の身柄は絶対守んなきゃ! とあるのが普通だよね。でもね、義兄の計画は違う。
ヴォルグフ達を回収させてそのままランチェスターの元に送り出す気でいる。一応は非戦闘員の彼等を鑑みて代役を考えたらしいが、人手不足の現状、レティエルの護衛を減らしてまで彼等を守る気がない義兄は早々にヴォルグフ達を囮にと決めた。まぁこれはお祖父ちゃんの意見を聞いてからになると思う。身元引受人の立場があるし。
さてさて、お祖父ちゃんの突撃訪問が、どんな結果を招くのか。俺としては義兄の予想は大外れで平穏な日常を求めたい。でも無理だよね、お祖父ちゃん来ちゃったし。
‥‥はぁ、平穏な日々は遠い‥‥
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