308 / 365
第十三章
朝の一時
しおりを挟む「お家に帰ろ」
「ダメだよ」
秒で却下されたよ。くすん。
お祖父ちゃんの衝撃的な話を聞いて、正直、思考も気持ちもおいつかなかった。
うん、いっぱいいっぱい。
時間が経った今なら両親の話も聞いた上で今後を決めたいと思える。ちょっと冷静になれたかな。
先ずは、お家に帰ろう。帰って両親と相談しよう。
あ、でも属国云々って、バラしちゃっていいの?
それなら血の盟約を解いてからだよね? 練習ナシのぶっつけ本番になっちゃうけど、まあいけるでしょ。
と、目下の目標を定めて早速義兄にお家に帰ろうと誘ったのだが‥‥。
朝食後の一時。
お茶を飲みながら近況報告の時間に充てた。
「城内を探らせた部下の話では、公爵夫妻は相次ぐ家族の不幸で心労が重なり体調を崩していたが、両殿下のご来訪を知り王国臣下として接待役を買って出たと噂されているらしい。ふふ、滑稽な話だよ。まぁ両殿下と義祖父様もいらっしゃるのに、義母上が挨拶に登城しないのは不審を招くと判断したのだろうね。義父上は逆らえないのをいいことに厚顔無恥とは国王を表す言葉だね」
実はお城にいるお祖父ちゃんは替え玉さん。本人は姿を晦ませてたって。探らせたミリアが確認した。序でに捕縛していた傭兵ぽい怪しい領兵も揃って姿を消していたそうだ。
え? そんなの捕まえていたの?! そっちに驚いた。
俺の知らない所でいろいろやってんだよねー。遠い目になっちゃう。
「随分と都合のいい話になってたのね…‥好い様に使われてるわ」
「癪だけどね。でも皮肉にも監禁状態だった義父上が登城したことで憶測が鳴りを潜めたからね。面会を求めていた貴族もこれ幸いと近付いているらしい」
「それは良かったのかしら。でも、そろそろ囮役を返上して欲しいわ」
帝国ご一行さまさまで。我が家の待遇が大きく変化していた。良かったと素直に喜べないのは理由が理由だから。さっさと開放して欲しいよ。
しかし、あの王様、公爵を不幸のあった夫妻に仕立て、その上で城に呼び出したのか。酷いな。
まあ、妥当な策か。
納得してないけどね!
「義祖父様達のお陰で公爵家は助かったかも知れないね。あのまま濡れ衣を着せられ権利を奪われていた可能性も無きにしも非ず、使節団はタイミングが良かったよ」
「‥‥それって潰されていたかも知れないってこと?」
「あくまでも可能性の話だよ? 今のところ目立った動きは見せていないようだけれど水面下ではわからないし」
マジか! いや、可能性の話、でもあり得る。
「でしたら尚の事、早くお父様の契約魔法を解かないと、お祖父様がいつ行動を起こすかわからないのでしょう?」
大丈夫かなー、と気を揉んだのを察したのか、
「公爵四家に科せられた呪縛を義祖父様は正しくご理解なさったと思うよ」
「え、それって‥‥解かない間は動かないってこと?」
「そうだね、リスクを秤に掛ければ、猶予は与えられたとみていいね。帝国が送り込んだ武力が不明なのが気になるところだけれど‥‥その辺は義祖父様に委ねる他手立てはないかな」
ううむ、ゲスい皇帝のことだから二案、三案と代替案を用意してそう。
「ふふ、ここは黙って逃がしてくれた義祖父様を信じたい、かな」
「え? うそ、お祖父様は見逃してくれたの? ‥‥それ、どういうことなの」
手を抜かれていたらしい。お祖父ちゃんが本気で抵抗すれば義兄は斬られて終わってた。退役したとはいえ武神の異名を持つお祖父ちゃんはまだまだ現役軍人に引けを取らない技量持ち。
魔道具や魔法陣を駆使して戦うスタイルの義兄と天分の才を持つ剣鬼のお祖父ちゃんとではレベルが端から違ったそうだ。純粋なる力で押し切られたら力負けするって。うわぁ。
「お祖父様は剣を向けたことについて何か仰ってたの?」
「…‥さあ、特には何も?」
その間が気になる。
「今の王都は警戒態勢が厳重だけど、魔力耐性の低い者が城外を守っているみたいだね。これでは防衛面の脆弱性を晒したようなものだ。城内で事に及ぶよりも城外の方が隙は多い。機会は多くなると思う。そう考えると使節団の予定を掴んでおきたい…‥」
当面、お祖父ちゃんは動かないと希望的観測がほぼだけど、そう信じることにした。
歓迎ムーブの王城では茶会や夜会に狩猟と視察。おもてなしが目白押し。
今は人も金も城に集中してて、警備の隙が生じやすい。
「決行するとすれば城内で?」
「どうだろう。どこも狙い目だけど…‥第二皇女がねぇ、我儘を言い出して公爵領の訪問を希望したそうだよ。他の予定の兼ね合いで帰国の順路に組み込まれると思う。そうなると両親は同行するだろうね」
帝国経路を思えばその方が都合いいのはわかる。
でも、それ…‥
「そ、それ、仮に道中で何かが起ればお父様の責任になりません?」
「レティを次代の王妃に据え置く計画なら、それは悪手だよ」
現場の責任者とか難癖付けられて処罰されたら元も子もない。
でも、お祖父ちゃんが携わるのなら大丈夫‥‥なのかな。
うう、やっぱりお家に帰りたい。
0
あなたにおすすめの小説
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜
naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。
※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。
素材利用
・森の奥の隠里様
・みにくる様
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】私が誰だか、分かってますか?
美麗
恋愛
アスターテ皇国
時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった
出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。
皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。
そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。
以降の子は妾妃との娘のみであった。
表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。
ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。
残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。
また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。
そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか…
17話完結予定です。
完結まで書き終わっております。
よろしくお願いいたします。
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる