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第十四章 王が住まう場所
異世界の車窓からー①
しおりを挟む人込みでごった返す王都の景色をボケ~と眺めています。やることなくて。
あ~気分は異世界の車窓から、ね。
・・・はぁ。
今ね、The お忍びって感じの馬車で移動中なの。
一見ただの武骨な馬車だけど、実はマッドな義兄がこれでもかと魔道具や魔法陣を装備させたもの。装甲車も真っ青な仕上がり具合。義兄の趣味全開な、攻防力を高めまくった出来栄えに感嘆の息を吐く・・・俺以外がね。窓は外から中が見えない覗き防止に阻害認識。車体には防御結界は勿論の事、軽量化や揺れ防止、ああ、盗聴防止もだ。攻撃用の魔法陣もぬかりなく。もうね、戦車並みなの。
・・・どこに攻めに行く気だよ。
・・・ふぅ。
とまあ、溜息の原因が馬車移動なわけ。
順調にお城を出たまでは、気分は高ぶり絶好調ー! だったね。うん。
まあね、潜入は脱出までがセットだし。何ならダルの便利使いで楽勝って。
義兄の指示で一足先に都内に向かったライオネルとも無事合流。情報片手にどこで調達したかわかんない黒塗り家紋なし二頭立て馬車で戻ってきた。うん、お疲れ~。
でもね、それはちょっと違うかな。
お城を出るのに急場凌ぎで馬車を使用したのは理解できる。裏門であっても数人が騎乗で出かけるって人目を引くからね。職質されちゃう。
でもね、どっかでお馬ちゃんを調達すると思うじゃない? 違う? だって急いでるし。
ここは、乗馬が得意なレティエルのカッコイイ乗馬シーンだと思うの? 違う? 見せ場だよ?
颯爽とお馬ちゃんで駆けつけたかったなー。・・・自信あるんだよ? ちょっとドヤりたいだけじゃないからね?
期待を裏切られた後にくる失望感って、寄せる期待値が高いだけに大きいよね。溜息がぽっろぽろだよ。
ライオネルはジェフリーの代わりに義兄の補佐役に徹し、何やら話し込んでた。御者役のダルっちはヒャッハー!族じゃないので、大通りを走行するに適した速度を保ってる。意外と常識人。
特にすることもない俺は、失望感も相まって連続嘆息してた。ちっさいのを。
すると。
「レティ、心配? 大丈夫だよ。ハイデ達も異常はないと報告があったからね。私達が追い付くまで彼女達が守る。心配はないよ」
「お義兄様?」
ん? あ、しょんもりの原因を親父を心配してだと勘違いした?
うわお。言えない。お馬ちゃんに乗ってドヤ~がしたかっただなんて、絶対言えない。
内心あわあわしてたのを、焦燥からだと誤解したライオネルも気遣わし気に見つめてくる。
「お嬢様、ご心配には及びません。ああ見えて先行の二人は、防御もですが攻撃力も高いです、はは」
遠い目をしてたライオネルにその高い攻撃について語らせた。
別に二人の能力を疑ってじゃなくて、単に、ボッチ味わったから。
ちょっとぐらい構ってちゃん、してもいいよね?
「・・・あ~彼女たちの戦い方はですね、ハイデは毒殺です。稀に状態異常系の調薬を多用しますので、本人でないと解毒は困難を極めるかと。それに範囲指定の空中散布も得意ですね。確実に摂取させる腕前は特筆すべきでしょう」
毒を仕込んだ武器もだけど、経皮投与もだって。
空中散布も鼻と口を覆ったところで薬の摂取は免れないそうだ。ひょえぇぇ。
「ミリアは部位ごとの身体強化が行えるので使用魔力も抑えられます。筋肉増量だけでなくて視力や聴力も野獣並みに強化できます。が、頭脳は強化されません。残念です。主に、こぶs・・・ボコ・・・体術です。とはいえ一撃必殺ですのでご安心を。・・・魔剣主流のファーレン家の騎士とは違いますが、その、我らは、魔量的な問題で特殊なのです」
さり気なくデスったね。
お嬢様には刺激が強いでしたかと苦笑気味に鼻を掻くライオネル。
いや、それはいいんだよ。俺が催促したからね。でも、そうだね確かに刺激は強かった。スプラッターはマジ無理。うん、俺の前ではミリアの拳は封印な。
「ライオネルは、何かしら?」
「私は剣も使いますが得意なのは投擲です」
「ふふ、目を見張るような技量だよ」
「若君のお陰です。私の力量などまだまだですよ」
「まあ、見たいわ!」
照れまくったライオネルが義兄作の魔道具で活躍の場を得られたと絶賛。
うん、忖度でもその魔道具を見たくなるのが人情ってもの。軽めにオネダリした。
誇らし気に取り出したのは、意外にもロンググローブ・・・まさに貴婦人がしそうな手袋。魔石の屑っぽいのがスパンコールみたい。ん? これラメ繊維? よくわかんないけど伸縮性の光る素材を編み込んで作り上げてるっぽい。
うわ、これ、ライオネル着用するの? 両腕がキラキラって眩くてもいいんだ。そっかー。
よくもまあ、悪趣味全開なデザインにしたね、義兄も。
まあ、貰った本人が喜んで重宝してるんだし。ここは生温い微笑みで讃えよう。
キンキンキラキラかよ、ライオネルすげえな。
ふー、気を取り直して。
投擲っていうからスリングショットかと思ったわ。ほら、Y字型のゴム紐で玉を飛ばすやつ。
ライオネルの場合、道具じゃなくて手掴みで投げるか指で弾くんだって。
え、手掴みって、何それ受ける~。
聞けば、討伐中、魔剣の維持が出来ず偶々掴んだ石にナケナシの魔力を込めて投げたら、魔獣の眉間にクリティカルヒットして倒したとか。めっちゃ強運。それを見た義兄は大うけ。重さを定量に保つ魔道具をプレゼントしたそうだ。
あ~それで手掴みなわけね。納得。
でもファーレンの私兵は違ったみたい。貴族子息にあるまじきとかで受けなかったそうだ。
えー、面白いのに。掴める物ならなんでも投げるってのが良いよ!
柔軟性があるねって褒めたら、嬉しそうに笑った。照れ隠しなのか忖度なのか謎の義兄褒めが始まり、引いた。どうせならと義兄のスタイルも聞けば武器の多用だって。斬る、射る、突く、殴る、潰す、打つ、炙る・・・? は?! 炙るって何?!
兎に角、武器を持たせれば必殺ですよとライオネルにドヤァ~された。おおう。
毒殺マニアのハイデさんや鉄拳ミリアも大概だと思ったけど。武器の多用さが売りの義兄も大概だわ。
壮絶な殺人現場、まさに地獄絵図じゃん。そんなの見せられるの絶対嫌だよ、トラウマになるわ。
彼らに比べれば、存在が地味だけどグローブがド派手なライオネルの攻撃の、なんとショボいことか。
ちょっとほのぼの~って和めば、眉間にクリティカルヒットで即死だと衝撃的事実をぽろり。序でに一番死体がキレイで処理が楽だと喜ばれますとはにかまれた。
へ? はにかむの、そこ?! うわぁ、もう全員イカレてんじゃん。
うちの護衛+公爵子息は、えげつない攻撃を嬉々としてやっちゃうはっちゃけ系ってことは理解したかな。
「不殺でお願い」
マジで!
サイコな領域に足を踏み入れそうになった俺は、異世界の車窓からパートⅡで気分転換中。
とはいえ、不殺のお願いは捕虜の確保であれば受け入れられるが、その意図じゃない俺の願いは許容し難い。特に反撃の恐れを抱くライオネルには俺の判断が甘いと反論したいのだろう。空気が重い。
これ、義兄だったら『了』一択なんだよね。きっと。
非戦闘員で護衛される立場が、リスクを考え無しで頼むのは違う。主の命令と従った彼らに迫る危険度は高まる。ホントこういうの軽々しく言っちゃいけないのは、わかるんだけど。
甘い考えと詰られても、やっぱ殺さない方向でお願いしたい。
義兄はね、めっちゃ黒い笑みで。
「ふふ、不甲斐ないお前達には丁度良い試練です。技量を磨くと思えばできますね? ふふ、殺さず戦闘不能にすればよいだけの事ですよ、難しいことなどありませんね? さあ皆に周知しなさい。ああ、ミリアには魔道具を貸し付けると伝えなさい」
「!!」
ライオネルの絶望が、ヒシヒシと車内を満たしていく。
とまあ、こういうやり取りが行われた後の車内。発言者の俺が居たたまれない心境に陥ったわけよ。
そして気分転換に至ったのだ。
・・・ふぅぅ。
俺の目には、神殿の本部ともいえる総本殿が映る。荘厳な感じの造りが宗教施設っぽい。
王都の真ん中にあって、本殿の前が大広場。まさに街の中心地って感じ。
因みに本殿を前にして大広場に立つと、後方にお城が見える。ちょっと遠いんだけどね。まるで一直線上に建てたみたいに見えちゃう。優秀な建築技術者がいたんだろね。
ん?
「あれ、何かしら?」
つい、重い気分を払拭したくて。視線に移り込んだ情景を話題に上げた。
本殿の正面口でたむろってる?人達の姿。参詣者と言われればそれまでの話を。
義兄とライオネルが俺の声につられ視線を向ける。
二人は「ああ」と訳知り顔で頷き、ライオネルが口を開いた。
「あれは回復薬や調合薬を手に入れようと訪れた者達でしょうか。品薄で値が高額だとか。今若君に報告を上げたのですが、流石お嬢様です。異変を感じ取られたのですね」
おおぅ、タイムリーなネタを提供したのかーーー。
意外なことで俺の株が上がったよーーー。純な視線が痛い・・・。
うおお、これは言えん。
車内の重い空気が苦手で、口走っただけとか絶対言えん!
見直しましたって、顔にかいてあるそ・・・。
「ふふ、流石はレティ。神殿を疑っているんだね」
何を?!
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