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第十四章 王が住まう場所
適認定ー④
しおりを挟む成程、大体理解した。うん。
今日の視察は、有体に言えば、まあ、汚い大人の事情ってやつ。それにライムフォードが加担しちゃった。あぁ、一足早く汚い大人の仲間入りしちゃったんだねぇ。
本来の標的は二人の皇族+使節団。が、ここで手違いが生じた。(ライムフォードの認識では)俺と義兄は、これこそがヴァンダイグフ老や年寄り公の目的。汚い大人が仕組んだ罠であるとみた。
そう、今日の護衛役に選ばれた騎士団員の背信行為がそれだ。(実行犯の証言はまだだけど俺達は確信している)ライムフォードにとって不測の事態・・・ああ、その前に、皇族はじめ視察一行の殆どがバタバタと地に臥せていくのを、驚愕の目で眺めていたんだよね。毒殺を疑うレベルのハプニング。うん、悪夢だわ。
・・・心中お察しします。
抜刀した騎士団員達に襲われるの、めっちゃ恐怖。年季の入った?おっさん騎士がバーサーカー状態で襲って来るってとんだ悪夢パートⅡ。
側近達が肉壁となっても王子を守り切れるかどうか。興奮状態の熟練騎士を相手取るには分が悪い。腕に自信のある親父でも混乱したあの場を制圧するのに骨が折れただろう。下手すりゃ死傷者が出たかもだ。ハイデの機転で助かったよ。マジ感謝。
勿論、ハイデやライオネルの活躍の陰には俺のサポートがあったの、わかってるよね? ふふ、悪ノリで其処此処の魔力を吸っちゃったのが功を奏したわけ。でなきゃ何時まで経ってもウロウロ彷徨ってたでしょ? ぬはは、真の功労者は俺なのだ。
話をもう少し掘り下げれば、ライムフォードの置かれた状況が見えてきた。
視察の立案者はヴァンダイグフ老。そこに公爵当主らを随行させろと勧めたのが年寄り公。公爵達の協力が欲しいライムフォードは敢えて乗ったそうだ。らしからぬ無謀さにライムフォードってこんな奴だっけと頭を捻る。
年寄り公との関係性がライムフォードのガードを甘くしたのだろう。
純血至上主義の隠れた主軸である年寄り公は同じ思想の第一側妃を支持。今や後ろ盾である。長く当主として、陛下に近しい立場で仕えてきた彼にライムフォードも素直に助言を求めていたようだ。
ライムフォードも帝国生活で思う事があり、王国の改革を視野に入れ今は地盤強化に尽力していたという。当然、神経を擦り減らした王子は、そのせいで視野が狭くなったのだと身も蓋もないことを思う。
ヴァンダイグフ老の立てた無茶な行程を受け入れたのは、そこに複雑な事情が絡んでのこと。
俺は知らなかったのだが、ヴァンダイグフ老は神殿に強い影響力を持つ人物であった。内部抗争を利用し資本と権力の魅力に惑わされた神官達を手なずける。噂によると総神殿長は彼の息がかかった者だとか。
神殿の権力をそのままヴァンダイグフ老の力と考えるべきだと忠告に近いライムフォードの言葉に鼻白む。信仰を揺るがすほど魅力的な力で腐敗させたのか――そう詰ってやりたい。
無力を自覚したこの王子は、力を欲した。それも半世紀以上貴族社会を泳いできた狡猾なジジイの。
実の娘である王妃と外孫である第一王子の不祥事に、生家として責を負わず連座も免れたのは偏に彼の持つ影響力のお陰といえよう。ライムフォードは狡猾なジジイの懐に飛び込むのを決めた。
母親である第一側妃が精力的に勢力を拡大しても、ヴァンダイグフ老を派閥に迎え入れても、実績のない王子はやり手ママの存在で霞んで見える。焦ってもね、こればかりは時間を掛けるしかないのだ。
・・・それにしても、重要な夜会の日にバッティング。攻め方が露骨だよね? やっぱ、箱入り王子様に共同策謀は荷が勝ちすぎた?
相手は一筋縄でいかなかった。当然と言えば当然か。アレ相手に空手形はない。
抗う術のないライムフォードをちょっとばかし同情したのだが、そこは彼の戦術なのか『ヴァンダイグフ老を失脚させるためなら傀儡のフリでも何でもする』――思わぬ気概を見せられて少し見直した。
・・・ぶっちゃければ、視察の許可を出した陛下がアホンダラなのだ。
陛下も一枚噛んでるよね?
「お義兄様、ライムフォード殿下の失脚を望む者って? それにしても、お父様達を巻き込む必要あるのかしら? 本当、腹立たしいわ」
「同意見だよ。そうだね、狙いが王位に関わるのであれば王族の血が流れる四公爵家は邪魔だろうね。ふふ、折角、正妃と長子を排除・・・ああ、血を貴ぶ者からすれば王弟も目障りな存在だった。だけれど見事に排除したね。で、今度は第二王子と四公爵か」
「へ?」
めっちゃ意味深んん――。
ううむ、これはやっぱり王位争いに端を発した事件か。むむむ、王位争いなんて勝手にすればいいじゃん。でも、親父を巻き込むのはマジで許せん。
嘗ての王女達は四公爵家に臣籍降嫁し血を残した。四公爵に王位継承権はない。ないが、王家に不測の事態があれば、四公爵の中から王を立てる。合法だ。
ライムフォードの妹・第一王女も公爵令息と婚約していたのに、クリスフォードのやらかしに巻き込まれ、婚約は解消された。四公爵の中に適した男性がいないのもあるが、政治的思惑でエリックが婚約者におさまった。
王国の継承法は男系男子継承と明確に定められている。継承形態に文句を言う気はないけど、でも一言いいたい。女子女系が排除されるから国王の一夫多妻がまかり通る。だから先代陛下みたいなスケベジジイが爆誕したんでしょ? 女性より男性が優れてるって主張は認めません。あっちこっちで子種まきまくったせいで先代王妃の逆鱗に触れたんでしょ? 忌み子の蔑視が加速したのだって。・・・女性軽視が酷い。もう、こんな性差別撤廃したら? 特に王国は守護神の守りで外敵脅威を退けられるでしょ? クーデターも四公爵が抑え込むでしょ? 王様、盤石じゃん。これなら、女王様、誕生しても問題ないよね? 何がダメなの? ・・・ん? 今、義兄何て言った?
親父がとばっちりに遭ったかもと思えば、気持ちが粗ぶっちゃった。えへへ。
あ、それよりも、義兄の聞き捨てならない発言が・・・。
・・・正妃と長子を排除? 王弟も排除? 今度は第二王子と四公爵・・・は?!
「えーと、お義兄様、確かにジオルド様は冤罪だわ。王妃様は知らないけれど、クリスフォード様は自業自得よ? それなのに排除だなんて、それではまるで誰かの仕業みた・・・え? まさか本当なの?!」
ギョギョ?!
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・・・へ? な、なに?
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